2019年9月18日 更新

【書評】伊勢角屋麦酒の破天荒社長が行く!ビール天下統一の道

この本は、1代にしてクラフトビールの大家「伊勢角屋麦酒」を築き上げた鈴木社長の熱く破天荒なサイエンスの物語である。

この本は、1代にしてクラフトビールの大家「伊勢角屋麦酒」を築き上げた鈴木社長の熱く破天荒なサイエンスの物語である。

伊勢で400年以上続く餅屋の21代目である鈴木社長がビール作りを始めたのは「微生物(ビールの酵母)と遊べる」からだ。幼い頃より微生物が好きで、本当は家業に戻らず大学の研究室に残りたかった鈴木社長は「餅は夏は売れないから、ビールを売ろう」と家族を説得し、当時年商の2倍以上である2億円の設備投資をしてビール事業をはじめた。
しかし間もなく第一次クラフトビールのブームは過ぎ去り、残ったのは低迷するビール事業と、わずかな利益を食いつぶす赤字レストラン。ビール醸造ド素人、飲食店ド素人、マーケティングも知らず巨大な負債を背負う若者をどん底で支えたのは、経営・科学研究等、各分野で先を行くパイオニア達の叱咤激励と、大学で培ったサイエンス的着眼点とド根性、そして限りない微生物への愛だった。
初めての大口注文を踏み倒される。世界一ビールのタイトルを手にしながらも全くビールが売れない。
そんな数々の課題を乗り越え、1代にしてクラフトビールで国内指折りの醸造所へと成長させた鈴木社長の破天荒な半生を追う一冊。

■道を切り開くのはサイエンスである

この本を読めば、鈴木社長がビール作りのド素人から今日の「伊勢角屋麦酒」を築き上げた道のりが、地道かつ丁寧なサイエンスの足跡だということが分かるだろう。
ビールのオフフレーバー(酸化、ダイアセチル、DMS、異臭等)を取り除くためにひたすらデータを蓄積しPDCAを繰り返す。
国際大会の基準を研究し、自ら審査員として経験を積みながら、金賞受賞ビールをつくる。
情熱を持ち、かつ冷静に物事を進める彼のやり方はまさにサイエンティストのそれである。
彼の成功のエッセンスは、ビール作りだけでなく全ての物事に通じていることだ。
サイエンス的着眼点こそが、この本で一貫して叫ばれている鈴木社長の成功への教訓の1つである。

■破天荒を貫け

失敗への恐怖。
周りからのプレッシャーや責任。
400年以上続く老舗の跡取りならば、背負うものは人並み以上ではないだろうか。
この本は、鈴木社長のどん底を余すことなく描写している。
「自分の代で歴史を終わらせてしまうかもしれない」そんな思いに眠れない日もあったそうだ。
自分自身に給料が払えず、収入のことだけを考えたらアルバイトをした方が割が良い日々。
しかし、どん底にいながらも諦めずに自分を過信し、信じぬいた果てに業を成した。
万人にそういう生き方が通用するとは限らないが、そういった成功を夢みる人間にとっては、この本が何よりの励ましになるはずだ。

■こんな人に読んでほしい

職人気質の人、研究者肌の人は、鈴木社長の飽くなき微生物への探究心と研究対象への愛に共感を覚えるはずだ。
またビール好き、お酒好きな人にもぜひ読んでほしい。一冊読めば、鈴木社長によって丁寧に作られた伊勢角屋ビールを飲んでみたくなる。製造背景にある素晴らしいストーリーを知って飲むお酒ほど美味しいものはないだろう。
最後に、どん底を経験する覚悟で成功を夢見る全ての人に、ぜひ読んでほしい。鈴木社長の半生から全て学び吸収し、夢に挑んでほしい。

 発酵野郎!: 世界一のビールを野生酵母でつくる

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