2018.11.26
株式市場はGAFAとともに長い調整に入る
リーマン・ショック以降、世界的に経済成長率の低下が指摘されているなかで、これら6社は新しいビジネスモデルを築いた成長株として、投資家の資金を過剰といわれるほどに集めることができたのです。
しかしながら2018年10月以降、これら6社の株価は総じて下落する基調を強めてきています。
2018年7~9月期の決算は概ね好決算といえる内容であったものの、利益率が低下しているということが悪材料視されてしまっているためです。
たとえば、アマゾンやアップルは10月以降からのわずか1カ月半で株価が20%近くも下落しています。ヘッジファンドはこれらのIT株に資金を集中させ、市場平均を上回るリターンを得ることができましたが、10月の運用成績はマイナス6%に接近するまでに落ち込み、2008年のリーマン・ショックに次ぐマイナス幅を記録しています。
投資家にとって成長株と位置付けられているIT株の魅力というのは、その利益率の高さと投資(コスト)の少なさにあります。データという無形資産を武器に莫大な利益を稼ぐIT企業は、重厚長大な設備を抱える製造業のように大規模な投資を必要とせず、データを独占するビジネスモデルによって高成長を続けてきています。それにもかかわらず、過度な節税によって正当な税金を払わないばかりか、他の大企業と比べて極めて少ない従業員でビジネスが事足りてしまうため、社会全体への還元には消極的な姿勢を取り続けてきたのです。
ところが最近では、これらのIT企業に対して、社会と共存するためのコストが求められ始めています。欧州を中心に課税を強化しようとする動きが広がっている一方で、賃上げによるコストや情報監視・情報流出の対策コストが膨らんできているのです。たとえば、利益を従業員や社会に還元していないと批判されていたアマゾンでは、アメリカ国内の従業員の最低賃金を時給15ドルに引き上げるという決定をしています。大幅な賃上げは11月1日から実施するということですから、2018年10~12月期決算からコスト増による利益率の低下は避けられない見通しです。
たとえば、偽ニュースの拡散や情報流出の問題が相次いだフェイスブックでは、これらの問題に対応するために新たに社員を増員し、正社員数は2018年9月末で約3万3600人と1年前の約2万人から7割近くも増えています。おまけに、今年に入ってデータの不正利用が発覚した反省から、個人データを第三者に渡さない選択権を利用者に与えるようになり、広告収入の伸びが鈍化してきているのです。グーグルでも個人情報が大量に流出し、すべてのプラットフォーマーが個人情報保護に関する対策費の積み増しを迫られています。
その結果、冒頭に挙げた6社のコストは2013年と比較して優に2倍超に膨らんできているというわけです。
利益率が低下する要因は、これらのコスト増だけではありません。巨大IT企業はこれまでM&A以外では大規模な投資をする経験が乏しかったので、従来から大規模投資をしてきた大企業のような厳格さは持ち合わせていないようです。そのため、アマゾンが広告事業に新規に参入し、アップルが動画配信に事業の拡大を目指すなど、すでに強力なライバルがいる事業に巨額に資金を投じることによって、利益率の低下が避けられないのは仕方がない状況にあるのです。
成長期待から上昇トレンドを保ってきたアメリカ株は、2019年には本格的な調整の期間に入る可能性が高いと見ております。
NYダウとS&P500の双方のチャートがダブルトップの形になり、今年の2月の調整時よりも先行きが不透明になっていることを知らせてくれています。IT株の成長期待の剥落→アメリカ経済の大減速という経路を辿って、2019年のNYダウとS&P500が2018年の高値から2割~3割下がることは十分にありえると覚悟しておいたほうが無難でしょう。