2019.8.2(2020.1.17更新)
富裕層向け会員制医療サービスはオーダーメイド?
富裕層が受ける会員制医療サービスを見る前に、一般的な健康診断を思い浮かべてみてください。会社員や公務員であれば、年1回の健康診断を受けていますね。健診内容は、胸部X線、心電図、血圧、血糖値など必要最低限のものです。この検査で癌などの重篤な疾患が発見される方もいますが、初期段階では異状が出ず、見落とされるケースもままあるのが現実です。
この点、自費負担の人間ドックならば、基本的な健診に加え、食道・胃部・十二指腸のX線、腹部エコーなど、細部にわたり異状がないかを確認できます。さらには、脳ドック、肺ドック、婦人科系を診るレディースドックなどが代表的でしょう。他方、富裕層向けの会員制医療サービスで提供される健康診断は、人間ドックが基本となっています。入会金・年会費を負担し、各会員に担当医(プライベートドクター)が付くことも特徴です。
会員一人一人のニーズに合わせた、オーダーメイド感覚の医療サービスの提供こそが、会員制医療サービスの真骨頂です。その上、いつでも自分の担当医に医療・健康に関する個人的な相談ができたり、施設自体も会員のプライバシーが守られる設計・システムになっていたりなど、富裕層のニーズを汲み取った医療に関する総合的なサービスが提供されています。
代表的な富裕層向け会員制医療サービスの例は?
現在、富裕層向けの会員制医療サービスは増加中ですが、提供している母体は様々です。元より富裕層との接点が多い大手セキュリティ企業や金融機関の他、リゾート開発企業や総合病院を有する医療法人が提供している会員制医療サービスもあります。以下に主なものを紹介してみましょう。
・セコム健康クラブ KENKO
大手セキュリティ企業セコムが医療法人と提携して提供する、富裕層向け会員制医療サービス。千代田区二番町にある四谷メディカルキューブ内では、担当医や専門医による外来診療、人間ドック、手術治療、入院に対応しており、フレンチの三國清三シェフがプロデュースする病院食も提供されます。担当医による健康管理全般のサポートを受けることが可能です。個人会員の場合、入会金216万円(税込)、年会費54万円(税込)となります。
・SBIメディック
SBIグループが運営する、千代田区丸の内にある富裕層向け会員制医療サービスです。予防・早期発見・治療のみならず、アンチエイジングや歯科にも注力していることが特徴です。担当医による健康管理アドバイスを受けることができ、東京国際クリニック医科・歯科と提携しています。フォーシーズンズホテル丸の内東京、シャングリ・ラ・ホテル東京、ホテルメトロポリタン丸の内などとも提携し、必要に応じて宿泊も可能です。個人会員の場合、入会金162万円(税込)、年会費54万円(税込)です。
・グランドハイメディック倶楽部
山中湖畔の総合医療メディカルサポート倶楽部として立ち上がり、東大病院や京大病院とも連携する富裕層向け会員制医療サービス。高品質の健診に定評があり、東京・六本木、名古屋・中区、大阪・心斎橋に医療相談室が常設されています。先進癌治療施設の紹介や、看護師資格を有する医療コンシェルジュのサポートも魅力です。個人会員の場合、入会金324万円(税込)、月会費4万9,680円(税込)と高額です。
・榊原ウェルネス倶楽部
千代田区丸の内にある榊原サピアタワークリニックが運営する、富裕層向け医療サービスです。人間ドックの検査結果をベースに担当医がカウンセリングを実施し、リスクに応じて検査受診の年間計画、オプション検査のアドバイスなどを行っています。随時の医療・健康に関する相談、必要に応じた専門医の紹介なども可能です。 個人会員の場合、入会金・年会費は共に10万5,000円(税込)であり、比較的「お手頃」なことも魅力です。
・山王メディカルクラブ
山王病院・山王メディカルセンターが運営する富裕層向け会員制医療サービス。赤坂御用地と乃木神社との間にあり、都心部でも閑静な立地です。キメ細かな人間ドックを受けられ、結果次第で専門医による対応が行われます。義母が入院してお世話になりましたが、家族もステイ可能な個室中心でレストランもあり、内部は高級ホテルのような感覚です。プライバシー保護など対応は行き届き、地下駐車場から特別診察室まで直行可能な専用エレベータも存在します。国内外VIPの利用が多い印象で、入会金・年会費は共に非公開です。
中国人富裕層も日本の会員制医療サービスに熱い視線?
さて、以上のよう富裕層を主な顧客とする会員制医療サービスですが、今や日本人富裕層のみが注目・利用している訳ではないのですね。現在、「医療ツーリズム(メディカルツーリズム)」の先進国を目指し、政府は医療ビザの創設や、中国人向けビザの年収基準緩和など、積極的に海外富裕層のインバウンド需要取り込みを図っています。
大手旅行代理店も国内有名病院と提携し、「医療ツーリズム」のサービス提供を開始するなど、海外富裕層の医療サービス需要掘り起こしに余念がありません。とりわけ中国人富裕層の視点から眺めれば、日本は先進諸国の中で最も安価に高度医療を受けることができ、かつ地理的にも近く、移動の負担が少ないという利点があります。
実際に、中国人富裕層からの照会が増えている会員制医療サービスも珍しくないようですね。富裕層向け会員制医療サービスは、今後の日本で一層伸びる可能性があるビジネス領域だと言っても良いでしょう。
資産運用に長けた富裕層は顧客であるだけでなく、投資家としても注目しています。医療サービス自体が、投資熱い分野である上、さらに「富裕層向け会員制」商品ともなれば、「投資したい業界ランキング」も高い分野といえるでしょう。
※本記事で紹介されている会員制の医療サービスの情報は、2019年7月25日時点のものです。