混乱する仮想通貨の行方ーウォーレン・バフェット やビル・クリントンの影響は

経済

行方の不安定な仮想通貨。ウォーレン・バフェットやビル・クリントンのような著名人の発言による影響や、10月11日には仮想通貨に関する上院委員会の公聴会も開かれ有識者が議論を交わし合うなど、益々注目されるアメリカでの仮想通貨の動向について探ります。

2018.11.4

ビル・クリントンの不安定な前向姿勢

10月2日、リップル社(決済システムソフトウェアー開発)が主催する、仮想通貨や決済システム関連の国際会議で、米元大統領ビル・クリントン氏が基調講演に登壇しました。
クリントン氏は自身が大統領時代にインターネット関連の規制を緩和したことで、ITを発展させた経験から仮想通貨の推進に一役買ったようです。リップル社側も、先見の明がある政治家として、基調講演を依頼したのでしょう。
クリントン氏はブロックチェーンや仮想通貨のテクノロジーは素晴らしく、それを無駄にしてしまうような規制は緩和すべきだ、という考えを述べました。 しかし、講演内容は本題とはあまり関係のない社会問題や自分の新書の紹介などでまとまりがなく、ブロックチェーンや仮想通貨がどのように銀行産業を変えていくのかなどに焦点を当ててはいないようだったと、アメリカの経済誌Forbesでは指摘しています。
正直なところクリントン氏は擁護派というよりも中立という立場なのではないでしょうか。今回の講演はリップル社にとっては効果があったようには思えません。翌日のリップル(XRP)の価格は上がるどころか下がってしまいました。

ウォーレン・バフェットは仮想通貨が大嫌い

天才投資家、ウォーレン・バフェット氏は仮想通貨について否定的で、仮想通貨は単なるギャンブルであって投資ではない、思わしくない結末となる、などとメディアインタビューで厳しく非難しているのは有名です。
元々、バフェット氏はIT関連には消極姿勢で、今回も自分自身は仮想通貨についてよく理解していない事を認めています。その為、理解していないのに否定するのはおかしいという仮想通貨擁護側からの反論も少なくありません。
ウォーレン・バフェット氏が、公の場でよく理解してもいない仮想通貨を否定する理由として、高いリターンをだしている仮想通貨を横目に、株式投資の地味なリターンに疑問を抱く株主達からのプレッシャーがある為、はったりを言ている、という意見もあります(IBT)。
確かに、バフェット氏は時代遅れな一面もあるかもしれませんが、約20年前のドットコム・バブルを予測したのはバフェット氏だという事を忘れてはいけないでしょう。

今後のカギとなる米政府の動向は

結局、アメリカでの仮想通貨の行方は米政府がどのようにバランスのよい規制整備をするか、によるものではないでしょうか。 10月11日に行われた、上院銀行住宅都市委員会が仮想通貨とブロックチェーンについて開いた公聴会の様子をForbesは次のように伝えています。
・証人として招かれた、反対派で2008年のリーマンショックを予測したことで有名な経済学者のヌリエル・ルービニ博士は徹底的に否定。擁護派ロビーグループ、Coin Centerの調査長、ピーター・ヴァン・ヴァルケンバーグ氏は仮想通貨絡みの犯罪は改善できる、仮想通貨やブロックチェーンはインターネットの誕生と同様に繁栄をもたらす上で将来性が高い、と主張。 ・2020年の米大統領選の民主党有力候補であるエリザベス・ウォーレン上院議員は消費者への被害なしに仮想通貨の生産的な面を育成していくことは難しいだろうと否定的である。他の民主党の委員からも消費者への被害を懸念する意見が多い。 ・共和党からは楽観視する委員もいる。その一人だった上院銀行住宅都市委員会の委員長である、マイク・クラポ氏は、激しい価格変動や市場操作詐欺という欠点を認めやや弱気な発言もしている。
クリントン氏が指摘するように、素晴らしいテクノロジーが厳しい規制で身動きが取れないのはもったいない。しかし、テクノロジーを悪用した犯罪から市民を守る規制がしっかりしていなければ、我々は安心して投資もできません。規制のバランスは難しいところです。 仮想通貨市場やブロックチェーンの将来にはやはり世界経済の中心であるアメリカの対応が大きく影響を及ぼします。擁護派、反対派どちらの意見も一理あり、それだけに、表面的で偏った情報に惑わされることなく、政治経済情勢を見ながら慎重な判断が必要となるのではないでしょうか。
K. ブリーン

K. ブリーン

アメリカの某大学経済学部卒業。主に社会経済や映画の事などを書いてます。ピラティスにはまり、指導員資格を取りました。
]]>