〈はなわ〉柔道3兄弟を立派に育てる『はなわ流の子育て術』とは?

インタビュー

「お金とは、家族のためのもの(はなわ)」

再び訪れたピンチを救ってくれたのは佐賀県だった

STAGE編集部:芸人を目指す際、佐賀から飛び出したはなわさん。戻ってからの生活は?

はなわ:家族の仕事も終わったから佐賀に移住して、僕は仕事があれば単身赴任というカタチ。もう家族の仕事はするつもりもなかったんです。でも、逆に佐賀に住んでいるから面白いという事になって、当時始まった『有吉ゼミ』という番組がわざわざ佐賀に来て取材してくれることになりました。

うちの子供たちデカくてご飯をいっぱい食べるので、僕が家族の料理を業務用のフライヤーを使って作っているのを取材に来たんですが、そういうタイミングで長男が柔道で全国3位になって。しかも、東京の強豪校からスカウトが来たのに佐賀の高校に行くと。地方の普通の県立高校の柔道部が、全国でどこまで戦えるか?ってドラマがあるからこそコーナーが育って行ったんです。

計算ではなく、偶然がいろいろ重なりましたが、自分も『佐賀県』の歌で仕事がもらえるようになったし、うちの家族は佐賀県に恩返しをしないといけないと常に言っています。

はなわ流の子育て。自立を促す「自学自習」とは

STAGE編集部:はなわ一家の教育はどんなもの?

はなわ:絶対的に大事なのは「自立」で、親の言う事なんか聞いているやつは駄目だと思っています。僕自身、受験勉強などから逃げていたからすごく後悔してますけど、一方であのとき学校に行かなかったから今があるわけですし。だから息子はずっと柔道をやっていますけど、全然辞めても良いと思ってるんです。あえて「柔道だけの人生ってなんだ?」みたいなことを言ったりもします。だけど長男はすごいと思いますよね。僕とはまた全然違う人生というか、あんなきつい練習に毎日行って、汗だくになっているんですから。

STAGE編集部:好きだからこそ、あえて放任している?

はなわ:そうですね。実際、僕のところに大学推薦の話も来ていますけど、嫁には伝えるけど子供には一切言ってません。そんなのもし言って、僕のせいで曲がったりしても困るから。高校進学のときも、長男から佐賀工業に行くと聞いたときは夫婦で「マジかよ、やばいじゃん。工業行っちゃうじゃん!」と(笑)。普通に他の強豪校からもスカウトが来てたし、うちらの時代は佐賀工業って、ちょっと不良がいっぱいのイメージだったんです。でも、これも結果的には大成功。先生が素晴らしい方でした。礼儀なんかは僕よりも先生の影響が大きいぐらい。

STAGE編集部:佐賀での子育てが正解だった?

はなわ:佐賀には今から200年前、大隈重信や江藤新平といった偉人たち「佐賀七賢人」と呼ばれる方々がこぞって通った「弘道館」という学校があります。わざわざ江戸から佐賀に入学希望が来るぐらい大人気だったんですけど、その学校のモットーが「自学自習」というんです。人に教えてもらうのではなくて、自分で学ぶ、自分で経験して、調べていくことが一番大事だという教えです。

しかもこの学校、生徒は1,000人ぐらいいるのに先生は10人。どうやって教えていたのかというと、先輩が教えるんです。イコール、自分が先輩になった時に教えなきゃいけない。教えてもらいながら教え方を学ぶわけです。今から200年前にもかかわらず、現代に先駆けていると思いますね。佐賀県の人間としてもこれは推進していこうと思っています。

STAGE編集部:はなわ家は母以外の4人が男子。そういった面での難しさは?

はなわ:まず、リアルに食費はヤバいですね(笑)。柔道では190センチ160キロの相手をやっつけなきゃいけないんで体重キープが一番大事なんですけど、米は朝まず1升(10合)、夜8合、お弁当だけで7合とか炊きますから。一時期は月の食費が20万円ぐらいかかっていました。でも、これも佐賀に行ってから農家さんがお米を持って来てくれたりするようになって、相撲部屋みたいにいろいろ送ってもらう事で随分助かっています。

あとは、女性というのはとにかく凄いんだと伝えています。まず子供を産めるのが凄いし、なぜ男性が強いのかというと女性を守るために強いんだぞと。だから暴力はもちろんですけど、絶対に偉そうな態度を取ったりしちゃダメだと教えています。特にうちの嫁は天然ボケでヤバいんで、実はママは卑弥呼の生まれ変わりなんだ。普通の人と違うだろう?と昔から言っているんです。その効果か…みんな嫁のことが大好きですね。

STAGE編集部:では、反抗期は?

はなわ:もちろん、もう思春期で普段は全然会話しないですね。「最近、練習どうなの?」「ああ…」みたいな。でも、僕もそうだったし、それでいいんです。仲は全然良いし、幾らでかくても(115キロ)めちゃめちゃ可愛いですからね。一緒に寝ようとして僕がベッド入ると「向こう行けよ」って、すげえ力で押されますけど。幾つになっても可愛いんですよ。

STAGE編集部:そんな可愛い息子さんが、将来「お笑い芸人になりたい」と言ったら?

はなわ:それだけは絶対ダメ(笑)。いや、でもナイツが売れましたからね。(ボケ担当の塙宣之さんがはなわさんの実弟)。僕自身、あんなに売れると思わなかったですから。親にも、お前は良いけど弟は止められないか?と相談を受けたぐらい。それが今やあの活躍ですから。そういうのを目の当たりにしたから、本当に誰が売れるとか、誰にどんな可能性があるか分からないからこそ、やっぱり否定したくない。

はなわさんにとってお金とは?

はなわ:「お金とは、家族のためのもの」。

STAGE編集部:「お金とは家族のためのもの」。その心は?

はなわ:ちょっと偽善過ぎるかな?大丈夫かな?嫁が見たら「全部よこせ」って言われるかも。でも、本当だからしょうがないです。でも、どうしようかな(笑)。

「お金とは、家族のためのもの(はなわ)」

はなわ

1976年7月生まれ、佐賀県育ち。2003年にリリースした『佐賀県』が大ヒットし、NHK紅白歌合戦に出場。16年から佐賀市PR大使も務める。柔道に奮闘する一家に密着した企画は「有吉ゼミ」(日本テレビ系)の人気コーナーに。また、2017年3月、義理の父に向けた歌『お義父さん』を発表するとSNSを中心に感動と絶賛の声が広がった。

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