2018.11.15
みなさんは、この2つの作品からどんな「音」を感じますか?
美術作品と音は、相性悪?
「美術作品鑑賞」「音」というと、まず館内の“静寂”を思い浮かべる人が多いかもしれません。
来場者の多い展覧会ではざわめきもありますが、日本の美術館は基本的に音のない空間。私語はNO、という環境での作品鑑賞になります。
しかし学芸員さんのお話を伺うと、本当は友人や親子で連れ立って感想を言いあいながら、もっと自由に見てもらいたいのですが・・という本音も。最近では、親子連れDAYなど“自由な会話OK”の日を設ける館も出てきていますが、やはり通常は不特定多数の来場を考え、「静かに見たい」人に配慮、となるようです。
しかし学芸員さんのお話を伺うと、本当は友人や親子で連れ立って感想を言いあいながら、もっと自由に見てもらいたいのですが・・という本音も。最近では、親子連れDAYなど“自由な会話OK”の日を設ける館も出てきていますが、やはり通常は不特定多数の来場を考え、「静かに見たい」人に配慮、となるようです。
そんな現状での私の仕事、美術展用映像制作。
ナレーションやBGM入りのものもあります。もちろん作品の鑑賞に配慮し、映像機器を置く場所や音の大きさを考え、そもそも映像自体も最低限の音を控えめに、となるのですが・・・
ナレーションやBGM入りのものもあります。もちろん作品の鑑賞に配慮し、映像機器を置く場所や音の大きさを考え、そもそも映像自体も最低限の音を控えめに、となるのですが・・・
実は、制作で一番わくわくするのが、「音」を決める工程。画面に、音楽や効果音などを付ける作業なのです。
美術展用ですから、ここでいう「画面」は、多くの場合その美術展で紹介される作品の画像。
ざっくりとつなげた各画面に、こんな感じがいいかな、という候補曲を当てていきます。
ざっくりとつなげた各画面に、こんな感じがいいかな、という候補曲を当てていきます。
これはなんだか重すぎる、これは曲が主張しすぎるな、等々を繰り返し、「これだ!」に出会う・・・その時。
それまで単なる映像の素材として、ディスプレイの中でしんと固まっていた作品の色や形が、突然鮮やかに、動き出すような感覚に陥るのです。
それまで単なる映像の素材として、ディスプレイの中でしんと固まっていた作品の色や形が、突然鮮やかに、動き出すような感覚に陥るのです。
ひとり研修で、自由に、無限に
単純に言えば、「見る」に「聞く」を足した、というだけなのですが・・・この1+1がもたらす感覚の広がりは無限大。感覚がどう働くか自分でも予想できない、毎回最も快感!な不思議な瞬間です。
この快感体験、「ひとり研修」で試してみませんか?
作品を選んだら、まず頭の中で、その作品からどんな音が聞こえてくるか想像してみてください。「雨の音」や「静かなクラシック音楽」「激しいロック」のような、大きな枠でも充分。好きなミュージシャンの楽曲でももちろんOK。次に、お手持ちの音源を用意。お持ちでなければ、You tube等で思い浮かんだワードを検索して、なんとなく該当しそうな音源を見つけます。
作品を選んだら、まず頭の中で、その作品からどんな音が聞こえてくるか想像してみてください。「雨の音」や「静かなクラシック音楽」「激しいロック」のような、大きな枠でも充分。好きなミュージシャンの楽曲でももちろんOK。次に、お手持ちの音源を用意。お持ちでなければ、You tube等で思い浮かんだワードを検索して、なんとなく該当しそうな音源を見つけます。
では、音を流しながらもう一度作品を見てみましょう。
・・・「見る」だけ、「聞く」だけ、の時には眠っていた何かが目覚めてくるのを感じませんか?
慣れてきたら、作品を変えたり、音を変えたり。楽曲のサビで、スパッと作品を切り替えるなど、曲に作品を乗せてみたり。最初に思い浮かんだものとは違うジャンルの曲をあてたら、全く違う作品に見えて来た、なんて事もありますよ。
これぞ、美術館ではできない「ひとり研修」の醍醐味。
(注:美術作品画像には、画家や作品所有者、撮影者の権利が有効なものもありますので、ご注意を。個人の範囲でお楽しみください!)
これぞ、美術館ではできない「ひとり研修」の醍醐味。
(注:美術作品画像には、画家や作品所有者、撮影者の権利が有効なものもありますので、ご注意を。個人の範囲でお楽しみください!)
今月の作品は・・・
これは、アンリ・マティスの《イカロス》と《ナイフを投げる人》(ポーラ美術館所蔵 画像提供)。マティスが晩年、切り絵の技法で取り組んだ実験作で、1947年に刊行された挿絵本、その名も『ジャズ』からの2作品です。
マティスの作品は、この『ジャズ』のみならず、いずれも非常にリズミカル。実際、音楽はマティスの創作活動、また人生に欠かせないものだったようです。
彼は『ジャズ』のテキストに、こう書いています。
マティスの作品は、この『ジャズ』のみならず、いずれも非常にリズミカル。実際、音楽はマティスの創作活動、また人生に欠かせないものだったようです。
彼は『ジャズ』のテキストに、こう書いています。
“ジャズ―生き生きとして激しい色調のこれらのイメージは、サーカス、民話、そして旅の記憶が結晶化したものから派生している。私はこのページを、私の色彩とリズムの即興によって同時におこる効果を和らげるために書いている。それぞれのページは、音が鳴り響く場を形成し、それらの個性にあわせて支え、包み込み、守っている”
(ポーラ美術館『紙片の宇宙』展図録 『ジャズ』解説より)
(ポーラ美術館『紙片の宇宙』展図録 『ジャズ』解説より)
題名から、必ずしもジャズ音楽を考える必要はありません。見る、聞く、そしてまた見る事をぐるぐるつなげて、自由に楽しんでみてください!
最後に、以前『ジャズ』をテーマに制作した映像をご紹介します。1+1の例として、お楽しみください。
“Henri Matisse – JAZZ: Artists Books by 20th Century Masters”
(ポーラ美術館『紙片の宇宙』展で上映)
“Henri Matisse – JAZZ: Artists Books by 20th Century Masters”
(ポーラ美術館『紙片の宇宙』展で上映)