2017年6月15日 更新

仮想通貨は「貨幣」ではなく「株式」だ。

5月に入って仮想通貨がバブルの様相と化している。しかしなぜ今、仮想通貨が多数乱立しているのか理解できているだろうか。その本質を理解しよう。

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【連載】金融リテラシーで変わる社会(第7回)

5月のはじめ、約15万だった仮想通貨ビットコインは同25日には約25万円まで上昇した。また、同時期には他の仮想通貨、特にリップルが約3ヵ月で100倍に暴騰したことも話題となり、他の仮想通貨についてもこの2つに引っ張られるように軒並み暴騰していた。このバブル相場から、テレビや新聞、マスコミなどでここ数週間仮想通貨特集が数多くなされていたが、ビットコインや仮想通貨の本質が正しく説明されているとは言い難い。今回は仮想通貨・暗号通貨とはいったい何なのか考えてみたい。
仮想通貨において最も著名なものはビットコインだが、この基盤となっている技術がブロックチェーンだ。例えばビットコインについては「誰が誰に対していつ、いくら送受信したか」の情報が、どこかの単一のシステムに保存されているのではなく、ノードと呼ばれる管理者全体に分散されており、内容も開示されている。つまり、どこかのサーバーに保存されているのではなく世界中に情報が散らばっており、またその情報が誰でも見る事ができることから改変が難しいということだ。情報が共有されており、ねつ造や横領ができないことがこのブロックチェーン、ビットコインの特徴だ。
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しかし、我々が誤解してはならないのは、現在の米ドルや日本円といった既存の通貨に成り代わって、これらの仮想通貨が「決済通貨」になることはまず考えにくいということだ。月初は1コインで15万円のものが買えたが、月中には32万のものが買えるような状況。場合によっては逆の場合も十分にありえる。1ヵ月足らずの期間で価値が倍増もしくは半減する通貨を日常の決済で利用することは難しい。仮想通貨を発行している者の側で、決済通貨を目指している者は極めて少ないと考えられる。では何のために通貨を発行しているのだろうか。
現在の仮想通貨のブームの背景には、仮想通貨が「技術自体もしくは技術を持つ企業の株式」となっていることが挙げられる。例えば急騰しているリップルについて。リップルの技術は、国内ではSBIを金融機関の旗振り役とした「内外為替一元化コンソーシアム」の構築に利用されており、国際的には三菱東京UFJ銀行やバンクオブアメリカ・メリルリンチ、スタンダードチャータード銀行との間で2018年にも始まる個人間送金サービスの構築に利用されている。リップルの急騰はこれらのニュースによるものである。注意すべきなのは「仮想通貨のリップル」がこれらに利用されるのではなく、「リップル社の技術」が利用されるのでしかないことである。この点を履き違えてはならない。リップル社の技術が国内外決済に利用されることが評価されているのであり、仮想通貨リップルの需要が高まるわけではない。
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仮想通貨、特にビットコイン以外については株式としての面が大きくなってきた。今ではベンチャー企業が資金調達するのに手っ取り早いのは、ベンチャーキャピタルやIPOよりも新規の仮想通貨発行による資金調達であるICO(イニシャル・コイン・オファリング)で、何の規制もなく個人から資金を集めることができるとしてブームになりつつある。おそらくは近い将来、仮想通貨は「通貨」ではなく「有価証券」との枠付けになってくると想定される。仮想通貨に投資する際には「株式」であることを認識したうえで、技術的背景等をしっかり把握して投資を行おう。

岸 泰裕

岸 泰裕
岸 泰裕金融工学MBA、大学非常勤講師/大学卒業後、Citiグループの日本における持株会社に勤務。在籍中に金融工学MBAを取得する。その後スタンダードチャータード銀行の東京支店に転職。現在は金融機関を退職し、明治大学、名古屋商科大学、龍谷大学や企業研修・セミナーなどで金融論等について各種講義を行っている。
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