2019.6.24
考える力とは「解くことができる問題」を見つけ出す力
本書は私の学習塾での指導経験と、経営コンサルタントとしての経験を活かし、「問題を正しいものとして扱う学校教育」と「問題を自ら設定することが求められる社会人」を橋渡しするために執筆しました。
6ページより引用
東京大学文学部卒業後、経営コンサルティング会社を経て、学習塾ロジムを設立した著者。コンサルタント時代には、社会人向けのロジカル・シンキングの研修に当たっていたこともあります。
現在は、小学生から高校生までを対象に、論理的思考・問題解決をテーマにした講座を開講。国語や算数といった主要科目における学習においても、効果を上げているのだといいます。
考える力を持っている人とは、どんな人のことをいうのでしょうか。それは、問題解決力が高い人、創造力がある人、生産性が高い人、仕事が速い人であると著者はいいます。
本当に取り組むべき問題を見つけ出していく力があれば、ビジネスや勉強など、どんな場においても、作業量を減らしつつスピード感を持って成果を出していくことができるでしょう。
また、考える力とは、「解くことができる問題」を見つけ出す力でもあるのだとか。ちなみに、良い問題とは、「解くことができる」「解いたら効果が出る」の2つの条件が揃ったもの。たしかに、自力で解けなかったり、時間がかかりすぎる問題に取り組むのは非効率です。
本著には、多くの事例が挙げられています。日常的に起きる目の前の現象に振り回されずに、本質的な問題を見つけ出す力を身につけておくことは、今の時代において重要なスキルであるといえそうです。
問題設定力はリーダーの必須スキル
問題設定がうまいー。それは、「欲しい結果を手に入れるために、より簡単な作業=問題を見つけ出す」ということだと言い換えることができます。
25〜26ページより引用
ビジネスの場では、学生時代のように「明確な問題を与えてほしい」といった姿勢では、すでに誰かが解決した問題を繰り返して処理するだけの人になってしまいます。まさに、AIにとって代わられる可能性があるといえるでしょう。
だからこそ私たちは、正しい問題は何であるのかを、常に考えていく姿勢を身につけていかなくてはなりません。
問題設定とは、勉強でもビジネスでも、上流の作業であると語る著者。スタートが違っていると、下流に行くに従ってその間違いは増幅し、到達点がまったく違ってくるといいます。
たとえば、業績が低迷している企業が、社運をかけて新商品を開発。しかし思ったように商品が売れずに倒産の危機に陥ったとしたら、問題を設定した社長の力不足であるといえます。
たとえば、業績が低迷している企業が、社運をかけて新商品を開発。しかし思ったように商品が売れずに倒産の危機に陥ったとしたら、問題を設定した社長の力不足であるといえます。
だからこそ、ほしい結果を得るためにより簡単な作業で解決していく問題設定力は、リーダーの必須スキルであり、鍛えていく必要があるといえるでしょう。
問題が発生している現場に足を運ぶ
問題を発見していくための一次情報を得るためには、まず現場を見ることが大事であると著者はいいます。そして、そこにいる人たちにインタビューをする際には、意見と事実を分けて聞いていく。そして、その意見を持つに至った経緯について検証していくことがポイントであるといえそうです。
しかし、それでも問題の本質がなかなか見えてこない場合は、どうしたら良いのでしょうか。そんなときには、問題がどこで発生しているのかを探していくことで、なぜ発生しているのかという理由も見えてくることがあるのだといいます。
たとえば、ある百貨店の業績が不振なのがなぜなのかわからなかった場合、どこが業績不振なのかについて考えていくと、精査しなくてはならない対象が絞られてくるのだとか。特定の場所に限られた性質がわかることで、問題発見が容易になってくることもあるようです。
私たちの日常には、解決していかなくてはならない問題や課題がさまざまにあるものです。だからこそ、目の前の現象に振り回されず、結果を最大限に出していく問題設定力を高めていきたいものです。
タイトル: 考える力とは、問題をシンプルにすることである。
著者: 苅野進
発行: ワニブックス
定価: 1,400円(税抜)