ポジティブ・インパクト・ファイナンスとは
「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」は直訳すると「積極的に良い影響を及ぼす投融資」ですが、何に影響を及ぼすのかといえば、それは人間の社会や経済や環境です。
国連は社会問題。経済問題の解決、地球環境問題の解決のために、2015年9月に「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」を定めました。これは「持続可能(サスティナブル/Sustainable)な世界」を実現するために、貧困をなくそう、気候変動に具体的な対策をなど「17のゴール」と「169のターゲット」で成り立っています。2030年を目標年に、その達成のためにアメリカや日本のような先進国も、中国やインドのような新興国も、発展途上国も共に努力をしようと提唱しています。
国連機関の国連環境計画(UNEP)は1992年、「国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)」を設立し、銀行、保険、証券会社など世界の金融企業とパートナーシップを結びました。そのUNEP FIはSDGs制定翌月の2015年10月に「ポジティブ・インパクト宣言」を出し、SDGsを達成する目的で2017年1月、「ポジティブ・インパクト・ファイナンス原則(PPIF:The Principles For Positive Impact Finance)」を制定しました。
PPIFは「定義」「フレームワーク」「透明性」「アセスメント」の4つの原則で成り立っていますが、最初の「定義」でポジティブ・インパクト・ファイナンスを「SDGsの達成に向け社会、環境、経済のいずれか一つ以上に貢献するとともに、負のインパクトを特定・緩和する投融資」と定めています。
ポジティブ・インパクト・ファイナンスは、この原則に基づいて行われます。
PIF第1号は日本の三井住友信託銀行が実施
金融機関は三井住友信託銀行、形態は融資(貸付)で、融資先は食用油などを生産する不二製油グループ本社でした。
同社は、東南アジアでアブラヤシの実からつくるパーム油を輸入して日本の工場で食用油を生産し、スーパーやコンビニや食料品店を通じて一般消費者に販売しています。
「サステナブル調達」として、アブラヤシの栽培やパーム油の生産で児童労働や違法な労働をさせていないか(人権)、廃棄物でその国の水や空気などの環境を汚していないか(環境)、調達先をチェックしました。
「生産活動における環境負荷低減」として、水や空気を汚していないか、廃棄物削減に取り組んでいるか、気候変動の原因の化石燃料の使用を抑えているか、チェックしました。
「ESG投資」から、その進化形のPIFへ
「ESG」は、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を指す言葉です。この3分野を重視する企業、事業に投資するのが「ESG投資」で、年金資金など世界の公的資金が投資先選びの基準としています。
ポジティブ・インパクト・ファイナンスは、そのESG投資の進化形と言えます。国連のSDGsに基づいて適用範囲は大きくひろがりましたが、「原則」が制定されて運用に取り組みやすくなりました。近い将来、ESG投資はポジティブ・インパクト・ファイナンスに置き換わっていくかもしれません。
参考URL:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html
https://www.unepfi.org/regions/asia-pacific/japan/aboutunepfi/
https://pfa21.jp/wp2018/wp-content/uploads/h30yotai1-chiiki3_2Principles-for-PIF_J.pdf
https://sustainablejapan.jp/2017/02/16/principles-for-positive-impact-finance/25587
https://www.smtb.jp/csr/news/archive/pdf/20190328.pdf