家族全員が豊かな未来を築くために

「◯◯すると、お金が減ります」
 この、◯◯のなかには何が入るでしょうか?

 ムダ遣い?
 高級車を購入?
 借金?

いいえ、違います。

答えは、「節約すると、お金が減ります」

つまり、支出を減らすと、お金が減るということ。
お金を使わないと貧乏になってしまう、といっても理解しづらいでしょう。

たとえば、お父さんのこづかいを毎月1万円減らすことで、家計がどのようになるか、考えてみましょう。

お父さんのこづかいが厳しいというのは、周りの人を見たり、テレビで見たりして、なんとなく肌で感じている人も多いでしょう。それもそのはず、新生銀行の「2016年サラリーマンのお小遣い調査」によると、2007年に平均月額4万9736円だったお父さんのこづかいは、2016年には3万7873円となり、9年間で1万円以上ダウンしています。

これを「家計が厳しいからしょうがない」と考えてよいものでしょうか? 私はそうは思えません。

なぜなら、5年後の収入が減ってしまうからです。

「家計が厳しいからしょうがない」とお父さんのこづかいを減らすことで、今月の家計は助かるかもしれません。しかし、5年後、10年後のお父さんの収入は、どんどん減ることになります。

子供の教育を例に考えてみます。
たとえば、あなたに小学5年生の子供がいるとします。その子供に、あなたはどのような教育を受けさせるでしょうか?
多くの親は子供に、野球やサッカー、水泳のようなスポーツを習わせます。
ただし、プロアスリートになってほしいと考えている親はごく少数で、ほとんどの人は、その子の健康のために、あるいは競争意識やコミュニケーションスキルを養ってもらうために、習わせます。
ピアノやダンス、絵画やアートなどのレッスンに通わせる場合も、感性を磨いて心豊かに生きてもらうことが目的でしょう。
最近では、塾や英語、そしてプログラミングを習わせることも一般的になりつつありますが、これも、自分の子供が将来、生活に困らないために通わせている人がほとんどでしょう。

さて、それらの子供の教育・習い事にかかるお金は、決して小さな額ではありません。
習い事をいくつか掛け持ちすれば月に数万円かかるのが当たり前です。塾や予備校も加えれば、毎月10万円以上の教育費をかけている家庭もあるのではないでしょうか。
この教育費を、何も考えずにかける親はいません。必ずリターンを考えているので、教育費は投資と言えます。そのリターンとは、知識やスキル、感性など、その子が社会に出て生活に困らないための力を身につけることです。
9年間の義務教育、7年間の高校・大学での教育、それとは別にたくさんのインプットを受けた子供たちは、20代でやっと社会に自分の価値を提供して、月間20万円前後の給料をもらうようになるのです。

では、あなたの子供が社会人になった時から、インプットをストップさせたとしたら、5年後はどうなるでしょうか?

おそらく、あっという間に同期との差が開いてしまうでしょう。活躍する場もなくなってしまうでしょう。もちろん収入も、同期と比べて少ない水準になってしまいます。
幼少期から十数年という期間と多額の費用をかけて教育した効果が、5年間インプットをストップしただけで、途端に薄れてしまうことになります。特に、ITなどの技術の変化・進化が激しい時代ではなおさらでしょう。

では、お父さんの例に戻って考えてみましょう。
現在、会社で活躍しているお父さんが65歳で定年を迎えるまでの期間は、30歳の人なら35年、40歳の人なら25年、50歳の人でも15年もあります。
平均寿命100年時代と言われ、少子・高齢化が進んでいる今、年金制度が苦しくなるのが目に見えています。年金支給額が減ってしまうと生活が苦しくなるため、誰もが75歳くらいまで働くことがいずれ普通になるでしょう。
そうなると、今30歳の人ならこの先45年、今40歳の人なら35年、今50歳の人でも25年働き続けなければ、普通の生活ができないことになります。

そのような社会変動が起こっている今、「家計が厳しいからしょうがない」とこづかいを減らし、お父さんのインプットを減らすという判断は、家族全員の未来のためにはなりません。多くのインプットにはお金がかかります。さらに、インプットがないと、よいアウトプット(つまり質の高い仕事)を生み出せません。