今回の消費増税はタイミングが悪すぎる

私は「消費増税の時期は、その時の世界経済の状況や国内の所得環境によって決めるべきだ」という考えを持っています。そういった意味では、増税の景気に与える悪影響がいつも過大に喧伝されていることはおかしいと思っております。

私は「消費増税の時期は、その時の世界経済の状況や国内の所得環境によって決めるべきだ」という考えを持っています。そういった意味では、増税の景気に与える悪影響がいつも過大に喧伝されていることはおかしいと思っております。

1997年の景気悪化は消費税増税が原因なのか?

たとえば、1997年4月の消費増税後に景気が悪化したという見解は、物事の推移を正しく捉えているとはとてもいえません。というのも、1997年の7月にはアジア通貨危機、11月には北海道拓殖銀行・山一証券の相次ぐ破綻によって金融システム危機が起きたからです。1998年からの景気後退の主な要因は、決して消費増税にあるのではなく、アジア通貨危機や金融システム危機にあるといえるのです。

その証左として、1997年の実質賃金はプラスで推移していましたし、1997年の個人消費は4-6月期に駆け込み需要の反動で減少したものの、7-9月期には回復する傾向が見られていました。個人消費だけでなく、鉱工業生産指数やその他の主な経済指標も、夏頃までは堅調に推移していたのです。5月には日経平均株価は2万円台の大台を回復していましたし、増税の悪影響はほとんど見られなかったと考えられます。

重ねて申し上げますと1997年から始まった景気後退は、7月のアジア通貨危機の影響を受けて日経平均株価の下落に鮮明になった後、11月以降の金融システム危機の勃発を契機にして主要な経済指標が急速に悪化したことによって起こりました。1998年に入ると銀行の貸し渋りの姿勢を強めたため、多くの中小企業の経営が悪化し、労働者の賃金も下落に転じるようになりました。

国民所得の減少による消費マインドの冷え込み

私の考えでは、その後のデフレは国民所得の減少に起因するというものですが、まさに1998年を境にして日本経済は長期のデフレに陥ってしまいました。日本経済の長期低迷は金融システム危機が主因であり、様々な経済指標の推移を見るかぎりは、1997年4月の増税が景気を後退させたという認識は明らかに間違っています。そして、そういった誤った認識が、増税の景気に与える悪影響がいつも過大に分析されている端緒になっているわけです。

しかしながら、2014年4月の時と同じように、2019年10月に行われる消費増税が景気に悪影響を与えることは避けられないでしょう。それは、国民の消費マインドや将来に対する不安が1997年4月の増税時と比べて著しく悪化しているからです。2019年の実質賃金は1月~5月まで5カ月連続でマイナスとなり、そのマイナス幅は2014年4月の増税時よりも悪化しています。多くの国民が薄々は気づいていた年金の不足問題も浮上し、将来に備えて今まで以上に消費を抑えるのは致し方ないことでしょう。

世界経済の状況が減速傾向

それに加えて、日本経済に与える影響の度合いが大きいのは、消費増税そのものだけではありません。世界経済の状況も減速傾向にあるので、2014年4月の増税時より上げ幅が小さいとはいっても、増税対策の期限が過ぎた後には相応の悪影響を覚悟しなければなりません。IMFが今月に改定した世界経済の見通しによれば、2019年の経済成長率は3.2%に引き下げられています。世界的に不況に入るのが3.0%を割り込む水準とされているので、2014年よりは明らかに悪い状況にあります。

とくに日本経済に影を落としているのは、中国経済の減速が止まらないということです。中国の2019年4-6月期の経済成長率は6.2%増となり、1-3月期から0.2ポイントも減速しており、四半期として統計が遡れる1992年以降で最低の水準に落ち込んでいます。日本国内の所得環境に悪化傾向が続いているなかで、世界経済の減速まで意識されるとなっては、政府が増税対策で悪影響の緩和を一時的にできたとしても、所得環境の改善や消費の基調は変わりようがないのです。

私のブログ『経済を読む』においては、経済の流れを分析していることがあるので、ぜひ参考にしてみてください。
http://blog.livedoor.jp/keizaiwoyomu/

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