世界経済の大きな流れを俯瞰する(前編)

私が当初から考えていたメインのシナリオは、米国の景気が2019年から大幅に減速し、2020年には後退にまで至る結果として、世界経済は1年程度の同時不況に陥るというものです。ですから、次の世界的な景気後退ではリーマン・ショックのような危機は起こらないだろうと、メディアの取材や講演などで再三にわたって申し上げてきました。

中国の景気減速

その前提としてあったのが、中国が金融引き締めによって民間の債務削減を進めると同時に、米国が金融政策の正常化によって採算の悪い投資を改めさせていくという環境でした。ところが今では、中国が景気の減速を回避するために金融引き締めから金融緩和へと転換したばかりか、米国までもが株価の急落への対応を優先するため金融引き締めを凍結しようとしているのです。

目下のところ、中国は何とか景気を下支えしようとして、大幅な金融緩和や公共投資の増額、個人・企業への減税へと大盤振る舞いに走っています。2018年の経済成長率は6.6%であると公表されているものの、日米の企業の中国での販売の落ち込みを考えると、ある研究機関の内部調査が示した1.7%という数字のほうが信頼性は高いといわれています。だからこそ、習近平体制は目先のことを優先せざるをえなくなったのでしょう。

経済の減速の根本原因は、生産年齢人口がピークを過ぎて潜在成長率が落ちているなかで、無理にでも成長率を押し上げようとして、債務に依存した非効率な設備投資やインフラ投資を推し進めてきたということです。日本のバブル崩壊後、企業は設備・債務・雇用の過剰に苦しみ、経済は長期低迷に陥りましたが、中国は今まさに1990年代前半の日本と同じ状況にあるといえるでしょう。

中国の債務は世界経済にとって大きなリスク

中国経済の下振れ要因は根が深く、米中貿易摩擦はそのなかの一因にすぎません。中国がこのまま無理を重ねて景気の下支えを続けるようなことがあれば、1年~2年は景気の底割れを防ぐことができるかもしれませんが、その副作用として中国企業の効率性はいっそう低下し、債務の膨張がバブル崩壊に導く可能性を高めていくでしょう。要するに、かつての日本と同じように、中国は不良債権の増加によるバランスシート不況に陥る可能性が高まっているのです。

中国はこれまで、政府の経済力や統制力によって金融リスクを抑え込んできましたが、民間部門で膨張し続けている債務は、今では世界経済にとって大きなリスクとなりつつあります。中国の債務バブルが弾ければ、中国経済の恩恵を受けている日本や他のアジア諸国、欧州諸国は当然として、米国も経済と金融の両面で大きな打撃を受けることが避けられそうもありません。(次回に続く)

(お知らせ)私のブログ『経済を読む』においては、経済や投資の大事な局面ではその流れを分析しているので、ぜひ参考にしてみてください。

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