STAGE編集部:でも、井川さんの笑顔を見ていると、心から仕事を楽しんでいるように見えます。
できないことを「できない」と正直に言えるようになってからですね。「私はコーヒーを淹れられないけど、あなたたちがコーヒーを淹れることに集中できる環境を整えることはできる。だからそういう役割分担でいきたいと思う」、と。そのなかで、初めはできないと思っていたこともできるようになり、一緒に働いていくうちにみんなとの信頼関係が生まれてきたような気がします。
STAGE編集部:通常代表という立場だと、スタッフと同じ目線で話すのはなかなか難しいと思いますが、井川さんはトップとは思えないほどの自然体でスタッフと向かい合っていますね。それがブルーボトルコーヒーの社風なんですか?
そう思います。私が勝手に思っているだけかもしれないですけど(笑)。清澄白河、青山、そして昨年オープンした新宿、六本木、中目黒、品川。日本にいるときはすべての店舗になるべく顔を出すようにしています。あとは店舗でイベントを行うことがあるので、極力そういう場所には行っていますね。
PRすることも会社を経営することも根本は同じ
STAGE編集部:少し話を変えますが、井川さんのこれまでの仕事のキャリアを聞いてもいいですか?
大学卒業後、人材会社に新卒で入りました。アフター5を楽しむOLになるつもりだったのに、子会社の立ち上げをする新規事業のチームに配属されて。3年の間に2社の立ち上げに関わり、「ゼロベースでビジネスを作り上げることをもっと勉強したい」という気持ちになりました。
その後、インキュベーション会社に転職し、企業価値を高めていくためにPRの重要性をひしひしと感じて、その会社では常時6社くらいのPRを担当していましたね。
STAGE編集部:その後、海外飲食ブランドの立ち上げに携わるようになった、と。
PRとして入社し、その会社の社長と二人三脚で物件を探すところからはじめ、3年半で国内16店舗に増やしたり。日本の飲食企業がハワイに店舗出店をするため、現地で出店準備、従業員採用、会社設立に伴う業務を経験したり。転職を重ねましたね。
STAGE編集部:新規事業を立ち上げにさらにPRをする……。井川さんはここに仕事の面白さを見出していると思うのですが、その醍醐味は何ですか?
まず、ゼロから新しいものを発想できる人を尊敬しています。私はできませんが、その人が考えたモノを10人じゃなくて100人、1000人に届ける手伝いはできるかもしれない。考えや思いに共感し伝えていくことが好きなんだと思います。伝える手段が最初はPRでしたけど、会社を作るということも、従業員を通して創業者の思いを伝えていくっていのも同じ“伝える”という流れのなかに今はありますね。
STAGE編集部:大きさや広がりは違うけど、PRをすることと、会社を経営することはあんまり変わらないんじゃないかと。
今でいうと、創業者ジェームスの思いに対してものすごく共感していて、それを広めていくこと。それから、彼が思っていることを日本のマーケットに合わせて、どうやって表現していくかということ。日本マーケットを統括することはもちろん責任は大きいけれど、根本にあるそういう思いはそんなに変わらないですね。