2020年1月9日 更新

日常が新しく見えてくる――『窓』をめぐるアートで感性リフレッシュ

日々の生活とは気分を変えて、襟を正して巨匠の名画体験――も素敵ですが、今自分のまわりにある、見慣れているもの、身近過ぎて気にも留めないものを、くるっと違う視点で眺めてみると、想像以上に刺激的なアート体験があったりします。

2019.12.30
窓が大きく明るいお部屋です――不動産広告を見ていると出てくる紹介文。
窓がどんなつくりなのか、そこから何が見えるのかは、物件選びの重要な要素です。住んでしまうとあまりにも身近で、普段は気を留めない「窓」ですが、くらしの中で、ひとの行動や健康、気持ちまでにも影響する大きな役割を果たしているのですよね。
そんな「窓」が集まっています・・・それも美術館に!
“窓の展示”といって想像するのは、“窓枠の建材”が並ぶショールームではないでしょうか?
しかし今回は美術館。
「窓とはなんぞや?」を、芸術題材的に、建築的に、そして概念的に、いろいろな角度からとらえた作品を紹介する展覧会です。
そもそも「窓」とは。
手元の国語辞典をひいてみると(長年愛用の辞典ですが、「窓」を引いたのは初めてです)、「採光・通風のために、壁・屋根などにあけた穴」(新選国語辞典 小学館)。
結構そっけない・・・けれど、古今のアーティストたちは、その穴に魅かれ、その穴を題材にした多くの作品を生みだしてきました。
光や風を取り入れて室内と外界とをつなぐ、と同時に、遮断して中の空間を守る。室内に外界の眺めをもたらす、と同時に、外に広がる世界を切り取る枠でもあり、そしてまた、外界にいる人が中を見るのぞき穴ともなる・・・その性格、確かに一筋縄ではいかなさそうです。

藤本壮介《窓に住む家/窓のない家》(2019年)展示風景

会場では、そんな「窓」をめぐり14章のテーマが展開されています。
1章でバスター・キートンの映像に迎えられた後、2章「窓からながめる建築とアート」に展示された長い年表には、窓に関連する技術とアートの歴史が記されています。
それはまさに人類文明の進化の歴史!
これだけでも相当な見ごたえですが、ここから繰り広げられジャンルを超えた作品群は、一部屋進むごとに全く違う時代感、違う視点に誘ってくれます。
題材はもちろんすべて窓!

年表 展示風景 

マティスやクレーなど、20世紀絵画の巨匠たちに描かれた窓。
安全な窓の内側から見る “怖い”世界、反対に窓によって閉ざされた空間の閉塞感・・・その一瞬を切り取った写真作品。室内と外界をつなぐ現代の窓、テレビやPCのスクリーン・・・
あまりにバリエーション多彩で、数枚の画像ではイメージが伝えきれないので、今回はこちらの公式HPの画像をどうぞ。『窓展:窓をめぐるアートと建築の旅』
https://www.momat.go.jp/

ゲルハルト・リヒター《8枚のガラス》(2012年) 展示風景

古今東西のアーティストたちの、窓に対する熱い関心と、多様な解釈を触れていると、わたし自身も、“この風景を窓枠で切り取るとしたら・・・ “と、知らず知らずのうちに「窓枠目線」で周囲を見ていたり、“窓の開閉(カーテンなどでの視界の遮断も含めて)というのは、外とのつながり方を選択するという行為なのだ・・・”などとちょっと哲学的な事を考えていたり。帰り道では、来る時には気にも留めなかった建物の窓が、どうしようもなく気になってくる・・・脳みその眠っていた部分が、確かに揺り動かされてます。
見慣れた日常が新しく見えてくる――忘れていた感覚にきっかけを与えてくれる展覧会ですよ。みなさんもぜひ、体験してみてください!
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