世界経済の大きな流れを俯瞰する(後編)

さらに世界経済の先行きを不透明にしているのは、米国が金融引き締め路線の修正を明確にしたということです。2019年に入ってFRBは利上げの停止と保有資産縮小の計画見直しを表明し、利上げに関しては早ければ2019年のうちに終了するかもしれません。FRBは十分な緩和余地をつくるため、政策金利の3.5%までの引き上げを目指していましたが、足元では2.25~2.50%にとどまっています。

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米国が世界の債務バブルを後押ししている

保有資産縮小に関しても、その凍結が2019年に早まると見られています。パウエル議長は9000億ドルから最大で4兆5,000億ドルまで膨らんだ保有資産の規模を、2021~2022年までに2兆5,000億~3兆ドルまで減らすとしていましたが、今では3兆5,000億ドルで資産縮小を止めるプランが有力となっているのです。

その結果として、金融危機後の緩和策に伴い蓄積してきた債務リスクは、解消の目処が立たなくなってきています。米国ではジャンク債の発行が昨年12月にはゼロだったのですが、今年に入って低格付け企業や新興国による資金調達が再び活発化しているのです。金融政策の正常化が想定以上に遅れれば、企業や新興国の債務削減は一向に進まず、債務バブルの崩壊を後押しする不確実性を高めてしまうというわけです。

世界で債務が膨らみ続け、大不況に陥る可能性も

国際金融協会の調査によれば、世界の債務総額は2018年末時点で247兆ドルとなり、世界のGDP総額の3.2倍に膨らんでいるといいます。これまでの経済的な常識では、財政赤字は景気の回復局面に減少していたはずなのですが、今の景気回復では米国や日本、主要な新興国などが財政赤字を膨らませているという異常な状況にあります。

米国の景気が大幅に減速したら、トランプ政権は財政赤字の拡大を無視して、大型の追加減税に突き進むこともありえます。景気後退や株価下落に怯えるFRBは、米国の景気が大幅に減速したら金融引き締めをやめるどころか、十分な緩和余地がないにもかかわらず、市場の催促から緩和に舵を切ることになるかもしれません。

今のところ、世界的な経済危機や金融危機の再来の兆しはないといえますが、中国と米国の目先を重視する経済金融政策によって、危機に陥る原因となる債務が拡大しているのは間違いがありません。危機の芽は、ある日突然、吹き出します。次に来る世界的な不況が本来の普通の不況ではなく、債務バブルの崩壊による大不況になる可能性を、あたまの片隅に入れておく必要はあると思います。

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