流される力(14)自分の常識と他人の常識は違う

自分の「我」や「未熟なこだわり」を捨て、結果を出している人のアドバイスを素直に聞いてそのまま行動する、これが「流される力」=信託思考です。より多くの人に流されることで、速く成長し、人生の成功を手にできます。泉正人著「流される力」より抜粋。
2019.1.3

自分の常識と他人の常識は違う

僕が以前に実践した「我」を取り払うトレーニング方法があります。
それは、

「自分の常識を疑ってみる」

というものです。
いまでは「我」は捨てたほうがよいという考えをもっていますが、社会に出たころの僕は、少ない経験とない頭で考えた「我」をだれよりも強くもっていました。
「我」というものは、自分のいままでの経験が生み出していることが多いのですが、それが積もり積もって自分の「常識」となっています。
しかし、当たり前かもしれませんが、常識は人によって違います。自分の中の常識は、他人の常識ではありません。
たとえば、日本では食事のとき、お椀は手でもたないと失礼にあたります。しかし、韓国では、お椀をもたずに置いたまま食べるのが礼儀正しいとされます。
日本の常識は、世界の常識ではないといえるでしょう。
このような例もあります。
エレベーターに乗るとき、日本では人が乗り降りしている最中は扉の「開」ボタンをだれかが押していてくれます。そして、乗り降りが終わった瞬間に「閉」ボタンを押すのが常識になっています。日本では、それをやらないと「なんて気がきかない人だろう」と思われてしまうこともあるくらいです。
しかし、アメリカに行ってみると、「開」ボタンも、「閉」ボタンも押しません。エレベータ12扉にセンサーが付いていて、人の乗降中は閉まらないようになっているという構造上の理由もありますが、だれも開閉ボタンに触ることはありません。
以前、僕が中国。上海に行ったときは、さらに驚かされました。人が乗り降りしている最中でも「閉」ボタンを押して、早く扉を閉めようとする人さえいたのです。
また、アメリカの一部の州では、税金を滞納すると、新聞上で名前と住所が公開されます。これは個人情報保護が常識となっている日本では考えにくいことです。
もっと身近な例でいえば、「メールでは失礼だと思ったので、電話をしました」という電話は、人によっては迷惑にあたります。
世代によっても大きく異なるとは思いますが、仕事中や会議中の電話は、まわりの人にまで「迷惑をかけてしまう」「妨害となってしまう」という考え方をする人もいるからです。
このように、ふだんの生活を見るだけでも、自分の常識が世界の常識ではないことがわかります。
自分の常識を主張することによって、あらたな思考を受け入れる扉が閉ざされてしまうので、僕は

「自分の中の常識が世の中のすべてではない」と考えることによって、「自分が正しい」という気持ちを取り払う

ようにしています。
また、過去の小さな成功体験を引きずるのをやめることも、「我」を取り払うために効果的だと思います。
小さくてもなにかに成功して喜びを得ると、そのやり方や考えに執着してしまうことがあります。小さな成功体験にこだわり、成長や挑戦をやめてしまうのはよくありません。
その成功体験は偶然の賜物だったのかもしれませんし、過去には通用しても現在では通用しないかもしれません。

自分が正しいと思っていることは正しくない

思考信託の初めの段階では、自分の常識や考えは抑えておく必要があると、僕は考えています。
これができなければ、トラスティから親身になってなにかを教えてもらえることはないからです。
教える立場になってみるとわかると思いますが、

「我」や自分の考えにとらわれている人には、教えてあげようという気が起きません。

「自分には自分のやり方がある」
「自分は、この分野ではだれにも負ける気がしない」
このように思っている人に対して、なにか助言を与えてあげようと思うでしょうか。
自分が心を開かなければ、トラスティも心を開いてくれるわけがありません。
僕の場合は、むしろ、「自分が正しいと思っていることは正しくない」という前提で、ものごとを見るようにしています。
そうすると、「他人に聞いたほうがいい」「他人のほうが正しい」と思えるようになってきます。

「自分がすべて」という考えを捨てて常識を取り払えば、だれからの意見でも素直に受け入れられる態勢ができ、思考を預けられる相手が見つかる

のではないでしょうか。

泉 正人

ファイナンシャルアカデミーグループ代表、一般社団法人金融学習協会理事長

日本初の商標登録サイトを立ち上げた後、自らの経験から金融経済教育の必要性を感じ、2002年にファイナンシャルアカデミーを創立、代表に就任。身近な生活のお金から、会計、経済、資産運用に至るまで、独自の体系的なカリキュラムを構築。東京・大阪・ニューヨークの3つの学校運営を行い、「お金の教養」を伝えることを通じ、より多くの人に真に豊かでゆとりのある人生を送ってもらうための金融経済教育の定着をめざしている。『お金の教養』(大和書房)、『仕組み仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書は30冊累計130万部を超え、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。一般社団法人金融学習協会理事長。

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