「チャンスの神様には前髪しかない」。そんなことわざを体現するかのように、チャンスを掴み、着実にモノにしてきた。料理人としての並外れた能力はもちろんのこと、経営者としての才覚を持ち合わせていた証だろう。もともとシェフである森本はどのようにして経営のセンスを身につけてきたのだろうか。
「きちんとしたフォームを習って泳ぐと、波が後ろからついてくるように、しっかりとした料理のスキルさえ身につけておけば、お金は後からついてきます。それにアメリカでは、レストランオーナーのステイタスは、日本よりはるかに高い。成功率は日本より低いけれど、当たればひと桁大きい。それがアメリカという国です」。
「お金は大好き」と、きっぱり言い切る。そもそも実家が貧しく、大学進学を断念。18歳で働き始めてからは、いろんな仕事を掛け持ちしながら必死でお金を貯めた。今では「アメリカで一番税金を払う層になった」が、お金に対する考え方は、一貫している。「お金は、“使うもの”。自分の身銭を払う経験を積むことで、“お客さんからお金をもらうにはどうすればいいのか”を身を持って知ることができる。お客さんから、気持ちよくお金を使ってもらうにはどうすればいいか。それを知るためには、まず自分がお金を使って経験してみる。使い方が分からないと、もらい方だって分からないよね」。
「きちんとしたフォームを習って泳ぐと、波が後ろからついてくるように、しっかりとした料理のスキルさえ身につけておけば、お金は後からついてきます。それにアメリカでは、レストランオーナーのステイタスは、日本よりはるかに高い。成功率は日本より低いけれど、当たればひと桁大きい。それがアメリカという国です」。
「お金は大好き」と、きっぱり言い切る。そもそも実家が貧しく、大学進学を断念。18歳で働き始めてからは、いろんな仕事を掛け持ちしながら必死でお金を貯めた。今では「アメリカで一番税金を払う層になった」が、お金に対する考え方は、一貫している。「お金は、“使うもの”。自分の身銭を払う経験を積むことで、“お客さんからお金をもらうにはどうすればいいのか”を身を持って知ることができる。お客さんから、気持ちよくお金を使ってもらうにはどうすればいいか。それを知るためには、まず自分がお金を使って経験してみる。使い方が分からないと、もらい方だって分からないよね」。
■「NO」を言う前に「YES」の準備をする
レストランに足を運んでくれたお客さんの満足度を100%にする。それが森本のモットーだ。スタッフにはいつもこう伝えている。「お客さんからの要望に、NOを言わないこと。『ケチャップがほしい』と言われたら、『和食レストランなのでケチャップは置いてありません』と答えるのではなく、どうしたら満足してもらえるかをまず考える。NOの前にYESの準備をすることが重要なんです」。
突破することに集中すれば、おのずとアイデアも生まれてくる。そうして提供された料理は、訪れた人の心に、より強い感動とインパクトを残すことは間違いない。
料理人として常に心に留めているのは、「料理を通じて、どうしたらお客さんを幸せにできるのか」。そのためには、自身の健康管理も大事だと感じ、ダイエットを始めた。「きっかけは、この秋ディズニー・ワールドに『morimoto Asia』を作ったこと。スタッフだけで300人。ほかにも世界で1,500人の従業員が、『MORIMOTO』というブランドを背に働いています。その後ろにいる彼らの家族も含めたら、3,000人を超えるかもしれない。それを僕が背負っている。そう思ったら、絶対に元気でいなくちゃいけないなと感じたんです」。
同時に、従業員を幸せにすることも大事だと、森本は言葉に力を込める。ひいてはそれが、お客さんの満足度にも繋がっていく、と。「従業員が幸せじゃなかったら、お客さんに幸せを運ぶこともできないし、幸せを気づかせてあげることもできない。彼らが世界に巣立っていく時には、バックアップをしてあげたいね」。
突破することに集中すれば、おのずとアイデアも生まれてくる。そうして提供された料理は、訪れた人の心に、より強い感動とインパクトを残すことは間違いない。
