〈石田純一〉お金ではなく、価値を追う。稀代のプレイボーイが無二のタレントであり続ける理由

インタビュー

「お金とは、価値に対する対価。(石田純一)」

1978年に劇団の研究生としてキャリアをスタートし、やがて時代を代表する俳優に。華やかなプライベートがいつでも世間の注目を集め、何度となく仕事や収入の大波を被りながらも、現在もバラエティ番組やイベントを中心に第一線で活躍をし続けている石田純一さん。成功の秘訣は、石田さんの本質を追う思考。芸能界でも指折りのモテ男が貫く生き方とは──。

知性とか知識って、花粉症と同じ!?

STAGE編集部:浮き沈みの激しい芸能界で、ずっとご活躍を続けていらっしゃいます。石田さんご自身で感じている、活躍し続けるための秘訣とは?

やっぱり、振り返るとどんなときも「自分へのインプット」を続けてきたこと。これに尽きるんじゃないかと思いますね。

20歳ぐらいの頃は、親戚が集まって政治経済の話をしていても、とにかく口下手で言いたいことはいっぱいあるんだけど、意見が言えない。人前で自分の意見を言うことにすごく苦手意識がありました。

STAGE編集部:人前が苦手!?意外です。

でも、知性とかそういう知識って、勉強してある程度貯まってくるとそこからはね、溢れ出てくるんですよ。花粉症も、吸い込んで体内に溜まった花粉が一定量に達したら、急に発症するじゃないですか。それと同じかもしれません。

だから、20代の頃は勉強してもそんなにアウトプットってできなかったですけど、ある時点からもう本当に、どっからでも、どの分野からでも、何とでも持ってこれるというか。溢れ出てくる感覚ですよね。自分へのインプットって、やってすぐ効果が出るものではないかもしれないですが、でも、あるときから必ず効いてきますから。

STAGE編集部:とてもお忙しいと思うのですが、どうやってインプットの時間を作っていらっしゃるのでしょうか?

時間は有限なので無駄なことをしない。これに尽きますよね。暇さえあればメールやラインをやっている人も多いけど、僕に言わせるともったいないなと。モバイルを見てばかりいてもほとんどお金を生まないよね。その時間があるんだったら本を読んだほうがいいでしょ。

それから、言い方が大変失礼だけれども、どうでもいい惰性みたいな付き合いもなるべくやめる。テレビもほとんど観ないですね。興味のある歴史の番組とか、NHKの特集だとか、そういったものは観ますけど。

STAGE編集部:無駄な時間を省くだけでなく、インプットする情報も厳選しているのですね。

テレビをつけっぱなしにするのも、情報の入れ方のひとつなのかもしれないけど、ひとくちに情報といっても質は全然違いますから。インターネットで情報は取りますけど、僕はとにかく本を読みますね。そうすることでもっと包括的に、もっと系統立てて、もっと時間軸に沿って情報の整理ができますから。

小説からビジネス書、専門書までときには書き込みをしながら読む。

いずれにしても、いっぱい勉強したり本を読んだりすることが大切。僕は今でも講演会やセミナーによく行くんですよ。何か単語1個でも響けばすごくいいですし。アウトプットのための土壌をいかに豊かに持って、そしてそれを耕すことができるかということじゃないですかね。

お金の本質を考えたら、稼げばいいじゃん

STAGE編集部:最近では、夢があっても自信がないからチャレンジできない、知識があっても、不安が先にたって行動を起こせないという人も増えているようですが。

未来のことを考え出したら本当に不安は多い。だけど、ずっと不安とか心配とか言っていても、それでお金が降ってきたりしますか? 逆なんですよね。お金の本質を考えたら、世の人が求める商品やサービスを提供して稼げばいいじゃんと考えるんです。だから僕の場合は、不安に思うよりも行動が先ですね。

もちろん、一瞬たりとて気を引かれないというわけではないんです。例えばゴルフでいうと、左側の池に入れるんじゃないかとか、右のOBに行ったらちょっと痛いなっていうのはあるから、真っ直ぐないしはやや左とかいうことは考えて、気をつける。だけど思い切りよく。

STAGE編集部:思い切りよく、ですね。

なんでもそうなんですけど、思い切りのいい人ってやっぱり敵として怖いんですよ。ビビっている人はあんまり怖くないですし、頼りにもしにくい。

お金を得るための3つの“リソース”

STAGE編集部:石田さんの考える「お金の本質」とは、いったい何なのでしょうか?

