STAGE編集部:経営者になって、お金に対する感度や考え方に変化はありましたか?
高木:「買って学ぼう」になりましたね。買ってみないと分からない。経験していないから。僕は時間もないし、車の運転嫌いだし、車って必要?って思って買ってないタイプでした。でも、買ってもいないのに、必要ないって言うなと。買ってから、時間なくて乗れなかった、は筋が通ると思うんです。
だから、取りあえず買ってみるし、経験してみる。勉強代ですよね。価値が下がらないものを買えばいいだけで。情報をインプットして、これは今この値段で買うけど、来年でもこれくらいで売れる、を考えて買う。買ったときよりも10年経ったら値段上がっている可能性のあるものを選ぶ。時計なんてiPhoneあるから、いらないじゃん、と思ってましたけど、「社長、人はそこを見てるよ」と言われて、「買ったことないのに否定するのって俺は間違っているな」と思うようになりました。
僕は、スーパーへ行って100円のドレッシングでも1,000円でも「どれでもいいよ」と言えるような夫になりたいと思っていたんです、昔ね。「そんなの気にしないでよ」と嫁に言いたいなと。洋服も毎日違う服着ていたらいいな、と。毎日洋服屋さんへ行っても、値段見ないで買えるようになりたい。今でも見て「これちょっと高くない?」と言うけど。
「買って学ぶ」を続けていけば、車で走っていて「このビルかっこいいからこのビル欲しいな」みたいに、いつの間にかステップアップしていくんじゃないかと。そういう経験を増やしていきたいから、とりあえず買ってみないと分からない、使ってみないと分からないのでやってみる。何事もまず行動するようになりました。
STAGE編集部:もともとは、そうではなかったということですよね。
高木:昔は何も買わなかった。すごい貯めてました。お金の使い方が分からなかった。だって、洋服なんてTシャツとジーパンでいいから。僕は今思えば、ちょっとずれていて。1人暮らしをするときに、親から銀行のカードを渡されて「お前絶対これ失くすなよ」と言われたんです。失くす可能性のほうが高いから、ずっとタンスに入れてました。20歳までお金を下したことがないんですよ、本当に。親からは「お前、金一銭も使っていないけどどうしてるの?」と言われました。「やり方分からねえから、危険すぎるからいらねえ」とか言ってましたね。
STAGE編集部:とりあえず使ってみる、に変えてから、「これはよかったな」「これはだめだったな」というのってありますか?
高木:だめだったはないかもな。基本的に何でも買ってよかったと思うようにしているし、今流行っているからいうよりは、何年経っても使えるものしか買わないようにしているから。「これはよかったな」はPATEKの時計。価値が相当上がっているから。「狙い通り」です。基本売ったりはしないんですが、洋服もそうだけど、何回も着たけど、結果、売ったときに、そんなに値打が下がらないものとか、下がったとしても着ているだけで価値があるものを常に着ている気がする。ハサミもそうですけど、20,000円から始めて50,000万のものを買い、最終的に150,000円のものを使っているんだったら、「最初からいいもの使ったほうがいいでしょう」と思う。「研げばいいんだし、その時間って無駄じゃん」と思います。どうせ払うお金だったら、先に払う。若いうちに持っていた方が逆にレアだ、とかいいところを探します。「まあ、30歳でこれ持ってたらいいでしょう」と。似合っている、似合っていないは別として、買えているというのが結果だから。僕は、車に興味なくてどうでもよかったんですけど、フェラーリって、誰でも知っているから、いつか乗るなら早いところ乗っておくか、で買いました。売りたいときは売れるから。大きいものを買うときはリセールちゃんと考えて買います。
STAGE編集部:価値が下がらないものを選ぶんですね。
STAGE編集部:では、「高木さんにとってお金とは」?
高木:「笑顔の数」かな。
STAGE編集部:そのこころは。
高木:僕は、お金に対してそんなに興味がないから、「1億すごい」とかないんです。もちろん、100万すごいと、昔は思っていたし、「年収1千万ってどんな人がなれるんだろうな」と思いましたけど。でも、お金がたくさん入ってすごいというよりは、これだけたくさんの人を喜ばせることができたんだという評価だと思う。喜ばせた数だな、と。
美容業界には「俺はビジネスビジネスしたくない。ゆっくり切りたい」と言う子もいる。「お金じゃない」と言っている自分が好きみたいのも多分あると思うけど、お金を意識しすぎている時点で、お金という呪いをかけられているんだと思います。
「いや、お前100万円の売り上げということは、1カ月に100人しか幸せにできていないんでしょう。うちは500人幸せにしてるから、ちょっとレベル違うかもね。」といいたいですね。
僕は、お金の分だけ喜ばせることができたんだな、と考える。お客さんにニヤッとさせたいとか、笑わせたりとか、その数をつくっていると思っているので。
高木:お金って、ないと幸せにならない。でも、お金を貯めようと思ったら多分、貯まらないです。誰かを幸せにしようとか、誰かを喜ばせようとやっている内に、お金って勝手に貯まっていくものだから。そこの順番や目的を間違えるとちょっと違うかな。
高木琢也にとってお金とは“笑顔の数”。