2018.5.17
個人型確定拠出年金(iDeco)に不動産投資…。その節税対策間違ってませんか?
「節税対策」では小銭しか増えません
今年も確定申告の時期がやってきました。「税金なんて1円も多く払いたくない!」と個人事業主の方だけではなく、サラリーマンの中にも確定申告に挑戦して「節税」を頑張る人が増えていると聞きます。家族の分も含めて医療費が多ければ「医療費控除」、「ふるさと納税」で地方自治体に納税(寄付)をして特産品を手に入れる、また個人型確定拠出年金(iDeco)に加入すれば所得税が控除されます。ほかにも個人年金保険に加入する手法、仕事に関連した資格取得費や書籍代を「特定支出控除」として会社に認めてもらう手法など、サラリーマンであっても使える節税手法は多く、書籍やインターネットには情報が溢れています。
しかし、時間を費やして勉強し様々な控除制度を積み上げた「節税」で得られる現金は多くはありません。例えば年収800万円なら住民税と所得税を合わせた90万円(一般的な年収800万円モデルで計算)のうち、戻ってくるのは10万円くらいです。よく考えてみてください。日本人の平均年収よりも高い年収800万円を稼ぐ能力を持った人にとって、10万円を節税することに労力を費やすより、収入を10万円増やすことに力を注いだほうが長期的にはプラスにはならないでしょうか。「節税」は「手元の小銭」を増やすこと。目指すべきなのは、大きく収入や資産を増やす方策を考えることなのではないでしょうか。
陥りがちな「節税」デメリット
所得税(や法人税)を減らすために「経費を使う」というやり方があります。「今年は儲かって、税金払うのイヤだから、経費で高級車を買った」なんて話を耳にしたことがある人は多いでしょう。1000万円の利益には約30%の税金、300万円がかかります。ただ税金に持っていかれるより、贅沢な車を600万円で購入し税金を減らそうと思う気持ちは理解できます。しかし、600万円の経費を使って利益を400万円に減らし、利益の20%の80万円に節税できたとします。しかし、手残りの現金は700万円から320万に減ってしまっているのです。本当に車が必要であれば購入する意味はありますが、節税を目的とした経費の使用は、結果的に多くのお金を減らしてしまうだけなのです。
「節税」を目的とした資産運用にも気を付けてください。例えば、「3000万ほどの投資用マンションをほぼ全額ローンで購入し、家賃収入と節税で資産形成ができる」と聞けば、一見おいしい話です。ここでも節税ポイントは「原価償却」で、最初の5年ほどは減価償却費として税金が減ります。しかし、その年月の間に3000万円のマンションの資産価値(売却できる価値)が、節税効果以上に下がっていくことが多く損がでます。一般的には、購入して5年後の不動産資産価値は3割くらい下がるもの。これまた目先に節税額に惑わされて、本当の資産価値を見失ってしまう人が多いのです。
個人型確定拠出年金なら大丈夫?
では、最近なにかと話題の「個人型確定拠出年金(iDeCo)」はどうでしょうか。毎月の掛け金では所得税控除、運用中の売却益や配当益は非課税、60歳以降に給付を受けるときも税額控除とメリットしかないように見えます。節税しながら老後の資産形成ができるのはよいのですが、そのお金は60歳以上になるまでずっと引き出せないのです(本人が死亡した場合を除く)。超長期の定期預金のようなものなのです。
30~40年もの長い間、お金が引き出せないという「期限の利益の喪失」は非常に大きなデメリットです。突然のリストラや病気、また独立起業など自分に何が起こるかわかりませんし、毎年2%のインフレが続けば30年後にはお金の価値が半分になってしまっているかもしれないのです。長い人生ではまとまったお金は自由に使えるかたちで持っておくほうが賢明ですし、無理のない範囲での加入を検討すべきものと言えるでしょう。
「税金」は搾取されて損なイメージが強く、「節税」と聞くとお得で飛びつきたくなるものです。目先の小さな金額に惑わされて、大きな損をしないように両面思考を大切にしたいものです。