【書評】一人の夢が夢で終わらず現実になる『渋谷ではたらく社長の告白』

カルチャー
本書の内容は、株式会社サイバーエージェントの創業ストーリーだ。著者の生い立ちから、どのようにして起業家を目指すようになったのか。また、創業時の苦悩やインターネットバブルの崩壊、 買収の危機など過去に起こった数々の出来事についてまとめられている。

「21世紀を代表する会社をつくる」これが著者の20歳のときの夢である。ミュージシャンを夢見たものの、高校3年生で諦め、その後起業家を目指し福井県から上京した。しかし、バイトや麻雀に明け暮れる日々、単位が足りなく留年し、自分の夢さえも忘れてしまっていた。

そんな時、将来を迷いながらも営業の仕事を始め、著者はそこで仕事に打ち込み、仕事の面白さを知ったという。そして、自分の夢を再び目指していった。

また、当時の上司より経営者になりたかったら「感性を磨け」といわれ、本を読み、映画や観劇をするようにアドバイスをもらったりしていたそうだ。

しかし、会社を始めると報告した際には、「失敗する」「うまく行くはずがない」と言われたようだが、当時インターネット業界は営業をしている人が少なく、著者が考えた営業代行の仕事は、初日より上手く動き始めた。しかし、インターネット専門とは言うものの、技術的に詳しくはないため、苦労も多かったそうだ。

また、著者は当時株の売買も行ったこともなく、株式市場について何もわかっていなかったというが、創業2年、史上最年少26歳での上場と当時はマスコミがもてはやし、話題になったという。

しかし、注目を集めたのもつかの間、上場後ネットバブルは崩壊し、株価は軒並み下がり続けた。すると、マスコミは手のひらを返したようにバッシングしてきたのだ。インターネットの会社が、インターネットを利用した誹謗中傷を受けることとなり、上場後も結果として苦悩は絶えなかった。

このような状況により、会社の評判は、あっという間に悪くなり、「批判」「嫉妬」「恨み」当時、経営者としてのプライドはボロボロとなり追い込まれ、プレッシャーは極限まできていたという。

これらのストーリーは現在のサイバーエージェントや著者からはなかなか想像がつきにくく、本書を読むまではまったく知らなかった。業界を問わずビジネスの話しや創業ストーリーは、他人事ではあるもののの、妙に自分のことのようにハラハラ、ドキドキしてしまうが、とても関心もある。

創業時には、どの企業も様々な苦悩があり、企業ごとのそれぞれの創業ストーリーがある。またそれは、創業者の「夢」からスタートしている。夢のままで終わるのか、それが実現できるのか。著者はその後も「21世紀を代表する会社をつくる」ことを目標にし、日々奮闘しているという。また、本書を出版することにより、小学生の頃からの別の夢「作家になりたい」もかなったそうだ。