2017年12月21日 更新

〈佐々木 圭一〉「伝え方の技術」によって、恋愛もビジネスも成功に近づける

「伝え方」の出版や講演を通じて、日本のコミュニケーション能力のベースアップを目指して精力的に活動をしている佐々木圭一さん。今でこそコピーライターとして飛ぶ鳥を落とす勢いですが、以前はむしろ伝えるのが苦手だったとか。そんな佐々木さんに「伝え方の技術」を身につけるまでのストーリーと、伝え方が日本の未来にもたらす可能性について伺いました。

2015.10.26

■毎日、大量のコピーをボツにされた博報堂時代

STAGE編集部:博報堂で働き始めた当時は、あまり伝えることが得意ではなかったそうですね。

僕は学生時代、機械工学の勉強をしていたんですが、就職活動をするにあたって「マーケティングをやってみたい」と思い、博報堂に入社したんです。でも、ふしぎと、コピーライターに配属されてしまいまして……。

文字を書くのが得意だったわけでもないので、当然、いきなり書けるはずもなく、1回の打ち合わせに100案ぐらい持っていってはひとつも選ばれない。大量のコピーがボツになり、用紙ごとわさっと捨てられるというのを毎日3、4回繰り返していました。

同期にコピーライターが3人いたのですが、みんな文系なので文章を書くのが上手だったり、専門的に学んでいたりした人たちで、いきなりすごいのを書くわけですよ。同期はどんどん採用されて、広告の賞を取ったりしているのに、僕はそんなことは全くなかったので、焦りもあったし、ジェラシーもありました。ストレスでプリンを1日に3つ食べ続けて激太りして、顎もなくなってしまって(笑)
STAGE編集部:辞めたいという気持ちにはならなかったのですか?

なんとかしなきゃ、って思っていました。

僕は今43歳なのですが、僕の世代というのは、学生時代に「不登校」というコンセプトがなかった時代。どんなに辛くても学校に行くのが、ご飯を食べるのと同じぐらい当たり前という時代でした。だから、会社に入ったあとも、「辞めたい」という意識はなかったです。

■あるとき、伝わる言葉には法則があることを発見した

STAGE編集部:そんな中で、「伝え方」に技術があるのを発見したと。

あるとき「言葉には法則がある」と突然、見つけたんですよ。

いつも、世の中にある言葉で、よいと思ったものをノートに書き出していたんです。「トラック野郎」って面白いなと思ったら「トラック野郎」って書いて、「はっけよいのこった」って言葉を面白いなと思ったら、それを書いて……。

これらの言葉を眺めていたら、「この言葉とこの言葉が似ているな」って気付いたんです。ブルース・リーの映画「燃えよドラゴン」の「考えるな、感じろ」っていう名言だったり、「踊る大捜査線」の、「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ」だったり、柔道の田村亮子選手の、「最高で金、最低でも金」だったり。

どれも反対の言葉が入っているんですよね。考えると感じるも反対だし、会議室と現場も反対だし、ヤワラちゃんの最低と最高も反対だなと思って、逆の言葉が入っていると強い言葉になるのではないかと。もしかしたらこの法則が他にも使えるんじゃないかと思って初めて書いたコピーが、Mr.Childrenの『君が好き』っていうシングルの、「言えないから歌が生まれた」っていうコピーです。

このコピーがコピーライターの賞をいただけることになって、「この法則は使える」と確信しました。

何冊にも及ぶ、言葉を書き留めたノート。これが佐々木さんの原点だ
STAGE編集部:佐々木さんの中での、大きな転換点ですね。

それまではコピーってひらめくものって思っていて、パワースポットとかに行けばひらめくのかなと思って森に行ってみたり、テトラポッドの上に登ればひらめくんじゃないかと思って海に行ってみたり(笑)。でも、ひらめかないわけですよ。

どうしたらいいんだろうなと思っていたときに、実はひらめきじゃなくて技術があるんだ、学ぶことができるんだ、と気づきました。

■伝え方の技術によって人生がまわり始めた

STAGE編集部:実際に「伝え方の技術」を身につけたあとは、コミュニケーションや仕事は円滑にまわり始めましたか?

まわり始めましたね。それも、徐々に変わったのではなく、激変したと感じています。
それまでは、よい仕事ももらえなかったですが、広告賞が取れ始めて、いいお仕事もいただけるようになって、会社から海外へ留学させてもらえることになって。よい循環でまわり始めました。

クリエイターのひとつの夢として「いつかは独立して仕事がしたい」と思ってはいたのですが、なかなか踏み出せなくて……。著書の「伝え方が9割」が64万部のベストセラーになり、それがきっかけで会社を設立し、独立の夢を果たしました。

ベストセラーになったといっても出版は単年度でしかないので経済的な不安もありましたが、もともとやろうと思っていたことのスタートを切るための合図のような気がして。

大ヒットとなった著書「伝え方が9割」。
STAGE編集部:現在は、「伝え方の技術」についての講演を精力的にしていらっしゃいます。

日本人は、伝え方で損していることがいっぱいあります。プロダクトも世界に誇れるものを作っているし、サービスも素晴らしいコンテンツを持っている。だけどうまく伝わっていないから買われない、認知されない、ということが山のようにあって、ものすごくもったいないことが起こっているんじゃないかなと思います。

その背景にあるのが、日本人が「伝え方」を学んだことがないということです。アメリカは、よいものを作っているうえに、上手に伝えられるから、きちんとプロダクトもサービスも売れる。日本も、ちょっとでもコミュニケーション能力を上げることで格段によくなるのではないかと思っています。

STAGE編集部:「伝え方の技術」で未来が変わりそうですね。

国や会社だけでなく、個人も変わると思います。自分の感覚だけで伝えてしまうから、うまく伝わらなかったりするんですよね。伝え方の技術を学んで身につけてもらえれば、恋愛も増えるかもしれないし、もしかしたらいじめも減るかもしれないし、ケンカも減るかもしれない。ケンカがなんで起こるかというと、自分の思っていることが相手に伝わらなくて、相手が思ったように動いてくれないからなんですよね。

伝え方の技術を学んで身につけることができれば、個人個人ももっと幸せになることができるだろうし、個人のコミュニケーション能力によって商品が売れれば会社もよくなるだろうし、日本全体ももっとよくなるだろうと。

伝え方が学べると僕は言っているんですけど、学ぶことで変わるという点では、お金の知識も似ているのかなと思います。お金について学べば、使い方も変わるし、貯め方も変わりますよね。

お金が「学べる」ものだということは、みんなが思っていたりすることじゃないと思うんですよね。義務教育にもないですし。だけど、お金について学べるんだということを知って、それを身につければ、きっと人生が激変する人がいるのではないかと思います。

■人生の可能性は、伝え方次第で無限に広がる

STAGE編集部:伝え方の講演を続けていて、変わってきた実感はありますか?

よく言われるのが、「デートに誘いました」っていうことかな(笑)。会社でももちろんありますよ。カーナビを製造している会社の社長が、メーカーから毎回、割引を交渉されて困っていたのですが、伝え方の技術を知って、ある伝え方にチャレンジしてみたそうなんです。

なんと言ったかというと、「御社のフラッグシップモデルを作りませんか」と。「カーナビはたくさんあるけれど、代表選手になれるような、御社を象徴するようなものはないですよね。それをきちんと持っておいたほうがよいのでは」と。

最終的に納入したものは、高価格のハイスペックモデルで、商品のラインナップ自体同じなのですが、相手への説得力がまるで違いますよね。
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