イタリアのイクメン事情 男子トイレでのおむつ替えやPTA活動にも積極的

母が強いといわれるイタリア。その一方で、イタリアはヨーロッパでも男尊女卑が残る国としても有名という矛盾があります。映画『ゴッドファーザー』の男性像がそれ。 しかし、母親に支配されていたり、男性優位を振りかざしていたイタリア男子たちが変わりつつあるのです。

2018.9.4

「おむつ替えは母親の義務だと誰が決めたの?」

イタリア南部には依然として「男子厨房に入らず」に固執する男子が多いものの、ミラノであるキャンペーンが広がっていました。
 インスタグラムで「私は変える(#Iocambio)」というハッシュタグを検索すると、女子トイレでおむつを替える男性たちの写真が登場します。
 衛生的で清潔な公衆トイレがあちこちにある日本に慣れた人にとって、ヨーロッパを旅行するときに憂鬱なのが公衆トイレ事情。これに比例して、赤ちゃんのおむつ交換台も公共の場には少なく、ミラノではこれを問題視する人が多かったのです。
 この運動のイニシアティヴをとったのは、Onalimというミラノの協会でした。より良いミラノを目指し、7月25日から男性たちがおむつを替える写真の投稿を開始したのです。
これに真っ先に呼応したのは、トスカーナ州の空港でした。
 8月11日、twitterでフィレンツェとピサの空港内にある男性トイレに、おむつ替えの台が設置されたことが告知されたのです。

父親の世代とは異なるライフスタイルを

 市場調査や統計分析の専門機関「DOXA」は、20歳から54歳のイタリア人男性を対象に「食生活」についてのアンケートを実施しました。その一項に、「台所で料理をしますか」という質問があったのです。
『ゴッドファーザー』を地で行くように「絶対に台所には入らない」と答えたのは、全体のわずか8パーセントでした。実に、90パーセント以上の男性が「常に」「週に何度かは」「気が向いたときに」「必要に応じて」台所で料理すると答えました。
 常に料理をすると答えた男性は、半数に迫る41パーセント。27パーセントの男性は、「料理をするのが楽しい」とコメントしているのです。
 30歳から39歳の男性に顕著であったのは、「料理をすることは女の子を誘う手段」と答えたことであったのがイタリア的に愉しいところ。
買い物にいたっては、10人中7人の男性が「日常的にスーパーで買い物をする」という結果に。そして、そのうちの66パーセントは「健康的な食材を買うよう注意している」のだとか。昨今の健康志向は、ひょっとしたら男性から始まったのではと思わせるような結果です。

クラス代表もパパが立候補

 子供の学校への送り迎えが親の義務であるのは、日本以外の国では珍しいことではありません。共働きが多いのも、現在の子育て世代では当たり前のこと。
子供だけで登下校をしてくれる日本の公立の学校とは違い、一日2度顔を合わせることになる父兄たちのあいだでは良くも悪くもコミュニケーションが密になります。
担任の先生の噂、宿題の確認、誕生会開催のお知らせなど、直接顔を合わせなくてもクラスの父兄で構成されるチャットは1日中着信しっぱなし。
このチャットは、基本的にパパもママも参加しており、ヒステリーになりがちなママたちをなだめるパパたちが一苦労するという場面もあります。ついには、クラスのパパたちだけのチャットが登場して、こちらも怪しげな話題で大いに盛り上がっている様子。
クラス担任の先生からの連絡は、クラス代表を通じてクラスに通達されます。しかし、感情的になりがちな母親が代表になるとヘンな派閥ができたり先生と揉めたりするかも、と考えた父親がクラス代表に立候補し、実際その務めを見事に果たしていたりします。
子育てに参加し、ママたちに気を遣い、パパたちも楽ではないのですが、会社も「子供の用事で」と言えば水戸黄門の印籠のように遅刻や早退が認められているのが、イタリアの良いところかもしれません。もちろん、職種にもよりますが。

車の運転だけは男尊女卑健在!

経済格差が顕著である近年、イタリア男子のライフスタイルも両極端であるといわれています。つまり、近代的に家事に参加する男性と、南部の伝統に忠実に嫉妬深く女性を支配したがる男性の差が広がっているのです。
そんな中で、男尊女卑が根強く残るのは車の運転。「女は運転が下手!」という意識はなかなか変わらず、女性が運転する車の後ろでは男性たちがクラクションをビービー鳴らすという光景は、一向に改善されないのです。
 
井澤 佐知子

井澤 佐知子

イタリア在住十数年、美術と食をこよなく愛す。眼下にローマを見下ろす山の町で、イタリアのニュースを発信中。
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