2019年11月18日 更新

なぜ、世界のビジネスエリートは「禅(Zen)」に知的な関心を寄せるのか?

「禅」に強い関心を持つ世界のビジネスリーダーは少なくありません。世界中で多くの人が座禅を組み瞑想をしています。なぜなのでしょうか? 鈴木大拙という優れた紹介者の存在、60年代のヒッピー、昨今のマインドフルネスの隆盛などがからみあっています。

「マインドフルネス」で見直されている禅

ベトナム戦争やフランスの五月革命や日本の全共闘運動があり、多くの若者が自分の在り方、生き方を模索した「曲がり角の時代」の1960年代、禅は世界で広く受け入れられましたが、ビジネスの世界では2008年に起きた「リーマンショック」がまさに曲がり角でした。成長最優先、効率最優先、勝者総取りの路線が挫折したこの時期に、ビジネスエリートの間では西欧近代とは異なる思想や価値観から次の時代のヒントを得ようと、禅が改めて見直される動きがみられました。

その背景にあったのは「マインドフルネス」の隆盛ぶりです。それは自分の内面を客観的に見つめ直すことで心のコンディションを整えるトレーニングで、とりわけ瞑想を重視しています。しかも、現代のビジネスで重要視されるクリエイティビティ(創造性)を養うのに瞑想が効果的であることが最新の脳科学で科学的に裏付けられました。瞑想のルーツの一つは座禅ですから、禅にも自然と関心が向かうようになりました。

昨今のマインドフルネス、瞑想から座禅に向かう流れの中で、世界で禅をたしなむ人の関心が曹洞宗の開祖道元が説いた座禅の基本理念「只管打座(しかんたざ)」に及ぶことはありそうです。しかし、難解な「禅問答」や禅宗の開祖達磨大師の思想にまでくわしいのは、よほど禅にのめりこんでいる上級者で、少数派でしょう。
ですから日本人としては、たとえ禅の思想そのものには詳しくなく、それを何も語れなくても、一向にかまわないのです。その影響を受けた日本文化の「わび・さび」とか、禅寺の枯山水の庭園、茶室、水墨画などについてその良さが語れたら、それだけでも禅に関心を持つ欧米人に一目置かれるかもしれません。とはいえ一度ぐらいは禅寺で座禅を組んでみるのも、体験を語れるようになるので好都合でしょう。

外国人が禅の思想について深く知りたければ専門家である禅僧と話をすればいいので、ふつうの日本人にそこまでは求めていません。それよりは、日本人と日本の文化について話をしてみたいのです。

寺尾淳(Jun Terao)

本名同じ。経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、現在は「ビジネス+IT」(SBクリエイティブ)などネットメディアを中心に経済・経営、株式投資等に関する執筆活動を続けている。
23 件

関連する記事 こんな記事も人気です♪

相手に良い印象を与える方法とは?今すぐ見た目を変えるテクニック

相手に良い印象を与える方法とは?今すぐ見た目を変えるテクニック

ビジネスをしていくうえで、性別を問わず見た目は大事であるといえるでしょう。若々しさを無理に取り繕うのではなく、年齢にあわせたいい印象をうまく作り出したいものです。 山口遊子著『見た目はすぐに変えられる』 より、いますぐできる見た目をいい印象に変える方法をご紹介します。
ハイテクを活用する「スマート介護」とその「資格」が、介護の人手不足を解消させる?

ハイテクを活用する「スマート介護」とその「資格」が、介護の人手不足を解消させる?

介護業界の人手不足は深刻ですが、それを解決する突破口として期待されるのがロボットや情報通信技術で介護職員の身体的、精神的負担を軽減する「スマート介護」です。導入するだけでなく、その専門資格を設けることでも、人手不足の緩和につながりそうです。
「稼ぐ話術」を身につける|稼ぐ人に共通している話し方のポイントとは?

「稼ぐ話術」を身につける|稼ぐ人に共通している話し方のポイントとは?

人や組織を適切に動かすことで、ひいてはお金を動かしていく。そのためには、話し方にポイントがあるようです。そんな「稼ぐ話術」を身につけるためには、どうしたら良いのでしょうか。 金川顕教著『稼ぐ話術「すぐできる」コツ』 より、稼ぐ人に共通している話し方をご紹介します。
「起業するなら京都がいい」と言える10の理由

「起業するなら京都がいい」と言える10の理由

ベンチャーは東京での起業が多いのですが、「京都」もなかなか点数は高いです。交通の便の良さ、国際的知名度、モノづくりの伝統、「知の集積」、多様性やチャレンジ精神を尊ぶ風土、コンパクトシティ、コストの安さ、手厚い起業支援などのメリットがあります。
ユニクロ型でもアマゾン型でもない小売新業態「D2C」とは?

ユニクロ型でもアマゾン型でもない小売新業態「D2C」とは?

ユニクロ型でもアマゾン型でもない小売新業態「D2C」は、自社で企画・生産した商品を自社サイトで販売します。アメリカの成功事例を見ると、商品の特徴、サービス、ビジョン、思想、ユニークさなどで思い切ったことをして消費者のハートをつかみました。

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

STAGE編集部 STAGE編集部
お金の教養講座
お金と投資のセミナー情報(無料)

お金の教養講座

おすすめ

お金の教養講座

⼤⼈として知っておきたいお⾦の知識。
⼈⽣そのものを充実させるためのお⾦の基礎講座

月5万円で資産1億円を目指すゴイチセミナー

1億円を作った人が実践してきた「資産運用のルール」を真似しよう


ファイナンシャルアカデミー公式SNS