2018年7月16日 更新

7月開戦と噂さされる日米貿易戦争の真実

FFR(日米首脳会談で合意した新しい通商の対話の枠組み)が7月末の開催で調整が始まりました。あまり聞き慣れない協議の通称である「FFR」。今年の経済見通し、株式市場にもしかしたら一番大きなインパクトを与える可能性があるこのFFRに注目してみたいと思います。FはFree(自由)、FはFair(公正)、RはReciprocal(相互的)の頭文字です。日本としては、日米2国間のFTA(自由貿易協定)の締結を避けたいところですが、米国は2国間協定を推し進めてくることでしょう。

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2018.7.16

そもそも米中貿易戦争に勝者はいるのか

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さて、このメガトン級のインパクトを与える可能性があるFFRを見ていく前に、今まさに真っ只中の米中貿易戦争をおさらいしたいと思います。
最初のきっかけは、2018年3月22日に米国通商法301条による中国からの輸入品500億ドル相当に対する追加制裁関税が発表されたことでした。そして、今回7月6日に米国は中国に対し追加制裁関税を発動し、その内容は340億ドル相当の中国からの輸入品に対して25%の関税をかけるというものでした。中国も負けていません。即座に同額の340億ドル相当の米国からの輸入品に対して25%の追加報復関税を発動しました。世界中の誰もがすわ貿易戦争の勃発かと警戒感が広まり株価も大きく変動しました。ちなみにトランプ大統領は、残る160億ドル相当についても2週間以内に追加発動すること宣言しています。しかもしかもです。それだけでは収まらず、さらに2000億ドル相当の中国からの輸入品に対しても10%の追加制裁関税を発動すると公言しています。
なぜ、ここまで米国は強気になれるのでしょうか。報復措置の繰り返しになりそうなものですが、勝機はあるのでしょうか?一応、トランプ大統領サイドには2つの勝負カード(ギャップ)を保有しており勝機ありと鼻息が荒いと言われています。
1つ目のカードは、米中の貿易差額。そこのギャップこそが勝機といわれています。2017年における米国の中国からの輸入は約5,050億ドルです。一方、中国の米国からの輸入は約1,300億ドルしかありません。その差額、3,750億ドル。トランプ大統領としては、中国が米国に対して制裁を掛けることができる上限が1300億円だと高を括っているわけです。3,750億ドル分だけ米国が多く関税をかけられるので優位であると。
2つ目は、トランプ大統領と習近平国家主席との任期の違い(ギャップ)です。トランプ大統領の最大の目的は、2018年の中間選挙、2020年の米国大統領選挙での勝利と目されています。一方、習国家主席は、最大で2027年まで任期を伸ばすことが可能で、まさに長期政権です。ところで、貿易戦争は「勝者なき戦争(Lose – Lose)」と言われ、経済は必ず両国が共に疲弊し、最終的には誰も得をしないことを歴史が証明しています。だからこそ、トランプ大統領としては消耗戦であれば経済規模が大きく、長期の影響を考慮しなくて良い米国に部があると見ているのかもしれません。だから、任期の長い周国家主席サイド、つまり任期途中に景気後退を避けたい中国の方が先に「白旗」を挙げるのではないかと思われているわけです。
ただし、中国も負けていません。中国も2つのカードを保有していると言われています。中国は世界一位の米国債保有国であり、いざとなれば米国債の大量売却という脅しながら交渉を進めるのではないかとか言われています。または、中国国内にある数多くの米国企業に対して何らかの制裁を加えるのではないかなど物騒な話もあります。
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この様に両国がそれぞれ強い交渉カードを持っていることから、最終的には互いに落とし所を見つけ貿易戦争は回避されるのではないかという意見が大半を占めているようです。
しかしながら、油断は大敵だと感じています。それは、今回の関税制裁は、トランプ大統領による独断によるものではなく、米国議会の強い意志を反映して、つまり米国の総意として発動されているからです。
今回、米国が課税対象とした818品目のほとんどは、資本財や中間財など、航空や産業用ロボット、半導体など、ハイテク分野の製品です。今回の対象となった製品は、中国政府が世界有数の製造業大国になること掲げた産業政策「中国製造2025」における重点産業野の製品と同じものです。どうやら今回の制裁の目的は、今後も米国がハイテク産業国No.1の地位を維持していくこと、そのために「叩けるうちに叩く」「この段階で潰しておきべき」といった米国内のインセンティブが強く反映されたものだと言えそうです。そうなると、貿易戦争という名の「覇権国の主導権争い」というになりますので、そう簡単には妥協するかどうかは未だ不確実と言えそうです。
いずれにしろ、この様な米中の貿易戦争は、日本にとっても対岸の火事ではありませんでの、今後もFFRの前に米中貿易戦争を引き続き注目していく必要がありそうです。
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渋谷 豊 渋谷 豊