2018年8月22日 更新

日米通商交渉で避けるべきは円高容認

FFRでは関税の話が中心になると思いますが、実はそれと同等に避けるべきことは円高容認です。円高の影響を軽く見る向きもありますが本当にそうでしょうか。

gettyimages (19494)

2018.8.16

円高による本当の影響

gettyimages (19497)

このFFRの通商交渉に為替交渉が行われる可能性もはらんでいます。当然、米国としては「円安で利益を溜め込んでいる日本企業」はけしからんとして円高を要求して来ることが予想されます。
2019年度の業績予想の前提となる為替レートを開示した188社のうち、2018年4月──2019年3月の想定為替レートが105円とした企業が53%と一番多く、もし、このFFRの交渉において、安易に円安政策の政策変更を迫られた場合、その結果、もし円高が進行し100円方向に進むようであれば、さらに上場企業の利益が減ることが予想されます。
さて、このように円高に対して警戒をお伝えしても、「日本の貿易依存度は実は低い」「だから円高による企業業績への影響は微々たるものだ」として楽観する向きもありますが、それではあまりにも無防備です。
このような楽観派は、日本の対GDPにしめる輸出依存度は17%と米国12%の比べると高いものの、一方で、ユーロ圏28%、中国19%と比較すると輸出依存度は低く、いまや昔ほど円高は怖くないという理由を掲げています。
しかし、本当でしょうか。この依存度だけに着目して判断するのは大変危険だと言えます。近年、日本の上場企業の海外売上は増加が継続しており、2018年時点では、総売上の50%以上を海外売上で占めています。その割合は、米国および中国を大幅に上回るとされ、海外の景気後退の影響を最も受けやすい先進国と言われています。つまり、FFRによる影響だけではなく、ひとたび、先にスタートした米中貿易戦争による世界的な景気後退がおころうものならば、日本経済に大きなマイナス影響があることは避けて通れなさそうです。
gettyimages (19513)

さて、投資では、大きな転換点に打ちのめされないようにすることが一番大切です。その転換点を探るには、歴史にヒントを求めることが一番大切になります。それは、「歴史は必ず繰り返すから」です。そこで、今回参考にする時代は1930年代。今置かれている状況に類似しており最も適していると思われます。
1930年はテールリスクが起こりました。各国が国内産業保護に走り、だれもが関税を引き上げ、「ブロック経済」が世界的に広がった経済史に汚点を残した時期です。もし今回、この1930年と同じように「新ブロック経済」が世界に広まるとすれば、世界経済は甚大な影響を受けます。
OECDの調査によれば、主要各国の関税が一律10%引き上げられた場合、日本のGDP成長率は1.7%押し下げられるとされています。また、関税が10%引き上げられ、さらにドル円が100円まで円高になった場合、日本の上場企業のEPS(一株利益)は約20%弱押し下げられるとされています。このようなことから、米中貿易戦争の推移とFFRの交渉結果を投資家として真剣に捉えて準備をしておく必要があります。
ただし、現段階では政策当局者がこのようなシナリオを回避するインセンティブも非常に強いため、このような最悪のシナリオはあくまでテールリスクだといえます。
18 件

関連する記事 こんな記事も人気です♪

日本人ノーベル賞受賞者が出た「電池」次世代電池の研究開発最前線は?

日本人ノーベル賞受賞者が出た「電池」次世代電池の研究開発最前線は?

11月11日は「電池の日」。10月9日、「リチウムイオン電池」開発の功績で吉野彰博士がノーベル化学賞を受賞しました。「全樹脂電池」「リチウム空気電池」「全固体電池」など次世代電池の開発競争もますます盛んで、最前線では日本人科学者も活躍しています。
経済 |
プチプラの次は?フォーエバー21の破綻に見るファッション業界の行方

プチプラの次は?フォーエバー21の破綻に見るファッション業界の行方

断捨離した後の服の行方を考えたことがありますか。経済的な成長の裏にはほとんど犠牲が伴い、堅調な成長を見せるファストファッション市場もその一例です。しかし今、利益追求を優先しすぎたファストファッション業者のモラルと、消費者の良識が問われる時期がきたようです。
経済 |
欧州経済の「日本化」が進んでいる?今後最も避けたい3つの恐怖

欧州経済の「日本化」が進んでいる?今後最も避けたい3つの恐怖

9月12日に欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が発表した総合的な金融緩和策では、欧州の低成長と低インフレの長期化を阻止するのに不十分であると市場の評価は冷ややかです。いかなる金融政策を講じても経済回復に至らない「低成長」「低インフレ」「デフレスパイラル」という日本化が本当に欧州圏で進んでいるのでしょうか。
今年の秋は10月からスタートする米国企業の業績発表に注目

今年の秋は10月からスタートする米国企業の業績発表に注目

最近では、トランプ大統領の中央銀行への圧力や世界的に広がる貿易戦争などのトピックスに対して反応が鈍くなっているように感じます。一方で、景気の弱さと企業業績の不透明感が徐々に台頭していることについてはニュースとしてあまり取り上げられてないので知られていません。
ウェルネスブームが世界中で止まらない!4兆ドルの経済効果と背景

ウェルネスブームが世界中で止まらない!4兆ドルの経済効果と背景

マインドフルネスをはじめとした、ウェルネス(健康を維持、増進させようとする生活活動)に興味を持つ人が増えつつあります。ウェルネスツーリズム、アプリなど新たな商品が出回り、今やウェルネス産業の市場規模は4.2兆ドル以上。このブームの実態や背景、昨今のトレンドについて解説します。
経済 |

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

渋谷 豊 渋谷 豊