〈高木琢也|OCEAN TOKYO代表〉インタビュー/聞いて学ぶ。

インタビュー

原宿1番の人気美容師が、ついに独立。サロン激戦区の原宿で、経営者として成功するために必要だったのは、「髪を切る」だけの才能だけではなかった。 今、若者に「兄貴」と慕われる存在となった、カリスマサロンOCEANTOKYO代表の高木琢也さんに迫るインタビュー第2回。

STAGE編集部:美容師から、美容師兼「経営者」になってどうでしたか?

高木:やってみて、やっぱり大変だな、と。仕事している時間が圧倒的に長いです。美容師は営業中だけが仕事だけど、経営者は朝打ち合わせして、店で営業して、夜ミーティングして、関係ない飲み会に顔を出して。日本人好きじゃないですか、忘年会とか。「いります?それ」と思ってました。でも、魅力あるアーティストや、その職業でご飯を食べている特化した人たちと話している内に「その企画おもろいよね。じゃ、このメンバーでやっちゃおうか」という展開になったりします。他社だし、全然違う職業だけど、アイディアを出し合ったり、悩んでいることを相談して「自分だったらこうする」という意見が聞けるようになってきました。だから無駄じゃない。けど、長い(笑)。家に帰ると2時、3時。でも自分の時間は欲しいから、1時間半くらいドラマか音楽か聞いて…ソファーで気絶しちゃっているときは多いですね。

結局、経営者の場合は休みの日でも、どこの店舗の売り上げとか、どこどこの店舗の誰々とか、次のアイディアは何にしようとか、24時間寝ている時間以外はずっと営業中なんです。それをみんなにやらせたいとは思わないです。独立したかったらしていいけど、数年経って「うわ、残っていればよかった、あそこに」って後悔させたくない。独立が全てではないしね。今、店舗を任せている子は独立したいとかだんだんなってくるかもしれないけど、その時はその子の判断に任せようと思っています。
今後的には、独立して失敗しちゃったな、という人も必要だな、とも思います。そんなに簡単なものじゃないから。だから、「誰かいけよ」と言っています(笑)。誰かが失敗例をつくってくれないと、みんな学べないですから。厳しいけどね。

STAGE編集部:高木さん自身は、「3年やってだめだったら諦めよう」と立ち上げました。

高木:美容師と、美容室経営はまたちょっと違うから。僕らは、経営なんて勉強していないんです。髪の毛切ることしかやっていないのに、社員を養っていかないといけない、お店にも投資しないといけない、見たこともない、未だに100万円の束なんて見たことないけど、本当にあるのか?っていう架空のお金を借りて銀行に入れて、それを会社に投資して。

高木:経営を学ぶ人は大学も行って、何年も働いてから、自分の会社を経営して、となるわけじゃないですか。僕たちはその間ずっと髪切っていただけ。とはいえラーメン屋の人も、僕の母も社員2名だけど美容室の経営できていたし、できるだろう、と思っていた部分はありますけど。
できなくはないけど、暗いお店は嫌だなと思っていたから、3年やって結果を出せないんだったら、自分の中で見切りをつけたほうがいいな、とは思っていました。

どうせやるなら「徹底的にやる」。その覚悟を持てるかどうか。だらだらなんとなくやるのが一番意味ない。

STAGE編集部:経営はどこで学びましたか?

高木:相方のトメ吉はすごい本読んでますね。僕は、外の経営者と話すことが多いので、聞きます。本とか、映画もそうだけど、「どうだった?簡単にあらすじ言ってみて」と言ったら、2時間半の映画が10分もかからないでしょう? それと同じで、その人が勉強してきた何時間もの結果として、「ぶっちゃけどれがいいんですか?」と聞いたら、返ってくるじゃないですか。「困ったのでこれどうしたらいいですかね」と言ったら、それも返ってくるじゃないですか。だから、「勉強いらなくない?」大事なのは結果だもん、と。僕は聞きながら学ぶタイプです。ただズボラなんです。勉強はいりますよね(笑)。

