2018.6.13
ただ、予測できるのは良い事ですが日本の場合は…残念ながら悲惨な数字を示しています。厚生労働省の推計によれば2015年に1億2709万人だった人口は減少の一途をたどり、2053年には1億人を割り込み、2065年には9000万人を下回ってしまうのだそうです。この頃になると毎年90万もの人口が減少する計算になり、これは今の香川県や和歌山県といった自治体が1年ごとに消失するほどの数字なのだとか。
そんな状況になると私たちの生活は具体的にどうなるのか?そして、少しでも改善するために今出来ることはあるのか?経済アナリスト中原圭介さんの著書『中原さん、経済オンチの私に日本の未来を教えてください』に様々なアイデアが紹介されていました。20年後、30年後のリアルな日本の実像に迫っていきたいと思います。
人口減少社会で「GDP」の意味が無くなる!?
2017年現在、日本の人口は毎年30万人ほど減少していますが、このまま行くと2055年には毎年90.1万人が減少すると推計されています。さらに高齢化までが進むとどうなるのかと言えば、サービスや商品を生み出す世代の人々が激減。これに伴い国民の生産量を表すGDPが現状維持すら難しくなるとのこと。
しかし、だからと言って「日本の国力・生産力は絶望的」ととらえるのも時期尚早。なぜなら、世界とは物価も異なるなど単純比較できない時代になってきているから。「GDPは高い方が良い」と決めつけていると社会の本質が見えなくなる時代なのです。
そんな時代においてGDPよりも注意すべきものは、年金や介護・医療給付費などの社会保障費がどんどん増加して、お年寄りを支えるための若者の負担が非常に厳しくなっているという現実。政治家も口では「少子・高齢化は問題だ!」と言いますが、20年後に成果が表れる政策よりもすぐに効果が表れて選挙で得票につながる政策を打ち出しがちです。
そろそろ本気でこの状況を変える意識を持ち出生率を上げる努力をしなければ、将来自分たちが生活水準を大きく落として不幸な道を歩まなければいけなくなる可能性が高いのです。
イノベーションが雇用を破壊!?医師や弁護士が負け組に!?
あの東芝でさえ経営危機に陥ったように、筆者曰く、近い将来大企業に入れば安泰という時代は幻想になる可能性が高いそうです。そしてその理由の一つが、なんと昨今のイノベーション。イノベーションと言えば生産性を高めるための技術革新。良い事ばかりな気がしますが…実は最近のイノベーションはAIや電気自動車、スマートフォンなど産業を根底から変えてしまうほどのインパクトがあるため、既存産業を駆逐して雇用を破壊するほどなのです。
特にAIが普及することにより「なくなる仕事」も多く、その中には医師や弁護士のような仕事も。現代では勝ち組の仕事が近い将来負け組になるかもしれないなんて、これから就職や転職を考えている人にとっては大問題になりそうです。
地方自治体の3分の1は消えてなくなる!?カギを握るのは○○!
2014年、増田寛也元総務相ら有識者で作る団体が少子化に関するデータを調べ、全国の市町村の約半数にあたる896の市町村が「消滅可能性都市」であるという衝撃的な発表をしました。これに中原氏も同調し、今後20年ほどで地方自治体の3分の1が消えて無くなってもおかしくないと見ています。
そして、そんな時代において将来のカギを握るのはズバリ知事や市町村長など「首長」と呼ばれる人。中でもなるべく人口を減らさず、近隣や大都市から移住する人を増やさなければならない「住民獲得競争」に勝ち抜くアイデアを持つ人が重要だといいます。
例えば、北海道帯広市の北に位置する上士幌町(かみしほろちょう)。ここは人口減少、少子高齢化に悩む典型的な過疎の町でしたが、竹中貢町長のリーダーシップによりふるさと納税に注力。魅力的な返礼品をそろえるだけでなく役場の組織も変えるなどして寄付金は5万円から21.2億円にまで急上昇!さらにこの税収のうち町が自由に使える部分の全額を「子育て支援」に投じると発表しました。その結果、地方や東京からも移住者が集まり、人気を得た返礼品を作るための雇用も創出。過疎化が進む地域でありながら町の人口を66人増やす、快挙と言える成果を出しています。
自分が暮らす街が消えるかもしれない。それを食い止めるには、しっかりと未来を見据えた政策を打ち出し実行できそうな首長を選び、選挙で一票を投じることも大切なのではないでしょうか?
私たちが今のうちに出来ること!
世界に類を見ない少子高齢化時代に突入する日本。その未来は厳しいことが想像できますが、中原氏は今のうちにできる対策としていくつかのアイデアや事例を紹介しています。中でも「東京人口一極集中」を解消して出生率を上げる方法や、今伸びてきている観光の中でも、地方に眠る観光資源やAIがマネできない「おもてなし」に注目するなど目からウロコの対策が示されていました。
「少子高齢化問題」は解決不可能な問題ではないという最後の章に救われましたが、このままでは非常に厳しい未来が待っていることも分かりました。この問題に興味が沸いたので、少子化について具体的な方策を打ち出している政治家や企業について調べてみようと思います。