サッカー日本代表キャプテン長谷部誠選手に学ぶ「心を整える」習慣

カルチャー

2017年現在140万部超。異例の売り上げを誇る、サッカー日本代表キャプテン長谷部誠選手の著書『心を整える。』。実はスポーツ選手が書いた書籍として初のミリオンセラーを達成。発売当初は大学の入試問題にも数多く採用されるなど大いに話題になりました。

2017.8.23
書籍『心を整える。』が、なぜこれほどのヒットを記録したのかというと、それはおそらくこの本が「自己啓発本」としてビジネスマンなどの社会人に支持されたためでしょう。長谷部選手はビジネスとは異なる世界で戦うサッカー選手ですが、浦和レッズに加入した02年以来、日本とドイツで4つのクラブを渡り歩きながら13人の異なるタイプの監督の下で働き、日本代表ではジーコ監督以降7人もの監督の信頼を得ています。 つまり、アスリートとしての経験だけでなく「上司とのコミュニケーションの取り方」「組織のなかで信頼を得る方法」「苦手な仲間・ライバルとの接し方」「キャプテンとしてのチームのまとめ方」などなど、組織の中で得た経験が非常に豊富!だからこそ、そのノウハウが社会人にもウケたのではないでしょうか。 ということで、長谷部選手が身に付けた「勝利をたぐり寄せるための56の習慣」の中から、社会人でも使えそうな心の整え方をピックアップしてみました。

「夜の時間をマネジメントする。」

あくまで個人的にですが、この本を読んだ私にとってある意味最も衝撃的だった一文がこちら。
僕は電気をつけたまま寝たことがない。本を読みながら、テレビを見ながら、ゴロンと横になって、いつの間にか寝たことがない。
テレビやゲームといった誘惑に惑わされることなく、ベッドに入るまでの時間をコントロールしているというのです。しかも毎日!
しょっちゅう夜更かしをしてしまっている私にとって「こんな人がいるのか?」と思うレベルの話。それほどアスリートにとって体調管理が大切ということもありますが、もうひとつ「ある理由」で長谷部選手はこの習慣を続けているそうです。
それは『勝負強さ』を身に付けるため。「寝る」という行為は意外と難しく、大事な日が近づくほど緊張が高まり質の良い睡眠がとれなくなるもの。だからこそ、日ごろから自分自身をマネジメント出来ているかがカギになる。この考えがあるからこそ、特に誘惑が多い「夜の時間」にこだわるのだそうです。
ちなみに一方で、ドイツ移籍した当初は海外選手からの飲みの誘いを絶対に断らなかったそうですが、それはチームメイトとの協調性を高め自分の性格を知ってもらうチャンスだと考えたから。ストイックすぎるのではなく、このような柔軟な考え方も参考にしたいですね!

同じメンバーと「群れない」

毎年のように移籍市場を賑わすサッカー界。それだけ選手や監督が激しく入れ替わっていることを意味しますが、長谷部選手自身も新人になったり、ライバルが移籍してきたり、はたまたキャプテンを務めたり。組織の中で様々な状況に置かれながら、心を整える方法を身に付けてきました。
ちなみに南アフリカW杯の大会期間中、代表メンバーたちが食事をする席は大体決まっていたそうですが、岡田監督はチームキャプテンの川口能活選手だけは食事ごとに各テーブルを回るように指示していたそうです。この時の代表は、結果はもちろん組織としてすごく魅力的だったのを覚えていますが、あれは岡田監督の細かい努力の賜物だったのかもしれません。

「指揮官の立場を想像する。」

W杯南アフリカ大会は、代表メンバー選考~大会直前の戦術変更など、本当にいろんな決断があった大会でした。ですが、そのすべての責任を背負って孤独に戦った岡田監督の姿を目の当たりにした長谷部選手は、それ以来「指揮官の立場を想像する」ことを習慣にしました。
たしかに、指揮官の采配は結果的に間違うこともあります。ただ、最も恐れるべきは「この戦術は間違っているんじゃないか?」といった疑念や不安に支配されること。指揮官が孤独であると分かっていることで、そういった感情に流されなくなったといいます。 これは社会人でもそのまま役に立ちそうですが、自分の上司のことがどうしても信頼できないこともあるかもしれません。そんな時は、勇気を出して進言することも大切。長谷部選手曰く、ポイントは「自己保身のためではない」ことを伝えながらチームのための提案をすることなのだそうです。

「運を口説く」

最後になりますが、長谷部選手お気に入りのアルゼンチンのことわざがあるそうです。それは「運を女性のように口説きなさい」というもの。何も努力せずに振り向いてくれる女性がいないように、運も必死に口説こうとしなければ振り向いてくれないという意味。
「運が良かった」と言えるような成功も、努力を怠っていたら手に入らないかもしれない。そう信じて努力を続けることが大切なんですね!
2017年現在、所属するドイツ・フランクフルトの指揮官からは「どのチームの監督でも長谷部のような選手がチームにいたら嬉しいはずだ」と評し、元日本代表監督でイタリア人のザッケローニは「生まれながらのキャプテンはマルディーニと長谷部だけ」と、自国の伝説的なキャプテンを引き合いに出しました。
しかし、長谷部選手のデビュー当時、彼より評価の高い選手は数多く存在していました。しか も「谷間の世代」という不名誉な名前で呼ばれることも。そんな中で彼が選んだ方法こそ「心を整える」習慣を身に付け地道に努力すること。監督とのエピソードは上司との関係に、ライバル選手とのエピソードは会社の同僚との話に置き換えながら読むことで、社会人にとっても役立つ本になると思います!
横山ケン太

横山ケン太

趣味はアウトドア、興味は財テク。フリーの作家として活動中。
]]>