値上げから読み解く景気。日本の景気は回復しているの、してないの?

「額歴」がぐんぐん上がる経済ホットレ
メディア記事だけを見ていると日本の景気は回復しているようです。GDPの7期連続プラス、日経平均16連騰とか。でも表面の数字だけ見て判断していると将来の見通しを誤ります。常に本質を考えるようにしましょう。
2017.11.27

焼き鳥チェーンが値上げしたら……

以前から低価格を維持して、「すごい経営力だっ」と感心していた焼き鳥チェーン店がついに値上げを行いました。(以前にテレビ取材で「低価格を維持するコツ」みたいなものを社長自ら話しているのを見て感動した記憶がありますが、なんと、そのインタビューのときには既に値上げを考えていたとのこと……。うっっ、少しだけショックで拍子抜けしました。)それはさておき、28年間維持した全品280円の低価格を298円に値上げし、その理由は人件費や原材料費の上昇と報道されています。
このニュースが発表になった時は、「ついにデフレからの脱却」「価格転嫁ができる時代に」と大きく取り上げられ、そして持ち上げられました。その結果、当然ながら株価も好反応で発表時は大きく上昇をしました、が、あまりにもメディアで多く取り上げられことで広く値上げが周知され、「来客は7%減り、売上は約4%も減少」と残念な結果になりました。これでは、値上げ分の6.4%を相殺する勢いです。経済全体を考えると、未だに値上げを受け入れられる経済基盤がないことが残念でなりません。
一方でこのニュースをみて、「ややっ、どうやら個人の財布の紐は未だに硬そうだ」と直感的に考えました。しかし、このような値上げによる売上減の話が出ても値上げのニュースが続いています。牛丼、宅配便、おにぎり、米などなど。これからも年末に向けて値上げのニュースは続きそうですが、個人消費が落ち込むのではないかと心配になってきました。

なぜこの時期に値上げなのか

そこで色々と調べてみたところ、人件費、採用コストの高騰により値上げを行わなければいけないという背景は事実のようでした。これは、デフレから脱出するためには致し方ないことかもしれません。しかし、実はこの人件費の高騰による値上げ以外にも理由があることがわかりました。それは、2019年10月に予定されている消費増税と関係がありました。
前回の消費増税は2014年4月。消費税が引き上げられた後、消費が大きく落ち込み景気は腰折れしたのですが、それは、消費税が上昇した分だけではなく便乗した値上げも理由でした。光熱費、衣服費、生鮮食品などは明らかに値上げされ消費者は極端に消費を渋りました。そうして景気は腰折れしたのです。

さて、今回はこのような経験を踏まえ、企業としては、

1)「便乗値上げ」と誤解されないように適切なタイミングで値上げを行う。
2)1年以上前に値上げを行うことで2019年の駆け込み需要に備える。
3)できるだけ横並びで値上げを行うことで「孤立」を避ける。

このような経営判断を行うでしょう。これからも年末に向けて値上げのニュースは増えそうですね。

それもで景気がよく見えるが

では、その値上げに家計は耐えられるのでしょうか? GDPや設備投資を見ているだけだと景気が良さそうなので耐えられそうです。しかし、焼き鳥のケースを見ても分かるように家計は拒絶気味です。皆さんの実感はどうでしょうか。「厳しい」という意見が多いのではないかと思います。
それもそのはず、実際に総務省統計局が発表している「二人以上の世帯における平均消費支出」によると2017年8月は平均280,320円。この数字は結構厳しいもので……
2012年:平均286,169円
2013年:平均290,454円
2014年:平均291,194円
2015年:平均287,373円
2016年:平均282,188円
この数字は各年の二人以上の世帯の平均支出額です。このように2012年以降、個人はお金を使うようになったかといえばNO。増えるどころか徐々に減っています。つまり、焼き鳥の値上がりは「ボディーブロー」のように効いてくるといえそうです。しかし、企業としては値上げを「せざるを得ない」という状況であることも事実です。人件費は上昇し、しかも人手不足です。どちらも厳しい状況と言えます。
しかし、標題の「景気はいいのか?」という点に焦点を絞ると、「今は悪くない。でも今後は個人消費が落ち込み楽観視できない」とういう答えになりそうです。GDPの約60%は個人消費により占められています。この一連の値上げにより個人消費は落ち込むとすれば、いずれ「GDP前年比マイナス。値上げによる個人消費意欲に影」などという見出しが紙面を賑わしそうです。
ニュースは一段踏み込んで読み込むことで初めて有益な情報になります。企業や人の行動には必ず理由があります。踏み込んで読むコツは、その背景にある「理由」を探すことです。

渋谷 豊

ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所(FAG総研) 代表、ファイナンシャルアカデミー取締役

シティバンク、ソシエテ・ジェネラルのプライベートバンク部門で約13年に渡り富裕層向けサービスを経験し、独立系の資産
運用会社で約2年間、資産運用業務に携わる。現在は、ファイナンシャルアカデミーで取締役を務める傍ら、富裕層向けサービスと海外勤務の経験などを活かした、グルーバル経済に関する分析・情報の発信や様々なコンサルティング・アドバイスを行っている。慶応義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。
ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所 http://fagri.jp/
ファイナンシャルアカデミー http://www.f-academy.jp/

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