ボランティア活動を通じた異業種交流によって、良い人脈は得られるか?

生き方

パーティ形式の異業種交流会とは別に、ボランティア活動への参加を通じた異業種交流会も行われています。「一期一会」ではなく、価値観が近い人と長い時間活動、接触することで、お互いの人間性がわかって交流が深まり、貴重な人脈が築ける可能性が高まります。

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2020.3.16

「異業種交流会」にはこんな不満がある

パーティ形式の「異業種交流会」は、80年代のバブルの時代の頃から盛んになりました。誰でも参加できるオープンなものも、紹介や事前の参加審査が必要なものもありますが、外部の人脈をひろげて自分の価値を高めたいビジネスパーソンや公務員、ビジネスを応援してくれる人を得たい起業家や起業志望者、スポンサーを探しているアーティスト、情報源をひろげたいジャーナリスト、政治家を志して勉強中の人、大学の先生、弁護士などの「士業」、店をPRして良い客筋をつかみたい店主、婚活目的も内に秘めた男女など、いろいろな人たちがそれぞれの思惑を抱いて、会場にあらわれます。
ゲストのスピーチやバンドの生演奏を聴いたり、立食形式でお酒を飲んだり軽食をつまみながら名刺を渡して自己紹介しあい、相手と意気投合したら二次会に誘ったりもしますが、異業種交流会に参加した人は、はたして満足しているのでしょうか?
異業種交流会への不満としてよく挙げられるのは、次のようなことです。
「参加者は多いが、話ができたのはごく一部だけだった」「もらった名刺の枚数は多くても、その後での交流に結びつかない」「ボヤキなど暗い話か、明るいけれど一方的な営業トークのどちらか」「マルチ商法や新興宗教、怪しいサークルの勧誘はやめてほしい」
「人脈などできない」という不満の裏には「短い時間、話すだけでは相手がどんな人間がわからない」という事情が、ありそうです。

異業種交流とボランティア活動のコラボ

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異業種交流会は「多彩な価値観に触れて勉強になる」とよく言われますが、価値観が遠くかけ離れた相手には心を許せない、仲間になれないのもまた事実です。たとえば「人生はカネが全てだ」と言う人と「カネが全てではない」と言う人は仲間になれるでしょうか?
ある程度までの振れ幅の中で価値観を共有できる相手と出会える異業種交流の場を求めているのなら、異業種交流とボランティア(奉仕)活動の組み合わせは、いかがでしょう?
「人生はカネが全てだ」という価値観を持つ人は、汗をかいてもお金が目的ではないボランティア活動は敬遠したり、蔑視したりしますから、最初から来ません。マルチ商法や新興宗教、怪しいサークルの勧誘が目的の人も"効率"が悪いのでたぶん来ないでしょう。
そうやって価値観や目的のスクリーニング(ふるい分け)がなされた参加者がボランティア活動を共にし、接触する時間が長くなると、パーティでのわずか数分間とは違って相手がどんな人間かがわかりやすく、心を許せる仲間になりやすく、「人脈」にもつながりやすくなります。「ルックスなど印象のいい人ばかりモテて、口べたな自分はカヤの外だった」ということもありません。
一緒にボランティア活動に参加する中で、パーティ形式の異業種交流会では暗い話ばかりしていたような人の明るい面や、営業トークをまくし立てていたような人の人間くさい側面がわかって好感を抱き、名刺の社名、肩書き、氏名しか知らない関係を超えて、貴重な人脈に発展するかもしれません。

国際支援、スポーツ大会の運営支援など

「異業種交流&ボランティア」の活動をしている団体には、「公益社団法人シャンティ国際ボランティア会」(途上国支援)、「すみだネット」(東京都墨田区/「わんぱく相撲」運営支援)、「NeoKanazawa異業種交流会」(金沢市/地域貢献活動)、「道後倶楽部」(松山市/地域の教育支援)など全国にあり、国際支援、スポーツ大会の運営支援、施設の子どもの遊び相手、街のゴミ拾い、災害被災地支援などのボランティア活動を行っています。
「大阪マラソン」の大会ボランティアを通じた異業種交流会が開催されたこともあります。全国の商工会議所や青年会議所(JC)も異業種の集まりで、地域のボランティア活動に熱心に取り組むところがあります。
企業経営ではいま、国連の「SDGs(持続可能な開発目標)」に基づくESG(環境、社会、ガバナンス)の重要性が認識されるようになり、S(社会貢献)に関して日本でも多くの企業が社員のボランティア活動を奨励しています。それを通じて異業種の人脈がひろがるなら、なおのこと歓迎されることでしょう。海外では王室を筆頭に、ボランティア活動を金銭的に支援したり、自らも熱心に奉仕活動をする富裕層は少なくありません。
寺尾淳(Jun Terao)

寺尾淳(Jun Terao)

本名同じ。経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、現在は「ビジネス+IT」(SBクリエイティブ)などネットメディアを中心に経済・経営、株式投資等に関する執筆活動を続けている。
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