2020年3月24日 更新

ハイテクを活用する「スマート介護」とその「資格」が、介護の人手不足を解消させる?

介護業界の人手不足は深刻ですが、それを解決する突破口として期待されるのがロボットや情報通信技術で介護職員の身体的、精神的負担を軽減する「スマート介護」です。導入するだけでなく、その専門資格を設けることでも、人手不足の緩和につながりそうです。

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2020.3.24

介護の人手不足を打開する「スマート介護」

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訪問介護、通所・短期入所、有料老人ホームなど老人福祉・介護事業者はいま人手不足が深刻で、人材確保競争の激化、人件費の上昇に苦しんでいます。

公益財団法人介護労働安定センターの「事業所における介護労働実態調査」によると、「従業員が不足」と訴える事業所は全体の67.2%で不足感は年々増す一方です。不足する理由は「採用が困難」が89.1%でした。

東京商工リサーチによると、介護業界の2019年1年間の倒産件数は111件で過去最多の2017年に並びました。4年連続で100件を超えていますが、倒産する前に自ら廃業・撤退を決める事業者はさらに多いとみられています。その最大の原因は介護の仕事のなり手がいないことです。
これから2025年にかけて、1947~1949年生まれで約800万人と人口のボリュームが大きい「団塊の世代」が次々と75歳以上の「後期高齢者」になだれ込み、介護の対象者も大きく増える「2025年問題」が取りざたされています。需要は増えるのに、人手不足で地域の介護体制が貧弱なまま放置されると、適切な介護サービスが受けられない「介護難民」が急増してしまうおそれがあります。
介護の人手不足を緩和するには、どうすればいいのでしょうか?
「不況になれば人は戻ってくる」「給料を良くすれば解決する」は、楽観的すぎる見方です。いくら不況で仕事にあぶれても、給料が良くても、人はしたくない仕事はしないものです。介護の仕事を「したくない」と思う人を減らさなければ人手不足は解消しません。それが全てではありませんが、介護職員の身体的、精神的な負担を軽減すれば「したくない」と思う人は減るでしょう。それを実現する有力な手段がハイテクの力を借りる「スマート介護」で、たとえば見守りセンサーによる施設の情報化や介護支援ロボットの導入などが、介護の人手不足を打開する解決策として期待されています。

「スマート介護」は結果を出し始めている

福岡県北九州市は先進的な介護イノベーション「北九州モデル」で知られています。その柱は「ロボットを使いこなす人材」「ロボットの導入、活用」「新しい介護現場の創造」「人とロボットの共存」などテクノロジーを積極導入したスマート介護で、すでに結果を出し始めています。

たとえば施設に移乗支援の介護ロボットを導入すると、介護職員による抱え上げ介助がなくなり腰痛リスクの高い姿勢が改善され、身体的な負担が軽減されました。入居者の皮下出血や打撲などのリスクも低下しています。
また、施設の居室に見守りセンサーを導入すると、入居者の様子が介護職員の手元のタブレット端末でわかるので、職員の不必要な見守り、訪室が約90分減少し、その分、寝具の手直しなどきめの細かいケアの時間が約35分増加する効果があらわれています。入居者の転倒リスクも低下しました。
情報共有用にインカム(無線電話)を導入すると、介護職員はいつでも、どこでも情報共有や連絡調整、意思疎通が可能になり、職員同士の直接会話が160分減少し、その分、介護職員と入居者との会話が110分増加するという効果があらわれています。緊急時でも迅速な対応が可能になり、職員の精神的な負担が軽減されました。
そのようにハイテクを活用した「スマート介護」で職員の身体的、精神的な負担が軽減すれば、介護の仕事が見直される可能性が高まり、人手不足の緩和につながります。

職員のやる気を引き出す「資格制度」

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北九州市では介護ロボットを操作、活用できる専門人材を育てるために2017年度から「介護ロボットマスター育成講習」をスタートさせ、2018年度から「初級」「中級」「上級」に分けて修了資格がステップアップできるようにしました。今年1月までにのべ154名が修了しています。

職員と介護ロボットの「ハイブリッド特養」を実践している東京都大田区の社会福祉法人善光会付属のサンタフェ総合研究所は2018年、センサーやロボットを使いこなせる資格「スマート介護士」を創設しました。これまでに「入門(Beginner)」の研修に約60人が参加し、「初級(Basic)」と「中級(Expert)」の資格試験に約2000人が挑戦しています。善光会以外の介護職員にもひろく開放していて、今後は「上級(Professional)」資格取得を目指す研修メニューも設ける予定です。
北九州市も善光会も資格を設けることで、ただ新しい技術を使いこなせるだけでなく、それを現場の改善、課題の解決に活かせる創造性も持つ人材を育てようとしています。
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