先入観を脱ぎ捨てる〜『お金原論』[第8回]〜

「お金」とは何か ── 。このシンプルな命題に、現代の視点から向き合おうというのが『お金原論』という新しい学問だ。現代において、私たちの生活とお金とは一蓮托生だ。お金の悩みから解放され、自由な時間を産み出し、心に描く夢のライフスタイルを実現したい。そんなあなたへ。

2017.10.10
『お金原論』という本の命題は、「お金とは何か」ということ。
「お金」という軸を通じて自分自身をニュートラルに見ることができれば、人生をもっともっと楽しめるようになるだろう。
これから毎回、『お金原論』の中身を少しずつ伝えていく。すべてが賛同を得られるものであるという確信はない。しかし、生活や人生と切っても切り離せない「お金」というものについて、1人でも多くの人に「お金とは何か」という議論に加わっていただければ幸いである。

先入観を脱ぎ捨てる

お金を使うことを真に豊かな人生へとつなげていくためには、知らず知らずのうちに染みついてしまった先入観をいったんすべて脱ぎ捨てる勇気も必要だ。
たとえば、あなたの中にこうした価値観はないだろうか。
●大企業に就職すれば安定した収入が得られる
●節約は美徳だ
●額に汗して働いたお金は美しい
●子どもが生まれたら学資保険に加入すべき
●マイホームを買ってこそ一人前
●資産運用はギャンブルのようなもの
●住宅ローン以外の借金はしないほうがいい
●お金の預け先は預貯金が一番安全
●生命保険には入らなければいけない
●年収が上がらなければお金が貯められない
もし、当てはまるものがあったとしたら、自分に問うてみよう。その価値観はどこからやって来たものだろうか。
それが、自らの経験に基づくものであれば、それでもよい。しかし、子どもの頃の家庭環境や、両親からの教えによってできあがった価値観であるならば、一度は思い切って脱ぎ捨ててみることが必要だ。
なぜなら、誰もが体感しているように、世界は驚くべきスピードで変化をしている。
「サザエさん」の世界観との違いをイメージするとかりやすいかもしれない。20〜30年前は、スマートフォンはおろか、携帯電話も普及していなければ、インターネットもない。当然、ネットショッピングもネット通販も、ネットバンキングもない。海外旅行に行けるのは一部の裕福な家庭で、英語を話せる人などごくわずか。持ち家で3世代同居が当たり前。ネット生保もネット証券もなく、個人が資産運用をするにはまとまったお金が必要だった時代である。十年一昔というが、その何倍もの隔世の感があるのは否めないだろう。
両親の教えがすべて無意味とはいわないが、ことお金の使い方に関して言えば、残念ながら昔の常識は今の非常識といってよい。こうした先入観をそのまま受け継いでしまうと、図らずも人生にブレーキがかかってしまう結果になる場合が多いのだ。
たとえば、本当に「住宅ローン以外の借金はしないほうがいい」のだろうか。
「借金は良くない」というすり込みがあると、どんな借金もしないほうがよいと考えてしまうが、借金にもいろいろある。
不動産で資産運用をしようと思ったとき、現金だけでは購入できる収益物件が限られて
しまう。しかし、金融機関から融資を受けることでレバレッジを効かせれば、自分が出せる資金の何倍もの収益物件を買うことができる。物件にもよりけりだが、しっかりと勉強してから臨めば、何十年にわたって安定した収入を得る仕組みを構築することができる。それこそ、コツコツと貯蓄をするよりもはるかに効率良く、老後の生活資金の準備をすることが可能だ。
翻って、住宅ローンはどうだろうか。
持ち家神話が浸透している日本では、住宅ローンを組むことに対する抵抗感がきわめて薄い。そのため、借金という言葉には悪いイメージを持っていても、こと住宅ローンに関しては例外、と思っている人が少なくない。「マイホームは資産になるから」と、当然のごとく30年、35年といった長期で住宅ローンを組む。
しかし、である。数千万円の住宅ローンを組んで購入したその不動産は、収益を生まない。つまり、返済の原資は、自分たちが働いて得る収入だ。買ったが最後、30年、35年と、毎月の給料から返済を続けなければならないのだ。
万が一のことがあって亡くなれば団体信用生命保険から保険金が下りるし、最近ではガンや脳卒中などの重大疾病と診断された場合にも返済を免除される住宅ローンも登場している。しかし、通常の病気やケガで仕事を長期間休まなければならなくなった、勤め先からリストラされた、両親の介護で仕事が続けられなくなった、勤め先が業績不振で給料が大幅に下がったといった場合に、代わりにローンを返済してくれる人は誰もいないのだ。
このように考えると、金額も大きく、返済期間も長期に及ぶ住宅ローンは、むしろ収益物件を購入する場合の融資よりも、リスクの高い借金ともいえるのだ。
日本ではお金に関する教育が、義務教育でほとんど行われていない。したがって、両親からの教えが、私たちの先入観の多くを占めている。しかし、残念ながらそれは20〜30年前の生活環境に基づいた固定 概念に縛られており、今の時代に適したものではない場合がほとんどだ。「お金の教養」を高めようと考えている私たちは、まずそのような先入観を捨てるところから始める必要がある。
お金はあなたを映す鏡
お金の使い方は、その人そのものを映し出す。本書は「お金の教養」を高めることの重要性について述べたものであるが、突き詰めて考えれば、お金はあなたの知性、思考、人間性といった「教養」そのものなのである。
だからこそ、先入観を捨て、内なる自分と対峙し、「一度しかない人生をどう生きたいのか」「自分にとっての本当の豊かさとは何なのか」を考え、それを実現できるお金の使い方をしていこう。
(『お金原論』53〜57ページより転載)
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