僕はお金を「価値」の対価だと思うんですよ。その価値に社会性があって、世の中が求めているものであればあるほど、当然、お金持ちになれる。

例えば、上沼恵美子さんだったら、面白いツッコミや切り返しをしてくる。それは普通の人にはできないし、みんな見たいわけです。で、上沼さんは見たいものを提供しているから、他のタレントさんよりも稼いでいるっていうことですよね。世の中が求めているもので、ちょっと他の人には生み出せないものを自分が提供できれば、何歳になってもいくらでも稼げるって思っています。

STAGE編集部:他の人には生み出せない価値を提供すれば、お金がついてくる、ということですね。

そう。価値を基準にしてお金を稼いでいく。例えば、時間を基準にして働いてお金を稼ごうっていうふうになると、ちょっとつらい言い方なんですけど、やっぱり稼げる金額って限られますよね。だから、働く時間よりも、その生み出す価値を考える。そうすると、もっと大きなリファンドがあるということも言えますから。

ちょっとキザな言い方すると、働くことは、社会を美しく輝かせるためにいろんな行為をしていくということだと思っているので、お金を追ったことがないんですよ。だから、お金というものを意識してないですね。信じられないかもしれないですけど。

STAGE編集部:お金というものを意識していない。とても印象的なフレーズです。

昔は、1ヵ月舞台をやって出演料が7,000円っていうこともあった。冗談のように言うんですけど、本当なんですよ。多分20数回の公演だったから、1回320円とか350円とかなんだけど、そのときも楽しかったし、今はそれよりは何ケタか出演料が上がっているけれど、同じくらいに楽しい。お金がいくらだからどう、と言ったことは多分ないですね。

ただ、お金は、「価値」の対価だから、お金を生み出すための“リソース”、つまり“資源”を意識することはとても重要だと思います。ひとつは、知識や知性。それから、人間性や人からの信用(リライアビリティ)、そして人脈。これら3つのリソースを大きく充実させると、本当にお金は後からついてくるものなんじゃないでしょうか。

国道246号線の歩道橋からの忘れられない原風景

STAGE編集部:昔からずっと、そんなふうにお金の本質を捉えていらっしゃったんですか?

もちろん、お金を意識したことがまったくないわけではないですよ。本当に今でも忘れられないんですけど、学生の頃、すごく寒い冬の夕方4時ぐらいに電車賃がなくて、渋谷から、当時所属していた演劇集団「円」があった新橋まで歩いていたんです。国道246号線の歩道橋の上からふと道路を見下ろしたら、上下線とも車がいっぱいで、夕焼けに照らされていた。それを見て「何、この車の数?」と。ビルだってそう。あれも、当たり前ですが、すべて持ち主がいるんですよ。「今の僕のスピードで人生が進んでいって、1台でも車を持てるようになるのかな」「軽自動車だったら持てるかもしれないけど、メルセデスだったら70年ぐらいかかるんじゃないかな」と思いましたね。

でも実際には、それは早くに実現したんです。普通に考えたら無理ですよね。それなのになぜ実現できたか。

僕はいつも人生を下りのエスカレーターに喩えているんですが、下りのエスカレーターに乗って普通のスピードで歩いていても元の場所からはなかなか変わらない。では、上に行きたい人はどうすればいいのか。走るしかないですよね。

STAGE編集部:石田さんも、がむしゃらに走ることでエスカレーターを上っていったわけですね。

「でも、ずっと走り続けるのは辛いなぁ」って思うでしょう?実は、下からはなかなか見えないんですが、上に行ったら“踊り場”があるんです。走って走って、いったんエスカレーターを上がりきった人は、そこで休んだり、立ち止まったりできる。そうすると、目の前にまた新たな下りのエスカレーターが現れる。さらに上に行きたいなら、意を決してまた走り出す。この感覚わかるかな。それの繰り返しなんです、人生とは。

STAGE編集部:走って、少しだけ休んで、を繰り返しながら下りのエスカレーターを上っていくのが人生だと。

でもね、走り続けていると、ほんのたまにだけど、上りのエスカレーターに遭遇することもあるんです。これも人生のおもしろいところ。

STAGE編集部:人生とお金も、そういうものかもしれませんね。

そうですね。お金を「忌み嫌われるもの」だとか「汚いもの」だとか、そういうふうに考えて、ちゃんと考えたり付き合ってこなかったりすると、かえってお金に振り回されたり縛られたりすることが多いようですね。追いかけたれたり……。

だから、常にお金、お金というのではないんだけれども、お金をすごく大切に扱う気持ちは大切だと思います。お金に対する愛。リスペクト。家でも、あるいは自分で運んでいるときも、すごくきれいにして、尊重するっていうのが必要だと思うんです。使うときも、冗談抜きで「また会おうね」「お友達、連れて帰ってきてね」「もう本当、大好きだからね」って心の中で言っています。

「お金とは、価値に対する対価。(石田純一)」

石田純一さん

タレント・俳優

1954年生まれ。1988年に放送されたドラマ「抱きしめたい!」(フジテレビ)でブレイク。"トレンディ俳優"の代表格として数多くのドラマに出演する。俳優のほか、司会やキャスター、バラエティ番組出演など幅広く活躍。知性とユーモアの絶妙なバランスが、唯一無二のキャラクターとして、幅広い年代に受け入れられている。近年はトークショーにも多数出演。豊富な人生経験から、多くのエピソードで会場を沸かせている。

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