2019年5月30日 更新

【夏の和歌】心に癒しを。爽やかな初夏に詠みたい万葉集

日本では古くから四季折々の情景を和歌で表現してきました。日本最古の和歌集として知られる「万葉集」は、身分の上下関係なく約4,500首以上もの歌が編纂されています。なかでも今回は、「夏の歌」をピックアップしてお届けします。

牡鹿の角は春に生え変わるため、初夏はまだまだ短い角です。牡鹿の角を「短い時間」と比喩しているところに大きな特徴が見られます。

柿本人麻呂は飛鳥時代の歌人として著名ですが、妻への思いを詠んだ歌も数多く残っています。今でいうところの「愛妻家」だったのでしょうか。人麻呂については詳細な資料があまり残っておらず、その出自は不明な部分も多いです。しかし奥様に対する思いは、束の間さえも忘れることのない深いものだったのがよくわかる歌といえるでしょう。

今も昔も夏の季節には「ウナギ」??

「石麻呂(いはまろ)に 吾(あれ)物申す 夏痩に よしといふものそ 鰻(むなぎ)取り食(め)せ」 3853

(私、石麻呂さんに申し上げます。夏痩せにいいといいますので、鰻をとって召し上がってください。)
作者の大伴家持は万葉集の選者といわれ、万葉集のなかの実に473首も占めています。この歌は少し趣向の変わっているのがポイント。現代では土用丑の日など、鰻を食べる習慣が定着しているものの、これは江戸時代に入ってからのことです。

しかし、万葉の歌では「夏痩せ」に鰻がいいとされ、当時も夏に鰻を食べていたことがうかがえます。歌のなかの石麻呂さんは、大伴家持の友人、吉田連老(よしだの・むらじ・おゆ)のこと。ユーモアに富んだ歌ですね。

参照:高岡市万葉歴史館https://www.manreki.com/yakamochi/

山部赤人が詠んだ望郷の傑作

「島隠り 吾が榜(こ)ぎ来れば 羨(とも)しかも 倭(やまと)へ上る 真熊野の船」944

(波を避けて島々の間をこいでくると、熊野の船が大和のほうへ上っていく。羨ましいことよ。)
作者の山部赤人は奈良時代の歌人で、万葉集にも長短含めて50首が選ばれています。この歌は、行幸などの事情で都から船をこいでくると、真熊野の船(熊野地方でつくられた、当時良船とされた船)が都へ上がっていくのを羨ましがっている姿を表現したものです。

望郷の思いがあふれる一首として知られています。

古きよき日本の夏をイメージして詠んでみて

和歌というと、普段の生活にはあまりなじみがないという人もいるかもしれません。しかし、ちょっとしたリフレッシュの時間に、情緒あふれる日本の四季をイメージして詠んでみてはいかがでしょうか?

暑い夏も、風情ある心地よい季節に感じられることでしょう。

【記事全般】

参照:池澤夏樹,『日本文学全集02』河出書房,2015年より、折口信夫『口訳万葉集』
参照:万葉集 https://ja.wikisource.org/wiki/%E4%B8%87%E8%91%89%E9%9B%86
参照:万葉集 (鹿持雅澄訓訂) https://ja.wikisource.org/wiki/%E4%B8%87%E8%91%89%E9%9B%86_(%E9%B9%BF%E6%8C%81%E9%9B%85%E6%BE%84%E8%A8%93%E8%A8%82) 
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湊音 湊音
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