2020年9月10日 更新

ビジネスでよく使う「短期」「中期」「長期」はどのくらいの期間?

ビジネスや経済メディアでよく見かける「短期」「中期」「長期」「中・長期」とは、何年ぐらいなのでしょうか? 実際には短期は1年以内、中期は3~5年がおおよその目安ですが、それには企業会計や経営計画に由来する理由があります。この期間の視点のバランスは、キャリア設計や資産形成に大いに役立ちます。

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2019.8.6

短期の視点と中・長期の視点のバランス

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新聞の経済記事や社説を読むと、「短期的には……だが、中・長期的には……だ」という言い方によくぶつかります。
たとえばある日本企業が海外の企業を買収した件をめぐる記事で「このM&Aは短期的にみれば財務内容を悪化させかねないが、中・長期的にみれば将来有望な成長分野への果敢な投資として評価できるだろう」というぐあいです。そこには、この買収はちょっと高くついているように見えるが、影響がすぐに現れてくる短期的なデメリットは横に置いておいて、戦略的な視点で「長い目で見よう」というニュアンスが含まれています。
そのように短期的な視点と中・長期的な視点を分けて考えるのは、ビジネスに限らずキャリア設計でも資産形成でも婚活でも子どもの教育でも何でも、大事なことです。目の前の損得ばかりにとらわれず、将来のことも考えた上で判断しなさい、ということです。
もちろんこれはケース・バイ・ケースです。たとえば数年後の独立・起業を考えている人は、短期的な視点だけを考えて「できるだけたくさん給料をくれて、起業資金が早く貯められる会社」を就職先に選んでも正解です。例を挙げればワタミ創業者の渡邉美樹氏は大卒の初任給が約13万円という時代に、激務でも月給を42万円くれる会社に入って1年間で300万円を貯め、1984年に24歳で居酒屋店舗のフランチャイズ権を買い取って独立・起業を果たしています。
とはいえ、たいていは「短期の視点」と「中・長期の視点」の両方に目配せしたようなバランスが大事であるとされています。ではその「短期」「中期」「長期」とは、どれぐらいの期間を指しているのでしょうか?

短期が「1年以内」なのは企業会計ルール

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おおよそのメドは、「短期」は1年以内、「中期」は1年を超えて3~5年まで、長期は5年以上でたとえば10年、20年という期間です。起業前の渡邉美樹氏は月給を42万円くれる会社には定年まで(=長期)勤めるつもりも、3~5年(=中期)勤めるつもりもなく、がんばって300万円貯めて起業のメドがついたので、1年(=短期)でやめました。
「短期」が1年以内というのは、企業会計のルールに由来しています。企業の借金である「借入金」には、返済まで1年以内の「短期借入金」と、返済までの期間が1年を超える「長期借入金」の2種類があります。
「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」とともに重要な「会計三表」に数えられる「貸借対照表(バランスシート)」では、返済まで1年以内の短期借入金は「流動負債」、1年を超える長期借入金は「固定負債」に分けて計上することになっています。ただし、返済が進んで1年以内に返済が終わる予定の長期借入金は流動負債に計上します。
これを「1年基準」「ワン・イヤー・ルール(One year rule)」と言います。もともとは企業会計のルールですが、現在ではひろくビジネス全般にわたって「1年以内は短期」というのが共通の認識になっています。

「短期大学」の修業年限は2~3年、「短期アルバイト」の期間は数日~数週間程度ですが、ビジネスの世界で言う「短期」は、最長で1年以内と考えて差し支えありません。
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