お金の教養STAGEを高める方法~『お金原論』[第14回]〜

「お金原論」という新しい学問
「お金」とは何か ── 。このシンプルな命題に、現代の視点から向き合おうというのが『お金原論』という新しい学問だ。現代において、私たちの生活とお金とは一蓮托生だ。お金の悩みから解放され、自由な時間を産み出し、心に描く夢のライフスタイルを実現したい。そんなあなたへ。
2018.01.30

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『お金原論』という本の命題は、「お金とは何か」ということ。
「お金」という軸を通じて自分自身をニュートラルに見ることができれば、人生をもっともっと楽しめるようになるだろう。
これから毎回、『お金原論』の中身を少しずつ伝えていく。すべてが賛同を得られるものであるという確信はない。しかし、生活や人生と切っても切り離せない「お金」というものについて、1人でも多くの人に「お金とは何か」という議論に加わっていただければ幸いである。

お金の教養STAGEを高める方法

「使い方」を例にとると、STAGE1では借金をしないと生活が回らないのに対し、STAGE5では、人の成長や文化の継承などにお金を使っている。
「お金の教養STAGEチェックリスト」を見る、STAGE1とSTAGE5では、天と地ほどの違いがあることがわかる。
「稼ぎ方」を例にとると、STAGE1では目の前の生活のために働いているのに対し、STAGE5では、少しの時間で多くの収入を得る仕組みを持つことができている。
こうして見るとずいぶん違うが、今はSTAGE5の人も、最初からSTAGE5だったわけではない。多くの人が、以前はSTAGE2だったであろうし、場合によってはSTAGE1だったという人もいるだろう。
お金の教養STAGEが上がると、お金の使い方や増やし方が上手になり、お金が貯まる。それだけではない。自分自身の価値を活かした働き方ができるようになり、より時間にゆとりが生まれる。自分の興味を活かした資産運用ができるようになり、それがストック収入に変化していく。より価値あるものにお金を使うことで、新しい経験や出会いに結びついていく。
こうした変化がシナジー効果を生み、これまでの人生の延長上にはなかった多くの新しい選択肢と出会うことができるようになるのだ。
イチロー選手にしても、最初から世界で通用する選手だったわけではない。1つ1つの行動を積み重ねて、1つずつ段階を上げてきたはずだ。あなたが現在、何かしらお金の悩みや不安を抱えているのであれば、まずは1つ、STAGEを上げてみよう。あなたの想像以上に、見える世界が変わるのを実感できるはずだ。まずは、めざすべきSTAGEを決めて、そこに向かって1つずつSTAGEを上げていこう。
めざすべきSTAGEは、人によってそれぞれだ。「STAGE3まで行けば、十分に幸せ」という人もいれば、「一度きりの人生だから、行けるところまで高みをめざしたい」という人もいるだろう。何も、すべての人がSTAGE5を目標にする必要はない。自分の価値観、人生観と対峙したうえで、めざすべきSTAGEと、何年後にそれを実現させたいのかを考えたい。あとは、このチェックリストがあなたの道標になってくれる。