料理人として常に心に留めているのは、「料理を通じて、どうしたらお客さんを幸せにできるのか」。そのためには、自身の健康管理も大事だと感じ、ダイエットを始めた。「きっかけは、この秋ディズニー・ワールドに『morimoto Asia』を作ったこと。スタッフだけで300人。ほかにも世界で1,500人の従業員が、『MORIMOTO』というブランドを背に働いています。その後ろにいる彼らの家族も含めたら、3,000人を超えるかもしれない。それを僕が背負っている。そう思ったら、絶対に元気でいなくちゃいけないなと感じたんです」。
同時に、従業員を幸せにすることも大事だと、森本は言葉に力を込める。ひいてはそれが、お客さんの満足度にも繋がっていく、と。「従業員が幸せじゃなかったら、お客さんに幸せを運ぶこともできないし、幸せを気づかせてあげることもできない。彼らが世界に巣立っていく時には、バックアップをしてあげたいね」。
■料理は、まず「壊すこと」から
世界を舞台に、活躍を目指す若き料理人たちには、こんなエールを贈る。「料理は、まず“壊すこと”。集中してつきつめることも大事だけれど、いろんなジャンルの料理に理解を示し、トライする。これまでの考え方を1回捨てて、“これでなくてもいいんじゃないか?”と疑ってみるんです。僕もそこから始まった。試行錯誤するうちに、アイデアも生まれてきて、自分の色が出せるようになっていくはずですから」。
森本もまた、破壊と創造が生み出す“その先”の景色を模索し続ける一人だ。すでに大きな成功を手にしながらも、挑戦者でい続ける。そんな意欲と勇気が、森本の武器であり、魅力でもある。そんな森本がいま、身を置こうとしている新たなチャレンジ―—それが、“ラーメン”だ。
その背景には、70年代後半から80年前半にかけてアメリカで寿司ブームが起きたときに感じた“もどかしさ”がある。「雨後の筍のように寿司屋が出てきたけれど、間違った伝わり方をしていると感じることも少なくなかった。ある田舎の寿司屋で、米がべちゃべちゃだったので理由を尋ねたところ、『今日は味噌を入れるの忘れたから』という答えが返ってきたり。そもそも味噌なんて入れるわけないのにね。それだけ料理の土台、基礎が伝わっていないと感じたんです」。
そしていま、まさに同じ状況が訪れていると森本は言う。「今、アメリカは日本のラーメンがブームです。そのなかで、『MORIMOTO』というブランドを持つ僕らが、基礎を踏まえたラーメンを提供することで、田舎のほうまで正しい日本の食文化を伝えていけるのではないかと思っているんです。もちろんアレンジを加えて変えていくことは自由だけれど、しっかりとした土台がないとダメ。フュージョンをやってもいいのは、基礎がきちんとできている人。そうでないと、コンフュージョンになってしまうから」。
その目は、常に未来を見据えている。ほとばしる情熱は、まだまだ冷めそうもない。森本は、さらにギアを上げて、走り続ける。
森本もまた、破壊と創造が生み出す“その先”の景色を模索し続ける一人だ。すでに大きな成功を手にしながらも、挑戦者でい続ける。そんな意欲と勇気が、森本の武器であり、魅力でもある。そんな森本がいま、身を置こうとしている新たなチャレンジ―—それが、“ラーメン”だ。
その背景には、70年代後半から80年前半にかけてアメリカで寿司ブームが起きたときに感じた“もどかしさ”がある。「雨後の筍のように寿司屋が出てきたけれど、間違った伝わり方をしていると感じることも少なくなかった。ある田舎の寿司屋で、米がべちゃべちゃだったので理由を尋ねたところ、『今日は味噌を入れるの忘れたから』という答えが返ってきたり。そもそも味噌なんて入れるわけないのにね。それだけ料理の土台、基礎が伝わっていないと感じたんです」。
そしていま、まさに同じ状況が訪れていると森本は言う。「今、アメリカは日本のラーメンがブームです。そのなかで、『MORIMOTO』というブランドを持つ僕らが、基礎を踏まえたラーメンを提供することで、田舎のほうまで正しい日本の食文化を伝えていけるのではないかと思っているんです。もちろんアレンジを加えて変えていくことは自由だけれど、しっかりとした土台がないとダメ。フュージョンをやってもいいのは、基礎がきちんとできている人。そうでないと、コンフュージョンになってしまうから」。
その目は、常に未来を見据えている。ほとばしる情熱は、まだまだ冷めそうもない。森本は、さらにギアを上げて、走り続ける。
「お金とは、使うもの。(森本正治)」