米粒に絵を描く――。幼い頃の特技が天職に結び付いた
STAGE編集部:現在の仕事につくまでのキャリアを教えてください。
幼い頃からファッションが大好きで、大学を出てからはファッションブランドのプレスをしたり、出版社でエディターのアシスタントをしたりしていました。ネイルアーティストになろうと思ったきっかけは、父の影響が少なくありません。私がいろいろな仕事をして、まだこれといった道を決めていなかった頃、父が病気で倒れて入院してしまったんです。それから父はお見舞いへ行くたび、いつも私に「とにかく手に職をつけなさい」と言うんですね。父からのアドバイスでネイルの仕事に興味を持ち、父が他界してからネイルスクールへ通いました。
STAGE編集部:昔から絵が得意だったんですか?
幼い頃から絵を描くのが好きでした。特に得意なのが細かい絵を描くこと。小学生の頃、父が旅行のお土産に、米粒に絵が描かれたお守りをくれたんですよ。『こんな小さいものに絵が描けるなんて!』と感動して、自分でも試しにやってみたところ、意外なほどうまくできてしまい(笑)。父もびっくりしていました。もしかしたら、これが私のネイルアートの原点なのかもしれません。
STAGE編集部:Hana4さんの代名詞である極細のラインは天賦の才というわけですね。では、独特のオリエンタルな色彩のインスピレーションは?
両親がアパレル関係の仕事をしていたこともあり、自宅には世界中のたくさんのテキスタイルがありました。そんな環境で育ったせいか、織物の色や模様が大好きなんです。大学も芸術学科で、織物と染色を学びました。海外旅行もインスピレーションの源。その国の織物の模様や色には必ず意味があって、土地の風土や文化と結びついています。気になる模様のものがあれば、買ってきて部屋に飾ることも。
STAGE編集部:ネイルアートにテーマはありますか?
誰かの爪に描く場合は、その人の人生のテーマを大切にします。私はネイルを通じて、テーマを持って生きることの大切さを伝えたいんです。どんなものでもいいから、誰のものでもない、自分だけのテーマを。会話をして、その人の唯一無二のテーマを感じ、イメージを爪に表現するというのが私のやり方です。指は毎日目にするものだから、爪を見れば、生きるテーマを再確認できるはず。作品としてチップに描く場合は、自分のテーマを表現しています。
STAGE編集部:ずばりご自身のテーマとは?
そのときどきで変わることもありますが、一貫しているのは「ネイルアートの魅力を世界中に広めること」。繊細な線や独特の色使い、私の持てる技術や思いを作品に注ぎ込みます。私の作品を観てくれた人が、「ネイルアートってなんて素晴らしいんだ!」と興味を持ってくれたらうれしいですね。
誰かに教えることで、多くの学びや気づきを得ることができる
STAGE編集部:では、講師の活動をしているのも、ネイルアートを広めるためですか?
はい。アメリカや台湾のワークショップに講師として参加しています。親しい人たちからは、「なんでせっかくの自分の技術を人に教えちゃうの?」と言われるんですが(笑)。ただ、人に教えることは、じつは自分が学んだり、気づいたりすることも多いんです。いい刺激ももらえますし。
STAGE編集部:ジャンルの違うアーティストとのコラボレーションにも積極的ですね。
一般的にアーティストって自分の世界に閉じこもりがちじゃないですか。でも、そういうのが私の性に合わなくて。どんどん感性やスキルを交換することで、お互いに創造の世界が広がればいい、と考えています。ほかにもファッション誌の撮影やウエブマガジンの連載といったいろいろな活動をしています。
STAGE編集部:サロンを持たないのもHana4さんのポリシーですか?
はい、今のところ、サロンを持つつもりはありません。その理由はネイルアートをアートとして普及させる活動と、ひとりひとりのお客様のネイルを手がけるサロンワークとは、私にとっては別の仕事だからなんです。もちろん、サロンを経営するメリットやそこから得られる経験はたくさんあると思いますが、その分活動が制約される部分もある。今は世界中を飛び回って、ネイルアートの魅力を広める仕事に力を注ぎたいんです。