ところが、橋下徹弁護士は、この問題で日本が負けるリスクがあると主張されていました。いったいなぜ日本が負けるのか、理解できません。弁護士という人は、一般人と少し考えがずれているようにも思えてきます。
この問題について、お考えをお願いします。
徴用工の問題とは?
第2次世界大戦の頃に、日本の企業が韓国人を無理やり働かせたことに対しての損害賠償の問題です。ただ、この点については、日本と韓国の国家間で、50年以上も前に合意が行われています。日本が韓国にお金を支払うので、今後は個別の請求は一切無くそうという合意ですね。ところが、この合意があるにもかかわらず、韓国の裁判所が徴用工たちの損害賠償請求を認めてしまったわけです。
一度決められたルールを破って良いのか、国家間の取り決めを無視して良いのかといった点で、日本側は強く反発しています。
日本でも同じようなことは起こっている
上記のような問題を見ると、韓国という国は本当に非常識だと思えてきます。しかし、実は日本の法律でも、似たような問題は起こっているのです。
たとえば、損害賠償の請求には時効があると、法律で定められています。どんな酷いことをしても、20年たてば時効になり、損害賠償は請求できないと、法律にはっきりと書いてあるわけです。ところが少し前の最高裁判所の判決で、20年以上前に起こった殺人事件に関して、被害者の遺族が犯人にした損害賠償を認めました。そんなけしからん犯人には、法律に何と書いてあろうとも時効は認めないということです。そして、非常に多くの日本国民が、この最高裁の判断を支持したと記憶しています。
つまり、日本でも、一度法律で決められたルールでも、場合によってはひっくり返しても良いと、裁判所を含め、多くの人が考えているんですね。
沖縄をめぐるアメリカとの合意
さらに言えば、日本がアメリカと沖縄の基地などについて合意しても、「そんなことには沖縄の人は縛られないぞ!」という意見の人は、日本に多数います。つまり、国のした合意よりも、個人の権利の方が大切だという考えです。
「日本がアメリカと合意したので、沖縄の基地指定地の土地の権利については、個人は放棄しなくてはいけない。」なんて言われたら、日本の憲法学者や弁護士の9割は、目を三角にして激怒しますね。それに関して、土地所有者が裁判所に提訴したとします。裁判所が判決で、「国が何と言おうと、個人の財産権は認められるから、土地の権利はなくならない。」なんて判断したら、「当然の判決だ! 国の不当な弾圧から、裁判所が国民を守った!!」と大喜びしますよ。
ある意味徴用工の問題も似たようなところがあります。「韓国が日本と合意したので、韓国人の日本企業に対する損害賠償の権利については、個人は放棄しなくてはいけない。」というのが、日本の主張です。これはおかしいという人が韓国に居ても、それほど不思議ではないでしょう。
徴用工問題での日本のリスク
私は、韓国の主張は間違っていると思っています。ただ、韓国の主張が100%ナンセンスだといった論調には、違和感を覚えるのです。
弁護士の場合、一般論としては非常に強気のことを言っておきながら、いざ自分が代理人として裁判するとなると、急にリスクが見えてきて、弱気になる人が結構います。最初から自分の側のリスクもしっかり考える橋下弁護士の主張は、弁護士として決しておかしなものではないと思いますね。