2017年12月21日 更新

〈大江千里〉すべてを捨ててニューヨークへ。夢の原点に戻ることで次のステージに辿り着いた

「お金とは、トランプみたいなもの。(大江千里)」

■アングルを変えることで見えてくることがある

STAGE編集部:まだまだ大江さんの人生は変化していきそうな予感がします。

僕は、変化っていうのは、アングルだと思うんですよ。だから別に脱サラして蕎麦屋になることもなければ、いきなりジャズを目指すこともないと思うんです。

同じ場所でも、目線というか、アングルを変えることによって、自分の人生はハイライトされたり、光と影の分量のバランスを変えたりすることができる。ステージって、まさにそうなんです。スポットライトを動かさなくても、月明かりと定位置のバランスで、ハイライトをすることはいくらでもできます。
スポットライトを当てる場所、アングルを変えることには、日頃から意識してアンテナを張っています。ホリゾントにすればこう、逆光にすればこうとか。今ここにくるまでに7人の有名なホームレスの人たちが犬を連れていて、「ハーイ」って挨拶して来ましたけど、彼らのことを誰も馬鹿にはしてないですしね。いろんな人生の見方があるから。

逆光にして、代役を立ててちょっとステージから退いて、1ヵ月オフを取っても誰も責める理由なんてないし。1日30食しかせいろ蕎麦を出さない、31食目から売り切れっていう小さい店だってありだし、絶対に東京ドームを満杯にするんだ、血尿出てでもやるんだって芸能界に骨埋めるっていうのもありだし。何が上でも下でもないし、競争でもない。単に、自分の人生をどうレイアウトするかっていうことだと思うんです。

STAGE編集部:自分の人生をどうレイアウトするか。

自分の人生のステージ(舞台)は自分が主役ですから。舞台に上がったら自分が主人公なんです。ステージの袖にはいつもステージフライト(舞台恐怖症)があるけれど、でも舞台に上がったら自分が主人公なんです。

あのマーヴィン・ゲイだって、「What’s going on」って舞台に出ていくときに、震えて「僕帰りたい」って言うんです。そうしたら、マネージャーがボンって背中押して、出ていくと、あの歌になる。だから、公演日程や一日の上演回数を決めて、その自分の舞台をどう演出するかを決めて、どういうお客様に観てもらうかを決める。そういう人生のレイアウトを考えていないといけないんですよ。
STAGE編集部:大江さんにとってステージ(舞台)とは。

僕は、舞台が大好きなんです。ステージフライト(舞台恐怖症)は僕の大好きなヒッチコックの映画のタイトルでもあります。もう何万回も経験しているのに、ステージ脇に立っているとドキドキする。お客さんが見える。光と影。出ていかなきゃいけない。「大江千里さんです」っていう声がすると、パッと明るくなって、皆さんのために僕がいる。

お客さんがいないと自分の存在なんて本当にたいしたことないのに、ラッキーなことにたくさんのお客さんがいて、舞台の上だと自分が輝く。お客さんとのやり取りしながら、舞台の上の喜怒哀楽のバランスを支配できる。空間の間口とタッパと奥行き、あの中で最高のフェイクを演じきること、それは大江千里というリアリティかもしれないけれど、全部作ったことなんですよ。でもその作り上げた世界がリアルだと感じられる瞬間を、皆でよってたかって構築した夢の瞬間——それがまさに人生というステージなんです。

ステージが大好きってことは、やっぱり人生が好きだってことなんですね。だから、ステージの光と影が、僕にとって人生の喜怒哀楽の凝縮だと思っています。

千里っていう名前は「サウザンド・ホームタウン」。僕のホームタウンは、故郷で増えていく。「ニューヨークにずっといるんですか」って言われても、次はスペインに行くかもしれないし。60歳になってスペイン語覚えるのもしんどいかもしれないけど(笑)、先のことはわからないですよね。僕だって満身創痍で、いつまでピアノが弾けるんだろう、あと何年できるんだろうって感じながら日々を送っていますが、アイシングしながら今日もピアノが弾けるっていう、この幸せ。まだまだ夢はたくさんあります。
「お金とは、トランプみたいなもの。(大江千里)」

ALBUM

Collective Scribble

BOOK

9番目の音を探して ~47歳からのニューヨークジャズ留学~

シンガーソングライター/ジャズピアニスト 大江千里さん

1983年、シンガーソングライターとしてデビュー、2007年末までに45枚のシングルと18枚のオリジナルアルバムを発表。「十人十色」「あいたい」「格好悪いふられ方」「ありがとう」などのシングル曲がヒット。作詞・作曲・編曲家としても、松田聖子・渡辺美里・などのアーティストに数多くの楽曲を提供、プロデュースも手がけている。俳優、テレビ番組の司会、ラジオ番組のパーソナリティー、エッセイ執筆など幅広い分野で活動。2008年以降は日本国内での自身の音楽活動を休業しニューヨークに在住。2012年にジャズピアニストとしてのデビューを果たす。
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