〈佐渡島庸平〉〜宇宙に遊びが生まれ、遊びが信用を生む可能性〜「宇宙とお金」インタビュー[第2回]

「宇宙とお⾦」をテーマに、株式会社コルク代表の佐渡島庸平さんにお話を伺う第2弾です。

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2017.11.30

■⼈はお⾦⾃体とは疎遠になっていくのではないかという仮説

STAGE 編集部:仮想通貨がポピュラーになり、お⾦も未来は形が変わるかもしれません。AI の登場による仕事の変化、⼈間は宇宙にどのように関わっていくのか。佐渡島さんが考える未来を教えてください。
佐渡島さん:お⾦は⼈間としての信⽤ポイントみたいなもので、信⽤があれば、みんな喜んで協⼒してくれます。ただ、お⾦は信⽤の可視化の部分だと⾔っても、信⽤がお⾦に替わるときに何かがものすごくロスされているんです。発電所から家庭に届く電⼒が相当ロスされるのと同じです。お⾦をもう⼀回信⽤に変える時はさらにそうです。信⽤がたくさんある⼈は、うさん臭く思われないのに、なぜかお⾦がたくさんあると、うさん臭く思われるっていうことがあって。すごいロスが起きているんです。
最近出てきた「タイムバンク」って、⾯⽩いですよね。そこで結果さえ出していけば、数時間しか働かなくても、もう⼗分⽣活できるみたいなことって起きてきちゃうわけです。それなら、そのための信⽤はどう貯めればいいのかっていうことを考えればいい。
今まではみんなお⾦をどうやって貯めればいいのかって考えていたのが、ほぼニアリーイコールで信⽤ってどうやって貯めればいいのかっていう本質的な問いだけ問えばいいという状況になりつつある。
今まで、やっぱり1回信⽤をお⾦に替えていたわけじゃないですか。これからは、信⽤を信⽤に替えて何かを⾏うっていうことがすごくやりやすくなってくるっていう状態かなとは思いますよね。変換するときのロスがないというか。
そういう意味で、⼈は「お⾦⾃体」から遠ざかると思います。
STAGE 編集部:インターネット上で仮想通貨として、個⼈トークンも出せる時代になりました。確かにお⾦の在り⽅は変わりそうです。
佐渡島さん:そうですね、ある種の信⽤をやり取りするルールが整備されるかどうかというところですね。上場みたいなルールがどう出てくるか。ルールの整備の仕⽅は、試⾏錯誤がいっぱい⾏われるはずだし、途中でこの前のバリューで起きたみたいなトラブル※が起きたりするでしょう。けれど、そもそものトラブルも最終的には収束する。トラブルによってその変化の速さが変わったりはするんだろうなぁって思っています。そちらへの流れは不可避なので。だから「お⾦⾃体」は遠くなってくると思うんですけど、宇宙は近くなってるなと思うんですよね。

■宇宙に遊びが⽣まれ、遊びが信⽤を⽣む可能性

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佐渡島さん:今は宇宙に⾏くっていうのが、すごくお⾦がかかるから、とてつもない⼤義がないと無理なんです。例えば誰かが⽉⾯着陸しましょうと⾔うときの理由が、「みんながワクワクするために」じゃ⼤義にならなくて、科学的に何か進歩するじゃないとダメなんです。その⼤義が今⽤意できなくなっているんだけど、⼤義が必要ない状態になると、⾯⽩いものが出てくると思ってるんですよね。だって、本を書くときに、作家には⼤義が必要ないじゃないですか。みんなを楽しませたいから書いていいわけで。つまり⼤義が必要ないものの⽅が遊びは向いている。というか、遊びは⼤義があっちゃ逆にダメなんです。
堀江貴⽂さんの出資しているインターステラテクノロジズが⽬指しているように、ロケットも⼿軽に打ち上げられるようになるはずです。そのうち、宇宙に遊びが⽣まれてくるなと思いますね。
STAGE 編集部:宇宙に遊びが⽣まれるって、聞くだけでワクワクしますね。
佐渡島さん:で、お⾦っていうのはやっぱり、遊びが⼊り込む余地がすごくなかったわけですよね。これが、信⽤と信⽤の交換が起きてくるようになると、遊びが最も信⽤を満たす可能性があって。これからは遊びを考える⼈たち、エンターテイメントを考える⼈たちが強くなってくるんじゃないかなぁって思ってるんですよね。だからお⾦を⽣み出すだけのAI の価値ってすごい少なくて、エンターテイメントを⽣み出すAI の⽅の価値が⾼いんじゃないかなぁと思っています。
AI というのも、結局ある種のキャラクターが必要になってきます。AI にどんなキャラクターを載せるか。知能⾃体は担保されるけれども、キャラクター⾃体は僕らみたいな職業の⼈間が作って、必要なところに貸し出していくというビジネスになっていくんじゃないかなと想像してるんですよね。
将来、宇宙旅⾏の代理店がネット上にあったら、⼈じゃなくて多分bot というかAIがもっと対応していくと思います。正確に答えるだけだったら、質問も正確じゃないとダメなんですが、お客さんが求めているのは正解じゃない。
「こんにちは宇宙兄弟のムッタです」って⾃⼰紹介してくれて、「僕だったらこう
するよ」っていう提案をしてくれたら、聞きたいじゃないですか。
そういう「僕だったら」とか「私だったら」が聞きたいわけであって、ただただAIを発展させていってもそこが⽣まれないので。
STAGE 編集部:このインタビュー然りですね。佐渡島さんだったらどう答えるか知りたい、という。
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コルクがキャラクターbot によるエンジニア採⽤にトライした結果、どうなったか。次回、経営者としての佐渡島さんの姿に迫ります。
佐渡島 庸平(さどしま・ようへい)

佐渡島 庸平(さどしま・ようへい)

1979年生まれ。東京大学を卒業、2002年に講談社に入社。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを設立。安野モヨコ、小山宙哉、曽田正人、三田紀房、羽賀翔一、平野啓一郎作品の編集・プロデュースを行う。
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