なぜサイバーエージェントはフツーの29歳女子社員を役員に選んだのか?

カルチャー

アメーバブログやアメーバピグ等の運営でおなじみの会社「サイバーエージェント」。実は近年ゲーム事業が経営を支えていると言っても過言でないほど好調なのを御存じでしょうか。その好調の流れを作ったのが2012年にリリースされた夢の恋愛カードゲーム『ガールフレンド(仮)』。このゲームの立案者は当時入社4年目の横山祐果さんという一人の女子社員でした。

2017.10.31
ゲームといえば「テトリス」くらいしか経験がなかった彼女が生み出したヒット作。その仕事ぶりに可能性を見出した藤田晋社長は、なんと彼女が入社7年目の時に執行役員に抜擢。女性初、しかも29歳という若さ(しかも美人)で執行役員になった“事件”はサイバーエージェント内にとどまらず、ビジネス業界で広く話題になりました。 そんな彼女が自身の成功体験について記した本が『フツーの女子社員が29歳で執行役員になるまで(仮)』。異例の出世の裏には、いったいどんな物語があったのでしょうか。

サイバーエージェント流、企画の大喜利「座布団会議」

彼女が入社わずか4年でヒット作を生み出すことができたのには理由があるそうです。その一つが「座布団会議」。これは若手・ベテランに関わらずプロデューサーたちが一堂に会し、藤田社長の目の前で企画案や事業の改善案を発表するというもの。社長自ら発表された案に点数をつけ、良いアイデアにはまるで笑点のように座布団が与えられるのが名前の由来です。新米プロデューサーだった横山さん。もちろん当初はプレゼンも失敗の連続だったそうですが、企画の提案数では誰にも負けず、徐々に実力をつけていったそうです。
社長直々に若手社員の意見を聞き、しかも合格点を出したものは即実行。サイバーエージェントの風通しの良さが彼女のモチベーションを上げ、企画を考える力を養ったと言えそうです。

「ガールフレンド(仮)」の大ヒットで一躍有名に!

「座布団会議」で鍛えられながら迎えた2012年。彼女の立案した新たなゲーム企画が通ります。その名は学園恋愛カードゲーム『ガールフレンド(仮)』。レアリティの高い登場キャラクターがセリフをしゃべる。しかも、それぞれを人気声優が担当するという点にこだわったゲームは新鮮で、多くのユーザーを惹きつけました。会員数は700万人超。アニメ化やコミック化もされゲーム部門の稼ぎ頭に成長しました。
今ではヒット作を連発しているサイバーエージェントですが、実は『ガールフレンド(仮)』のヒットがなかったらゲーム事業から撤退していたかもしれないという声もあるほど。それほど当たりハズレの差が大きいのがゲーム事業です。彼女にも相当なプレッシャーがかかったはずですが、その仕事はどのように進めたのでしょうか?

「教えて&お願い」攻撃で経験差を埋める!

プロデューサーの横山さんが『ガールフレンド(仮)』の制作で率いたスタッフは総勢およそ60名。その多くがゲームを専門にする職人集団でした。そんな中、彼女がとった行動はとにかく素直に「教えて」と「お願い」という言葉を使うこと。これは一見、丸投げしているようにも聞こえますが、彼女は分からないことを分からないまま放っておくことは絶対にしないため素直にとった行動でした。
結果的に、彼女の行動により制作スタッフの作品に対する共通理解は深まりました。彼女自身が受けきれない仕事は専門家に任せる。つまり「餅は餅屋に任せる」状況が生まれたことで、ゲームのクオリティも上がったのかもしれません。

なぜ藤田社長は彼女を執行役員に抜擢したのか?

2014年、入社7年目の横山さんは社員2000人の前で藤田社長から新執行役員に任命されます。彼女は今でもその本当の理由を聞いたことが無いそうですが、藤田社長曰く「初の女性役員は、仕事もプライベートも楽しんでいる自然体の女性がいいと思っていました」とのこと。
ユニークな人材を素直に登用する彼女の働き方こそ、サイバーエージェントの風通しの良い社風と重なる部分がある。そう感じて彼女を抜擢したのだと感じるコメントではないでしょうか。
正直なところ、分からないことは「聞く」「任せる」という彼女の働き方は、誰にでもできるものではなさそうです。むしろ安易にマネしたら痛い目をみるかもしれません。うまく行くためには、誰にも負けない努力などしっかりとした裏付けが必要だと思われます。
その働き方だけでなく、入社4年目の彼女がヒット作を生み出すことができたサイバーエージェント流の会議の進め方やチーム運営の方法など、様々な点で非常にためになり自分も何かやってみようと思える一冊でした。
横山ケン太

横山ケン太

趣味はアウトドア、興味は財テク。フリーの作家として活動中。
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