ビジネスマンに必要な教養とは?論語から学ぶ教養の高め方

カルチャー
昨今、ビジネスマンにとって「教養」ほどセンシティブに突き刺さる言葉はないのではないでしょうか。孔子の教えをまとめた論語によると、人格を磨くためには教養を高めることが必要だと説いています。この記事では、孔子が言う「教養」とはどのようなものなのか、またその高め方を紹介します。
2018.10.16(2019.12.19更新)

論語で言う教養とは?なぜ必要なのか

“詩に興こり、礼に立ち、楽になる。”(泰伯第八)
(意味)教養は、詩によって奮い立ち、礼によって安定し、音楽によって完成する
論語で言う教養とは、東西を問わず「人間とは何か」という人の本質を知るための学問であり、人格を高めるために必要な素養でもあります。
昔から、詩や音楽はどの国でも存在し、教養の一つとして位置づけられていました。
孔子は教養とは、「詩」「音楽」さらに「礼」を挙げています。
詩は現代で言う文学と置き換えてもいいでしょう。詩や文学は、物事や人間の内面を表現したものでもあります。孔子によれば、詩は心を奮い立たせるものであり、物事を観察する訓練にもなると述べています。

現代に言い換えると、本や新聞を読むことで、自分の人生だけでは経験しえないような、様々な人物の経験や感情を追体験し、世の中のすばらしいものを知る、また経済を知ることで、さらに学ぶ意欲が生まれる、という意味も含まれているでしょう。

そして音楽は詩と同様に心を奮い立たせ、感性を豊かにしてくれます。

礼は立ち振る舞いを意味します。孔子はまず礼を学ばなければ人と関わることはできないと述べるほど礼を学問の基本としています。

勘違いしてはならないのが、礼は人との関係性を安定させるものであるが、表面的なものであってはならない。礼とは心がけの美しさであり、相手への敬意でもあるのです。

これはビジネスシーンにも当てはまります。世界の成功者の多くが、本を読む時間を多く取り、芸術に触れ、教養を身につけています。
また、リーダーは多様な価値観をもつ人々を束ね、同じゴールに向かって進まなければなりません。ゴールは同じだとしても、そこまでの到達方法は人によって様々です。

自分自身の価値観だけで人を判断するだけでは、人を束ねることは難しくなるでしょう。多様な考えを理解するためにも、教養を身につけ、人格を高める必要があるのです。

ビジネスにおける教養ある人の立ち振る舞いとは

“君子に九思(きゅうし)あり。視(み)るには明を思い、聴くには聡を思い、色は温を思い、貌(かたち)は恭を思い、言は忠を思い、事は敬を思い、疑いには問うを思い、怒りには難を思い、得るを見ては義を思う。”(季氏第十六)
(意味)人格者には九つの心がけがある。物事をはっきりと見ること、人の話を詳細に聴くこと、温和な表情を保つこと、恭しい態度を保つこと、誠実に話すこと、慎重に物事に当たること、不明瞭なことは確認すること、後先考えずに怒らないこと、利益を得る前に道理にかなっているか考えることだ。
孔子は、よく「君子」という言葉を引き合いに出しています。「君子」とは、文字通り「王」を意味するものではありますが、論語においては、もっと広義で使われ、立派な人、人格者という意味があります。
人格者は九つの態度、心がけをするように努めなければならないと孔子は言っています。これはリーダーにおいても同じですが、リーダーでなくとも心がけたい態度ですね。

ビジネスマンが教養を高めるための良い時間・悪い時間の使い方

“益者三楽、損者三楽。礼楽を節せんことを楽しみ、人の善を道う(いう)ことを楽しみ、賢友多きを楽しむは、益なり。驕楽(きょうらく)を楽しみ、佚遊(いつゆう)を楽しみ、宴楽を楽しむは、損なり。”(季氏第十六)
(意味)有益な楽しみ方は3種類ある。それは、礼節を保ち、音楽を楽しむこと、人の長所を褒めるのを楽しむこと、優れた友人が多いのを楽しむことの3つだ。有害な楽しみも3つある。自分勝手なことをするのを楽しみ、怠けて遊ぶことを楽しみ、酒盛りを楽しむことの3つだ。
孔子は、教養を高めるための有益な時間の使い方と悪い時間の使い方がそれぞれ3つある、と説いています。

有益な時間の使い方3つ

1つ目は、礼節(礼儀と節度)を保ち、詩や音楽を嗜むことです。これは現代で言う、芸術や文学を嗜むと言い換えられます。これは自分の感性を深め、見聞を広めるといった、人格を磨くために有益な時間でしょう。
2つ目は、人の長所を褒める時間。相手を認め、敬意を示す時間は大切だと伝えています。また、自分自身にはない長所を知り、視野を広げることにもつながります。

3つ目は、同じ目標や、2つ目でお互いを認め合った友人と共に過ごす時間を大切にすること。優れた友人と過ごす時間は有益であることを意味しています。

悪い時間の使い方3つ

反対に、悪い時間の使い方というものもあります。
1つ目は、自分のやるべきことをせず、自分勝手なことを行うこと。
2つ目は、享楽にふけること。3つ目は酒盛りをすること。飲み会が悪いものではありませんが、
目的のない飲み会を毎日のように開催することは、良い時間の使い方とは言えないかもしれません。日ごろの習慣や行いを見直し、有意義な時間を過ごしたいものです。
以上、論語で学ぶ教養の高め方について紹介しました。
「教養」と言っても分野はさまざまですが、
孔子の教えには、教養を学ぶための意識について、現代に通用する考え方が多くあります。
日常生活に取り入れ、ビジネスパーソンに必要な教養を高めてはいかがでしょうか。

ユキヨシ

大学院修士課程修了(歴史学)後、そろばん指導講師、教育系のベンチャー企業を経験し副業ライターに。会社員時代に経営者の経営哲学に関心を持ち、中国古典思想の勉強を始め今に至る。

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