高木:簡単な話、僕は、いっぱい稼いで、スタッフにもいっぱいお金払って、国にもいっぱい払う。それでも余っちゃうんだけど、これどうする?となったら、1番いいじゃん、という考え方です。それをやっている内に、ここはこうしたほうがよかったね、というところでちょっとずつ学んでいくならいいけど、はなっからグレーゾーンなことを学んでも仕方ない。まず経営よりも目の前のお客様をどう幸せにするかを考えるべき。

STAGE編集部:では、新規出店などを決めるときに、何を決断材料にするんですか?

高木:新店舗は、いつでも出せると思っているから、最終的には人です。行きたい人。行きたくないのに行かせるというのは、僕の中で筋が通っていないからしない。例えば「いい物件が千葉県で見つかりました」と言われても、行きたい人がいなかったら出店しない。普通のサラリーマンだったら「大阪行きたくないよ」と言っていても、「お前、明日から大阪だ」と言われたら行くでしょうけど、僕の中ではそれはちょっと違うな、今の段階では。「じゃあ、誰かが行きたいところから埋めていこうか。どこでつくっても売れるでしょう」みたいに思っています。髪を切らないって人はいないはずだから。

STAGE編集部:人を育てるときに1番大事にしていることは?

高木:人柄。技術は、プロだから上手いのが当たり前。僕は売れるか売れないかというのは人間力だと思っています。嘘つかないとか筋を通すというか、そういうこと。

お客さんの理想があって、でも実現するには髪も長さが必要で、お金も必要だとしたら、それをお客さんに理解していただくことも必要です。「こういう髪質だからこうなんだよ」とか、説明できないのにそのスタイルを提案するのってナンセンスだなと思っています。

お客さんの立場だったら、すすめられた挙げ句お会計3万円だったら、「まじかよ」となるじゃないですか。美容室は、それがまかり通ってしまうから、問題。大体値段が「〜(から)」でしょう? 〜(から)ってなんだと。「いくらなの?」をちゃんと説明できていないとか、僕は人としては最悪だなと思っているんです。

高木:そういったことを含めた人柄の部分がちゃんとしていないと、人がついてこない。どんなにカットが上手くても、シャンプーはアシスタントにしてもらうわけで、ついて来るアシスタントがいない人にはお客さんは帰ってこない。カットは超上手いけど憧れられていない人みたいに、うちの子たちはなって欲しくない。上から認められるけど下から認められないんじゃ話しにならないし、下からだけで上から認められないんじゃ、傷をなめ合っているだけだし。そこは結構言っています。あとは、「素直さ」かな。

STAGE編集部:素直さは、重要ですか?

高木:素直に人の話を聞き入れることができる人は成長する。素直さって学ぶ上で、すごい「武器」になると思う。

第3回は、いよいよ、高木琢也さんにとっての「お金とは?」に迫ります。

高木琢也

1985年7月14日生まれ。千葉県出身。早稲田美容専門学校を卒業後、 都内1店舗を経て、2013年9月に中村トメ吉と共にOCEAN TOKYOを設立。わずか4年で渋谷・原宿に5店舗を展開。『月間技術売上1200万』の偉業を成し遂げ、最年少の美容師として日本武道館でのヘアショーに出演。ホットペッパー全国メンズヘアスタイル部門では1万7千作品の中から2017年・2018年と2年連続日本一に選ばれ、今最も注目を集める美容師。年間約20回のセミナーは即日完売となり、美容界トップクラスの指名数、リターン率を誇り、発信するスタイルはすぐさま流行を創り出す。またサロンワークだけでなく、TV・CMの出演、一般誌・業界誌・ヘアショー・セミナーなど活躍の場を広げている。【最高の似合わせ】を武器に男女問わず多くの芸能人、モデルなどから絶大な支持を集め、止まることの知らない美容界の風雲児と呼ばれている。

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