サーバントリーダーシップにはデメリットも?おすすめの使い方は?

「サーバントリーダーシップ」とはリーダーがメンバーへのサポートを積極的に行うことで信頼関係を築き、メンバーに協力してもらいやすい環境を作る「支援型リーダー」のことです。昨今注目されている「サーバントリーダーシップ」ですが、対応を間違えると逆効果にもなります。メリット・デメリットを理解し、有効な対応をするための方法とは?

2019.4.12(2019.11.18更新)

そもそもサーバントリーダーシップとは?

サーバントリーダーシップは部下のサポートを積極的に行い、上長・部下相互の信頼関係を築くことで、Win-Winの関係を目指すリーダーシップのスタイルです。
企業や組織としてのビジョンを示し、部下を信頼し、適宜アドバイスして相手と向き合い、共に目標に向かってゆくイメージです。 サーバント(Servant)とは使用人、召使い、奉仕者などを意味する語ですが、「支援型リーダーシップ」とも言われますね。「意見を言いやすい環境を作る」ことが、サーバントリーダーシップにおける上長の第一の役割です。
また、組織メンバーの力を最大限に発揮できる環境作りに奉仕するリーダーシップスタイル、とも言い換えることができるでしょう。
Servantの語が含まれるため、部下の主張を何でも聞き入れる上長、部下に徹底的に奉仕する上長、などと誤解されている方もいますが、それらの解釈は誤りです。
上長が奉仕する対象は、飽く迄も組織であり、この組織の構成要因には部下も含む、という解釈が妥当です。 これに対して、旧来型のリーダーシップが、いわゆる「支配型リーダーシップ」です。上長から一方的に命令・指示を与えて動かすスタイルです。
「結論だけを命令する」軍隊式であり、指揮官(上長)が先頭に立って、組織を目標に向けガンガン引っ張るイメージですね。脱落しそうな部下がいると、「オレを信じろ!気合いを入れろ!」と尻を蹴り上げるタイプの鬼軍曹(上長)が典型です。
「黙ってオレに付いて来い!」という、トップダウン方式のリーダーシップです。

サーバントリーダーシップのメリット・デメリットとは?

サーバントリーダーシップのメリット・デメリットを理解しておきましょう。 まず、大きなメリットを2つ紹介します。

メリット1:決定的に間違った決断を下すリスクが減る

メンバーが自由に意見交換しやすくなり、最善のアイデアを採用できるため、決定的に間違った決断を下すリスクが減ること。上長の知見にないことも、部下の知見でカバーしやすくなります。

メリット2:メンバーそれぞれが当事者意識を持ち成長できる

メンバーが主体的に思考するクセが付き、当事者意識を持ちやすくなります。組織メンバーが自ら考え、自ら動くことで成長できることにつながります。
次に、サーバントリーダーシップの主なデメリットを2つ紹介します。

デメリット1:組織の方針を決定するのに時間がかかる

部下の意見と、上長の意見とが異なる場合、意見を摺り合わせ、組織の方向性を調整してゆくのに時間(工数)がかかります。

デメリット2:メンバーによっては環境についていけない

自ら気付き、思考することが不得手な組織メンバーや、知識・経験値が低い組織メンバーは付いて来れず、脱落してしまうこともあります。 サーバントリーダーシップは万能ではないため、自ずと良い局面と、そうでない局面があることになりますね。
ただし、時代背景という切り口では、現在は多様な商品・サービスがマーケットに溢れ、消費者ニーズも多様化し、社会情勢も複雑化しています。 考慮すべき事柄、選択肢が多く、上長自身に知見がない、経験値がない状況もあるでしょう。このような状況下では、トップダウン方式の「支配型リーダーシップ」は無力であり、「サーバントリーダーシップ」を活用し、組織メンバーの様々な知見や意見を吸い上げて判断することが有効になります。逆に、昭和の高度成長期であれば、「支配型リーダーシップ」が有効であったことでしょう。

サーバントリーダーシップのデメリットを理解して使い分ける

結論としては、現在のリーダーには、局面・状況を見極めて「支配型リーダーシップ」・「サーバントリーダーシップ」を有効に使い分けるスキルが求められることになります。 それぞれのメリット・デメリットをリーダーは認識し、この使い分けを局面・状況に応じて行うことで、リーダーは組織を目標に向かわせることができます。
難しいかもしれませんが、これがリーダーとしての醍醐味を感じるところでもあり、リーダーとして自身の成長を実感できるところでもあるのではないでしょうか。
例えば、ある程度の時間的な余裕がある状況で、かつ組織メンバーの知見・経験値があるチームであれば、サーバントリーダーシップが有効なケースは多いでしょう。 しかし、危機の状況に陥っている時、時間的な余裕がない状況や、組織メンバーの知見・経験値が低い場合は、サーバントリーダーシップのデメリットが当てはまります。
旧来の「支配型リーダーシップ」の全てがデメリットであるということもなく、現在のビジネスシーンでも依然としてメリットはあります。 例えば、組織メンバー全般の社会人経験が少なく、ビジネスの知見に乏しい場合や、既に方向性が確立しているプロジェクトが走り出しており、リーダーとしての考えや想いを一気に部下に伝えておきたい場合などが挙げられます。
また、マネジメントにおいて大きな危機に直面しており、完璧ではなくても仕事を終わらせることが優先である場合であれば、旧来の「支配型リーダーシップ」が依然として有効です。
Kenneth S

Kenneth S

総合商社のIT戦略担当からIT系ベンチャー企業の経営補佐などを経て、現在は海外在住の個人投資業。時折、物書きもしている。
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