via pixabay.com
2017.5.8
2017年4月、6日の米国によるシリアへのミサイル攻撃をきっかけに、日本においては北朝鮮へも米国が攻撃するのではないかとの報道が相次いだ。米国はミサイルの発射実験をはじめとした挑発行為を繰り返している北朝鮮に対して警告を行い、トランプ大統領が自身のSNSで先制攻撃も辞さないという発言をしたために、北朝鮮から名指しで仮想敵国として指名されており、攻撃対象といわれている日本には緊張が走った。
特に注目されたのは4月15日の金正日誕生日および4月25日の朝鮮人民軍の創設記念日だ。両日ともに北朝鮮において重要な祝日である。この日にICBM発射実験もしくは核実験を行うのではないかと言われており、両日共に警戒がなされていた。結果的には4月15日には軍事パレード、25日には大規模な火力演習を行ったのみであった。最もその前後や29日にもミサイルの発射実験が行われたが、危険視されていた両日は危機に直接つながることなく経過した。この両日について、国内の報道や政府の発表と市場は明らかに違う見方をしていた。
報道においては15日よりも25日が危険視されており、よりリアルな危険があるとして朝から各種情報番組が北朝鮮問題の解説を行った。また、日本政府においても21日に政府が公開している「国民保護ポータルサイト」において、北朝鮮情勢が緊迫しているとして国内への弾道ミサイル攻撃を想定した対応マニュアルである「弾道ミサイル落下時の行動」を相次いで発表した。また多くの地方自治体において各自治体における避難・対処方法のWEBへの記載や、学校において注意文章が配布されたりと、25日に発生しうる危機に対して注意喚起と警戒が行われていた。しかし市場は違う見方をしていたのだ。
私たちに身近な日経平均で見ても、15日を迎えるまでにおいては11日以降、4日間で約400円下落をしていたが、21日から25日にかけての3営業日における日経平均は約650円もの値上げをしており、3日連続で200円超の日経平均上昇となっていた。また、日経VIとよばれる日経恐怖指数においても、15日までは上昇の一途を頼り、14日においては23.03を記録したが、25日においては15.57となっていた。VIXと呼ばれる米国恐怖指数も同様の動きをしている。15日までに関しては13日の段階で15.96となっていたが、25日には10.76となっている。これは、少なくとも市場参加者、すなわち投資家においては、15日については「日本やアメリカが危機に巻き込まれる可能性」を危惧していたが、25日に関しては「すでに危機は去った」と認識していたといえる。市場参加者、すなわち「世界の投資家」はすでに北朝鮮における危機は収束済みだと認識しているといってもよい。マスコミやイメージに左右されるのではなく、現在がどの様な状況にあるかを判断するには経済指標、特に市場が形成している指標を見る事が最も客観的な目線で判断ができる。
4月末日において、日経VIならびにVIXについてはすでに過去最低ラインまで下降している。投資家は日本と米国についてはもはや危機ではなく、過去にない程の安定期もしくは成長期に入っていると見てもよい。一方でVSTOXXと呼ばれる欧州恐怖指数についてはシリア攻撃直後からは落ち着いたものの、いまだ上昇傾向にある。これは、世界が今危機感を持っているのは北朝鮮問題ではなく欧州の様々な問題であることを示している。近年、情報リテラシーの重要性が叫ばれているが、そのためには「世界がどのようにみているのか」を理解する必要がある。金融リテラシーなくして情報リテラシーが身につくことはない。世界の投資家と同じ目線で情報を見る金融リテラシーを身につけていこう。