STAGEに見合った行動をとる

繰り返しになるが、お金の教養とは、私がこれまで出会い、時間を共にした多くの経済的、心理的な自由を得た人々から、その価値観や成長の軌跡の共通項を発見してまとめた、普遍的な原理原則だ。そして、長い歳月をかけて、そこに向かうための方法論をロジックとして完成させたのがこの「お金の教養STAGE」という概念フレームワークだ。
この概念フレームワークの潜在能力を引き出していくうえで鍵を握るのが、「バランス」だ。
お金の教養STAGEを高めるためには、そのSTAGEに見合った行動をとることが重要になる。なぜなら、STAGEに見合っていない行動をとると、ズレや違和感を生み、結果として信用が高まらないからだ。
先ほど、一流のプロスポーツ選手がポルシェに乗っているのはそれほど違和感がないが、社会人になりたての20代の若者が同じポルシェに乗っていたら金銭感覚に問題があるように映ってしまうと述べた。
では、反対に一流のプロスポーツ選手が、軽自動車に乗っていたらどうだろうか。100円ショップの例と同様に、「この人はケチなのでは?」という目で世の中から見られ、結果として信用が高まりにくい。信用が高まらないと、長期的に高い収入を維持することは難しい。「軽自動車に乗る」という行為そのものは何のルール違反をしているわけでもないのに、だ。
たとえば、「稼ぎ方」「増やし方」がSTAGE5の人が、食事の際に、友人や後輩に絶対にご馳走せずに毎回割り勘での支払いを要求していたりしたら、非常にバランスが悪いと感じるだろう。この行為自体、法を犯しているわけでもないし、本来は非難される理由などどこにもない。しかし、本人が正しいことをしていると思っていたとしても、そのバランスの悪さゆえに、周りからの信用が高まりにくい。
信用を築かずに得たお金は、長期的には遠ざかっていってしまう。一時的には「稼ぎ方」「増やし方」がSTAGE
5まで到達したとしても、他の要素のSTAGEが低いことによって信用が中途半端にしか得られず、安定してSTAGE5にいることが難しくなってしまうのだ。ゆえに、こうしたお金の教養STAGEを効率良く高めていくためには、できるだけ各要素ごとのSTAGEはバランス良く揃えておいたほうがよい。
ビジネスにおいて融資を受けるときにも、信用があるほどお金は借りやすい。ここでの信用には、いわゆる与信としての経済的信用のみならず、人脈や交友関係といった人間的信用も大きく影響する。
アメリカのあるウェブサイトでは、世界の著名投資家がいつ、誰に、いくらの投資をしたのかという情報が蓄積、公開されている。そして、投資を受けたという実績が、さらなる投資はもちろん、金融機関から融資を受けられる可能性を生んでいく。これらの資金調達によってビジネスはますますより大きくなっていく。「どれだけ人から信用されているか」という事実が、ダイレクトにビジネス、つまり「稼ぎ方」に結びついていくわかりやすい事例といえるだろう。
人生の重要な局面では信用が大きく影響する。高いSTAGEになればなるほど、その影響度は大きくなる。より信用を高めるためにも、STAGEに見合った行動をとるということはとても重要なのだ。
また、お金のトラブルに巻き込まれないためにも、STAGEの各要素をバランス良く揃えて上げていく、ということは不可欠だ。
私が知っている限りでも、一流企業に勤めていながら多重債務を抱えている人は意外と多い。また、儲け話に乗ってまとまった資金を投資したらそのまま戻ってこなかった、不動産会社に勧められた投資用マンションを購入したら空室が続いて困っている、といった不穏な話も多い。STAGEの各要素がアンバランスであることは、とかくトラブルを招くのだ。
「稼ぎ方」のSTAGEが高くても、「使い方」のSTAGEが低いと、収入以上にお金を使ってしまい、クレジットカードの返済に追われたり、キャッシングせざるをえない状況に陥ってしまったりする。「増やし方」のSTAGEが低いと、FXや先物取引、不動産投資などで過度なリスクをとってしまい、大きな損失を出してしまうこともある。「維持管理」のSTAGEが低いと、友人に頼まれてお金を貸し、それが原因で人間関係が壊れ、事件に発展することもある。
こうしたトラブルは、全体的なSTAGEが高い人ほど注意が必要だ。なぜなら、扱うお金が大きいために、トラブルになったときの金額も大きくなりやすい。加えて、お金があればあるほど、それを狙う人が寄ってきやすいからだ。
人間的な信用が高くても、お金の教養が低かったり、アンバランスだったりするとトラブルに巻き込まれる。お金のトラブルに巻き込まれると、結果的に信用度が下がり、自分の価値が下がってしまう。
(『お金原論』206〜208ページより転載)

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泉 正人

ファイナンシャルアカデミーグループ代表一般社団法人金融学習協会理事長

日本初の商標登録サイトを立ち上げた後、自らの経験から金融経済教育の必要性を感じ、2002年にファイナンシャルアカデミーを創立、代表に就任。身近な生活のお金から、会計、経済、資産運用に至るまで、独自の体系的なカリキュラムを構築。東京・大阪・ニューヨークの3つの学校運営を行い、「お金の教養」を伝えることを通じ、より多くの人に真に豊かでゆとりのある人生を送ってもらうための金融経済教育の定着をめざしている。『お金の教養』(大和書房)、『仕組み仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書は30冊累計130万部を超え、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。一般社団法人金融学習協会理事長。

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