節約と引き換えに失っている大切なもの〜『お金原論』[第7回]〜

「お金」とは何か ── 。このシンプルな命題に、現代の視点から向き合おうというのが『お金原論』という新しい学問だ。現代において、私たちの生活とお金とは一蓮托生だ。お金の悩みから解放され、自由な時間を産み出し、心に描く夢のライフスタイルを実現したい。そんなあなたへ。
2017.9.26
『お金原論』という本の命題は、「お金とは何か」ということ。
「お金」という軸を通じて自分自身をニュートラルに見ることができれば、人生をもっともっと楽しめるようになるだろう。
これから毎回、『お金原論』の中身を少しずつ伝えていく。すべてが賛同を得られるものであるという確信はない。しかし、生活や人生と切っても切り離せない「お金」というものについて、1人でも多くの人に「お金とは何か」という議論に加わっていただければ幸いである。

節約と引き換えに失っている大切なもの

コツコツと節約をすることと引き換えに、実は私たちは大切なものを失っている。
それは、「経験」だ。
支出を見るとその人の思考と行動がわかる、ということは前にも述べた。言い換えると、支出を減らすということは、思考や行動を制限するということでもある。
自分の視野を広げてくれるであろう海外旅行に行かず、お金を貯めるという行動。自宅や会社からほとんど動かずに生活をすることで、支出を抑えるという行動。これは、たくさんのことを経験し、自分の器を広げるという「チャンス」を自ら捨てる行動でもある。こうしたチャンスを犠牲にすることと引き換えに、貯蓄をしているということなのだ。
夫たちの小遣いもその象徴だ。
新生銀行の調査によれば、会社員男性の1カ月の小遣いの平均額(2014年)は3万9,572円となっている。ここから拠出しなければならないものの内訳はそれぞれの家庭で異なるだろうが、いずれにしても自由になる金額はかなり少ないのが実態だ。
近年、女性の社会進出が急速に進んできてはいるが、多くの家庭では、依然として夫が稼ぎ頭だ。「マミー・トラック」という言葉が一部で社会問題化していることからもわかるように、たとえ妻が能力の高い女性であったとしても、結婚・出産を経て男性と同水準の収入を得続けるということは容易ではないのが現実だろう。
あなたが企業の経営者だったとしたら、最も大きな売上げや利益をもたらしている事業に対して、さらなる投資をせずに経費の節約を図るという判断を下すだろうか。おそらく、そのような判断を下したら、その事業の拡大は望めず、企業全体が先細りしていく一方だろう。
小遣いを制限するということは、家庭内で最も大きな売上げや利益をもたらす事業に対
して、投資をせずに経費の節約を行っているということにほかならないのだ。
小遣いを制限することによって、経験をするというチャンスが犠牲になれば、器は広がりにくい。器が広がらなければ当然のこと、収入も劇的には上がらないだろう。そればかりか、IT化、グローバル化が進む時勢の中にあっては、成長せずその場に留まるということは相対的な下降さえ意味する。
収入が上がらないとなったら、貯蓄を増やすために残された答えは、「さらなる節約」しかない。よって、「お金を使うことは悪」とばかりに、さらにモノを買うことを抑制し、行動範囲を抑制する。こうして、お金によってさまざまな制限を受ける、悪いスパイラルの人生ができあがっていくのである。
こうした悪いスパイラルに陥らないためには、たとえ将来が不安でも、貯蓄一辺倒ではなく、意識的に「お金を使う」ということが不可欠だ。
お金を使い、経験を積み、思考と行動を広げる。それも、バブル当時のような自分や生活を見栄で着飾るための消費ではなく、クリエイティブな経験や生活を快適にするためのサービス、自分を磨くための時間に投資をする。こうした積み上げにより、器が広がり、収入が上がり、自分らしいライフスタイルが構築でき、真に豊かな人生へとつながっていく。
(『お金原論』51〜53ページより転載)

泉 正人

ファイナンシャルアカデミーグループ代表、一般社団法人金融学習協会理事長

日本初の商標登録サイトを立ち上げた後、自らの経験から金融経済教育の必要性を感じ、2002年にファイナンシャルアカデミーを創立、代表に就任。身近な生活のお金から、会計、経済、資産運用に至るまで、独自の体系的なカリキュラムを構築。東京・大阪・ニューヨークの3つの学校運営を行い、「お金の教養」を伝えることを通じ、より多くの人に真に豊かでゆとりのある人生を送ってもらうための金融経済教育の定着をめざしている。『お金の教養』(大和書房)、『仕組み仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書は30冊累計130万部を超え、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。一般社団法人金融学習協会理事長。

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