「お金が増えないことがリスク」というこれからの時代の考え方

お金がもっと欲しいと思って取った行動が、実は、お金を遠ざける結果になっているかもしれません。NG行動に気づき、 “発想"を少し切り替えることで「お金持ち体質」が手に入ります。泉正人の最新刊『お父さんの「こづかい」は減らすな』より特別編集編をお届けします。
2018.7.11

お金が「減る」より「増えない」リスクとは

日本人は預金が好きとよく言われています。おそらく、リスクを取ることを恐れる国民性だからなのでしょう。リスクとは、投資の正解では「収益のブレ幅」のことを指しますが、日本では一般的に「予測できない危険」「損害を受ける可能性」といった意味合いで認識されています。株や投信信託で資産運用してお金を増やしたい気持ちはあるけれど、株価の変動でちょっとでもお金が減ってしまうのは怖い。やはり銀行に預けておこう……。
しかし、この考え方はこれからの時代、逆に危険かもしれません。資産運用をすることでお金が減るリスクよりも、資産運用をせずに「お金が増えないリスク」のほうが恐ろしいと
いう未来が来る確率が高いからです。すでに高齢化による下流老人や老後破産が現実のものとなり、今後の少子化による労働生産人口の減少によって経済は衰退し、現在の収入水準が維持されるとも限りませんし、年金の受給額も保障されるものでなくなりつつあります。

投資をギャンブルにしないたった1つの方法

労働収入以外の収益源を確保するために、お金に働いてもらうとなったとき、資産運用に伴う「資金が減る可能性」や「予測できない危険」は最小限にとどめることができます。それは、原理原則を知り、人々の行動とお金の流れを理解することです。
資産運用(投資)とは、お金をお金以外の価値あるものに「換える」行為。投資には「株」「債券」「不動産」「商品」「外貨(為替)」と世界で共通する価格があり、参加者も多く売買しやすい5つのマーケットが存在します。それぞれ景気の影響を受けますが、不景気だからといって、すべての価値が下がるわけではありません。代表的な原理原則として、株は好景気で上がり、不景気で下がります。逆に、国債などの価格の値段は、好景気に下がり、不景気で上がります。それをふまえ、景気がよい時は株に、不景気な時には債券に資産を移動させます。こうすれば、資産が減るリスクが回避できるのです。
さらに具体的に原理原則を見てみましょう。世界一の経済大国の米国では、アップル、グーグル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、コカ・コーラ、ウォルト・ディズニーなど、私たちも知っている会社がたくさん上場しています。米国の景気がよくなった時、これらの株価はどうなるでしょうか?
当然、企業の売上が伸び業績がよくなるので、世界中の人たちが株を買うため、米国の企業全体の株価が上昇していきます。この時に上昇するのは米国株だけではありません。海外の投資家が米国株を買うために自国の通貨を米ドルに換えるため、米ドルのニーズが高まり、米ドルの価値も上昇しドル高になります。さらに米国株が上がるとなると、債券や金を保有している人が売却し、より利益の上がるであろう株を買うため、債券が安くなり、金などの商品も安くなり、株がさらに上がるのです。
これらのほかにも影響を受ける資産がまだあります。それは不動産です。株が上がると株で儲かった投資家が消費をしたくなり、自宅や別荘を買うために、不動産の価値は上昇していくのです。このような流れ、つまり、原理原則を理解していること自体が、資産運用の際のリスクヘッジになります。また世の中のお金の流れがわからないと、正しい判断ができず、雑誌などの意見に流されるか勘で判断しなくてはいけなくなるので、リスクの高いギャンブルとなるのです。

脳に汗をかけばお金が増えていく

資産運用を始めたからといって、必ずすぐに利益が上がるわけではありませんし、初心者にとって多少の失敗は当たり前のこと。お金や経済に対する知識を高め、原理原則を学び、株や投資信託、不動産といった投資対象に対する知識を高め、小さな額から少しずつ実践して、失敗しながら学んでスキルを高めていけばいいのです。
「労働は額に汗をかくこと。投資は脳に汗をかくこと」という言葉があります。脳に汗をかけばかくほど、資産運用に対する知識やスキルは高まり、上手に運用できるようになります。お金が減るリスクを恐れて資産運用しないより、資産運用しないでお金が増えないことのほうがリスクであることを、未来を見通せる人は、もう気が付いているのです。

泉 正人

ファイナンシャルアカデミーグループ代表 一般社団法人金融学習協会理事長

日本初の商標登録サイトを立ち上げた後、自らの経験から金融経済教育の必要性を感じ、2002年にファイナンシャルアカデミーを創立、代表に就任。身近な生活のお金から、会計、経済、資産運用に至るまで、独自の体系的なカリキュラムを構築。東京・大阪・ニューヨークの3つの学校運営を行い、「お金の教養」を伝えることを通じ、より多くの人に真に豊かでゆとりのある人生を送ってもらうための金融経済教育の定着をめざしている。『お金の教養』(大和書房)、『仕組み仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書は30冊累計130万部を超え、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。一般社団法人金融学習協会理事長。

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