2019年11月4日 更新

キャリアアップか?チェンジか?「チェンジ」して「アップ」した渋沢栄一

「キャリアアップ」「キャリアチェンジ」の違いがわかりますか? 専門性を磨くキャリアアップと比べると、専門性をご破算にして一から出直すキャリアチェンジは覚悟とエネルギーが必要ですが、幕末、明治の激動の時代、両方やってのけたのが渋沢栄一でした。

「尊皇攘夷の志士」渋沢のキャリアチェンジ

現在の埼玉県深谷市出身の渋沢栄一は幕末、その頃の長州や薩摩や土佐には掃いて捨てるほどいた「尊皇攘夷の志士」の一人でした。
1863年、高崎城を乗っ取り、武器を奪って横浜の町を焼き討ちし、長州藩と結んで幕府を倒す計画を立てながら実行寸前に断念して京都へ逃げたといいますから、今で言えばテロリストです。明治維新まで生き残れば桂小五郎(木戸孝允)や西郷隆盛あたりに引き立てられて新政府の高官につけたかもしれませんが、その前に京都で新選組に斬られたり、「禁門の変」で長州軍に加わって討ち死にしていたかもしれません。
そうはならず1864年、渋沢はアッと驚く「キャリアチェンジ」を果たします。なんと知人の推薦で幕府の将軍後見職、一橋慶喜の家臣になり、慶喜が「徳川最後の将軍」になると幕臣に加わるという道を歩みました。かつて倒そうとした幕府の一員になったわけです。

1867年パリ万博の幕府代表団に加わってフランスに行っていた間に大政奉還、江戸城開城、明治新政府成立。おかげで多くの幕臣が命を落とした戊辰戦争に巻き込まれずにすみました。維新後はソロバン勘定に強い専門性を買われて新政府の大蔵省に勤め経済政策を担当しましたが、職場が幕府から新政府に変わってもこれはキャリアチェンジではなくキャリアアップです。1873年に大蔵省をやめた後は会社を次々に設立しては大きくし、実業家としてキャリアアップしていきました。
24歳の渋沢栄一青年が「幕府打倒を目指すテロリスト(革命家)→革命後の新政府の高官」というキャリアを断念し、旧体制側の将軍後見職、一橋慶喜の家臣という全く正反対な方向にキャリアチェンジした時、相当な覚悟があったはずです。しかも農家出身で、ソロバンはできても武士としては全くゼロからのスタートでした。
それを乗り越え、財政、経済という専門性を磨いて「幕府→明治新政府の経済官僚→実業家」とキャリアアップし、偉人としてその名を後世に残しました。

寺尾淳(Jun Terao)

本名同じ。経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、現在は「ビジネス+IT」(SBクリエイティブ)などネットメディアを中心に経済・経営、株式投資等に関する執筆活動を続けている。
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