観光型MaaSで観光地の交通革命|JTB、トヨタら企業の挑戦

経済

「MaaS」への取り組みが日本でも本格的になってきました。本業に絡ませたユニークなMaaSを開発し新規事業に力を入れる企業が増えているなか、最近JTBもより効率的な観光の実現のため「観光型MaaS」を普及することを発表しました。

2019.4.12

「MaaS」とは?人と環境に優しい新たな交通手段

昨年あたりから「Mobility-as-a-Service」の略、「MaaS(マース)」という言葉を目にするようになりました。
国土交通政策研究所によると、一概に「MaaS」といってもはっきりした定義はないが「2015年のITS世界会議で設立された「MaaS Alliance」では、『MaaSは、いろいろな種類の交通サービスを、需要に応じて利用できる一つの移動サービスに統合することである』とされている」そうです。
例えば、フィンランドでは「MaaS Global」という会社が政府や大学などの協力を得て「Whim」というアプリを開発しました。
Door to Doorで移動できるマイカーの便利さを公共交通、配車サービス、シェアリングシステムなどで実現させるため、移動が必要な時に交通運営会社に関係なく、最適な経路や時刻を組み合わせ手配し支払うという一連のサービスをアプリが提供してくれるのです。
マイカーは便利ではありますが、維持費、渋滞、交通事故、駐車場などの問題もあり、その点MaaSでは必要な時に最適な移動サービスが利用でき、時間的にも経済的にも無駄を省けるという利点があります。
MaaSは、環境への意識の高い北欧から始まったアイデアで、マイカーによる環境へのダメージを軽減するという目的もあります。また、移動にまつわる社会問題の解決にも役立つというポテンシャルもあり、世界中でその取り組みが益々進められております。

少子高齢化対応の日本型「MaaS」

日本ではまだ「Whim」のような、「MaaS Alliance」の言うところの「統合型」のサービスの展開は遅れているようです。しかし、地方自治体、交通会社、自動車会社など、移動に関わる企業では積極的に研究開発実験を行い、本格的にMaaS事業の取り組みに力を入れています。
2016年には公立はこだて未来大学が中心となるベンチャー企業、「株式会社未来シェア」が設立され、日本の少子高齢化による「公共交通が抱える課題の解決に向けて」、「効果的な配車手段の提供」、「移動手段利用格差の解消」、「環境保全、地域経済の活性化」を目的とした、日本流のMaaSの開発がすすめられています。
未来シェアでは、「SAVS(Smart Access Vehicle Service)」という、タクシーと路線バスの長所をそれぞれ活かし、AIを利用して需要に合った配車サービスを企業や地方自治体と提携し普及を目指す方針です。
また、トヨタ自動車では、MaaSの発展により自家用車の売れ行きが減っていくことを見越し、2018年の1月に「e-Palette Concept」という多様な用途の移動サービスがカスタマイズ出来る、車体が低く、コンテナのような形の電気自動運転車を発表し世界中の注目を浴びました。
「e-Palette」は、自家用車とは全く異なるコンセプトで交通課題解決に焦点があてられ、ドライバーが不足する物流業では配送車となったり高齢化の進む過疎地の住民の移動手段となったり、また、自宅前まで来る無人コンビニになったりと様々なサービスが期待されております。
さらに、トヨタはソフトバンクと「MONET Technologies株式会社」というオンデマンドモビリティサービスを提供する会社を共同設立しました。今年2月より本格的事業を開始しトヨタの自動移動システムをソフトバンクのデータ収集分析システムと融合し、より画期的なMaaSの展開を目指していくようです。

JTBが「MaaSオペレーター」に

3月20日には大手旅行会社JTBも株式会社未来シェアと提携し「観光型MaaS」を展開していくことを発表しました。 
JTBは未来シェアが提供する需要に合った配車サービス、「SAVS」の利点を利用して、交通が不便な観光スポットへの効率的なアクセスや自社が蓄積した宿泊を含む観光情報と配車サービスをパッケージにしたり周遊パスを導入したり、また、それらの手配や決済など一連の手続きを行う「観光型MaaS」を普及させていくとしています。
この「観光型MaaS」のシステムが、地元住民の日常生活でも活用でき地域の交通課題の解決にも役立て、地域経済の活性化に貢献できるMaaSを目指していくようです。 また、JTBは実証済の外国船寄港地での「クルーズ型MaaS」やイベントに対応する「イベント型MaaS」も推進していくなど、今後は「MaaS オペレーター」としてJTBならではのMaaSを展開し国内外の旅行者により快適な観光サービスを提供してくれるのでしょう。
MaaSの発展で人、物の移動がより効率的で便利になるのでしょう。それに伴い経済効果も期待できます。しかし、MaaSの恩恵を受けるにはスマホのアプリなどが必要となることが多く、「IT弱者」への対応が今後課題となるのではないでしょうか。
参考記事:
K. ブリーン

K. ブリーン

アメリカの某大学経済学部卒業。主に社会経済や映画の事などを書いてます。ピラティスにはまり、指導員資格を取りました。
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