2018.10.24
議長内定時の下馬評は「ハト派」
2017年11月初旬、イエレンFRB議長の後任としてジェローム・パウエル氏が第16代FRB議長に2018年2月5日に就任することが発表されました。パウエル氏を選んだトランプ大統領は、「健全な金融政策運営において合意を形成できる人物で、知恵や指導力がある」と高評価し市場に対してこの内定を伝えました。
この時点、2017年末における市場からのパウエル氏の評価はすこぶる高く、
・ハト派もしくは中道穏健派
・イエレン議長の政策を継続
・極めて緩やかな利上げで運営
・バランスシート縮小も極めてゆっくりと進める
・イエレン議長の政策を継続
・極めて緩やかな利上げで運営
・バランスシート縮小も極めてゆっくりと進める
とされ、株式市場にはプラスの人選だとし歓迎ムードがまたたくまに浸透しました。さらに、米国の法人税の大幅減税と同時期であったことと相まって株式市場は好感。急騰の浮かれモードに突入しました。しかし、このような時にこそ正しい情報を把握すべきなのですが、この時の市場はといえば、パウエル氏のほんとうの本性をきちんと判断しようとはしませんでした。
実はこの時にはあまり取り上げられなかった報道がありました。
・トランプ氏とパウエル氏とが最終判断の面接をする際に中銀の独立性の観点から金利の方向性などについては一切話しをしていない
・あくまでトランプ大統領はパウエル氏の過去の経歴やFRBでの経験と自身との相性などで決めた
・あくまでトランプ大統領はパウエル氏の過去の経歴やFRBでの経験と自身との相性などで決めた
というものです。まさかこの程度の簡単な面談で世界で一番金融市場に影響を持つ議長が決まるとは。だれもが信じがたく、受け入れがたい報道でした。そのためでしょうか、市場関係者は自分たちのストーリーを信じたいために(つまりパウエル氏はハト派で株式市場にプラスの人材)、この報道を不要な情報として排除するという完全なるバイアスの掛かった判断をしてしまいました。
そして株式市場の熱狂とともに数ヶ月が過ぎます。
2018年2月の就任後に本領発揮
就任の3日前、2018年2月2日に米国株式市場は急変。ダウ工業株30種平均は約666ドル安となり、2016年6月以来最大の下げを演じました。株式市場の歴史においては新議長が就任して数ヶ月以内にお手並み拝見と言わんばかりの試練が訪れることは恒例ではありますが、今回は少しフライング気味に訪れました。
ちなみに、2017年11月に就任が内定して以降の数ヶ月、市場を取り巻くコンセンサスは、
・世界経済の成長には力強さが見られるため2018年以降も当面株式市場は安泰
・この好景気の中でもインフレ率は依然低くく金融政策は引き続き緩和的
・この好景気の中でもインフレ率は依然低くく金融政策は引き続き緩和的
として、一部ではインフレを問題視する向きがあるなかで「ゴルディロックス(適温相場)」を大満喫していました。「三匹の熊」になぞらえて、株式市場とおかゆは適温が良いといったところでしょうか。
さて、このような環境下で起こった株価の急変。市場関係者は改めて新議長の舵取り手腕に注目し就任を迎えました。そして、議長の本当のスタンスが明確になる、初めての米議会下院の金融サービス委員会における議会証言が2月27日に開催されました。誰もが彼の発言に注目していましたが、結果は予想よりあきらかにタカ派(景気への配慮よりインフレに対して戦うインフレファイター)でした。この日を堺にパウエル議長はややタカ派であると市場は認識をするようになりました。
この議会証言内におけるパウエル議長のタカ派的な主な発言は以下の通り。
・このところのボラティリティーは懸念していない
・短期的な株式相場の動向はFRBがとりわけ集中するものではない
・2%のインフレ目標は市場が予想するよりも早く達成できる見通しだ
・短期的な株式相場の動向はFRBがとりわけ集中するものではない
・2%のインフレ目標は市場が予想するよりも早く達成できる見通しだ
この発言で、
・バーナンキやイエレン元議長のように株式市場の動向に注視するとは限らない
・市場がまだ織り込んでいない利上げに対する意識が強い
・バーナンキやイエレン元議長のように株式市場の動向に注視するとは限らない
・市場がまだ織り込んでいない利上げに対する意識が強い
と市場は判断し株式市場には軽いショックが走りました。その結界、3月から4月上旬の約1ヶ月で10%近い株安を招くことになりました。
2019年もパウエル議長はタカ派なのか
このようにパウエル議長が株式市場に登場して約1年。タカ派としての地位を着々と歩んでいますが、2019年の同じ様にこの方針を維持するのでしょうか。
私は、パウエル議長の心の内を図るには、米国の11月CPIの発表とその数日後のFOMCに注目しています。最近の米国のCPI、つまり消費者物価指数は、2%〜3%のレンジにおさまっており物価の上昇は緩やかに継続しています。もともとインフレに対して強い関心を持つパウエル議長ですが、米中貿易戦争が加熱化しているここ数ヶ月は神経質に物価上昇を確認しているはずです。その結果を受けてどのように政策判断を行うのか、すごく興味があります。
12月中旬に発表予定の11月CPIの結果が3%近辺になれば、12月18日・19日開催予定のFOMCでは大方の予定通り利上げがおこなわれるのではないかと思われています。この判断により、パウエル議長の2019年の方針がタカ派であるかどうかという判断は残念ながら出来ませんが、一方で、トランプ大統領には屈しないセントラルバンカーとして決意が確認できるはずです。つまり、2019年も政府の要望よりも中央銀行としての正しい判断を優先し貫くこというメッセージを市場に発信することになります。
一方、CPIの結果が3%近辺であったにもかかわらず利上げを見送った場合、市場はかなり驚きの反応をするのはないかと思います。それは、利上げの見送り理由が、1)トランプ政権への忖度、2)インフレより株価動向への配慮、と思われるからです。つまり、2019年はタカ派ではなく中道穏健派として政策運営を行うと市場に対してメッセージを発信することになります。
このよう
に12月のCPIとFOMCにて2019年のパウエル議長のメッセージ、つまり「どんな顔」で運営するかを知ることができます。投資家にとっては少し早めのクリスマスプレゼントになるかもしれません。2019年の大きな方向性を示す可能性がある大きなイベント、注目です。
に12月のCPIとFOMCにて2019年のパウエル議長のメッセージ、つまり「どんな顔」で運営するかを知ることができます。投資家にとっては少し早めのクリスマスプレゼントになるかもしれません。2019年の大きな方向性を示す可能性がある大きなイベント、注目です。