グルーミングはセルフメンテナンスの基本
グルーミングとは、動物でいうと毛づくろいのことです。自らを毛づくろいする行為を「セルフグルーミング」、おたがいを毛づくろいする行為を「ソーシャルグルーミング」といいます。人間にとってのグルーミングは、単に身だしなみを整えるだけでなく、動物的本能をおろそかにしていないかをチェックする基準です。
病気やケガで弱った動物は、セルフグルーミングをしなくなります。人間も、うつ状態になると身だしなみにかまわなくなり、まるで弱った猫のように、セルフグルーミングができなくなります。お風呂すら入りたくないときは、まず心の疲れを自覚してください。
自分のグルーミングができないときは、ソーシャルグルーミングが必要です。マッサージやエステで、人の手のぬくもりを感じましょう。介護施設では、訪問サービスに散髪してもらうと、無表情だった入居者が笑顔を取り戻すことがよく知られています。
動物は、おたがいをグルーミングし合うことで愛情や信頼関係を築きます。人間も、群れで生きる社会的な生きものです。1945年、食事や医療に問題がないのに、死亡率が9割というボルチモアの児童養護施設がありました。原因は、当時流行っていた「スキンシップを徹底的に排除した最新の育児方法」です。声がけや抱っこをされない赤ん坊たちのストレスが、生命力の低下につながりました。
異なる価値観と出会うことでセルフメンテナンスする
いくら休養しても元気にならなかったのに、外出したら元気になった経験はありませんか?体力の回復には睡眠が一番ですが、気力の回復には新しい刺激が一番。おすすめの刺激は、まったく異なる価値観と出会うことです。たとえば、SNSを現実の交流に発展させてみては?
SNSを見るだけの人と、交流に発展させる人には、「イメージのギャップに向き合う」という体験の差があります。実際にオフ会やイベントに参加してみましょう。
憧れのインスタグラマーが平凡でガッカリするかもしれませんし、ホッとするかもしれません。無二の親友が見つかることもあります。何とかマニア、オタク、意識高い系といったひとくくりの思い込みも解除されるでしょう。異なる価値観と出会うことで、いつの間にか凝り固まった価値観をメンテナンスできるのです。
過去の知見に触れてセルフメンテナンスする
五感をメンテナンスするには、芸術や文学に親しむことです。ただ、いまいち自分が好きなテイストを把握できない人は多いのではないでしょうか?まずは、誰もが知っている有名作品から、過去の知見に触れましょう。絵画や彫刻なら、「これは何々派だな」とピンとくるようになればしめたものです。
知識より、パッと見て好きだと感じることが大切という意見も正しいのですが、たまたま好きな作品と出会う貴重な機会を運まかせにするのはもったいないのです。歴史的に有名な作品の中から、自分が好きなテイストの共通点を見つけましょう。ゴシック、写実主義、ロココなど、関連する年代や作者をなぞれば、感動する作品と出会う確率が高くなります。
哲学や思想なら、表紙がライトノベル風のハードカバーだけでなく、翻訳本も読んでみましょう。要約本は、あくまでも「まとめ」です。作者はガチガチのキリスト教圏の人?書かれた時代は戦時中?要約本には、こうした「作品の背景」がにじみ出ません。しかし、哲学や思想のだいご味は背景にあるのです。過去の知見に触れるのは、「感動」という五感のセルフメンテナンスへの近道です。
最後に
グルーミングは疲れを自覚させてくれます。異なる価値観はマンネリに気づかせてくれます。過去の知見に触れると五感が潤います。自分の変化にいち早く気がつくために、セルフメンテナンスをはじめませんか?